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山田 武

偽善者と『魔獣之王』 その04



 (鑑定眼)を使って黒い靄を調べてみると、あっさりとステータスが出た――


具現体"偽りの救済マッチポンプ" Lv100
呪物 アクティブ
全対応 格上
〔属性 呪 耐性 全属性
 捕足 絶望支配 洗脳 傀儡 使役 汚染〕


 マッチポンプって……上手いこと言うな。
 具現体ってことは、概念そのものってことなのか? 魔獣さんがやられた洗脳の。
 捕捉に書いてある情報も、凄い黒幕臭がしそうな感じの物ばかりだし、直接戦闘なんて考えてないよな普通。
 相手の精神に侵入し潜って直接洗脳を解除するなんて方法、考える奴の方が少ないか……つまり結局――


「――お前と戦うことになるのか」

『そのようだな』


 黒い靄が少し揺らぐと、鎖から魔力が流れ始め、魔獣さんの体が動いた。
 外と同じような展開になっているが、こちらの場合は靄を直接叩けば倒せるという条件もあるので、こっちの方が簡単だろう。
 ……ちなみに、今の魔獣さんのステータスはこんな感じだ――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ステータス
名前:なし (♂)
種族:魔獣王 Lv50
職業:なし

状態異常:洗脳・使役

 HP:120000/120000
 MP:54000/54000
 AP:78000/78000

 STR:60000/+10000/
 VIT:50000/+10000/
 AGI:20000/+10000/
 DEX:10000/+10000/
 INT:8000/+10000/
 LUC:5/-5/

/状態異常/

スキル
(■獣化)(聖■)(剛爪術)(斬爪撃)(物魔激減)
(身体強化)(威圧)(咆哮)(悪魔魔法)(竜魔法)
(暴風魔法)(冥魔法)(高速再生)(金剛)(牙術)
(魔纏化)(異常耐性)(飛翔)(回避)(突撃)
(吸収強化)(外界察知)(悪魔翼生成)(合成)
(物理限界突破)(肉体変質)(胃酸強化)(命中)
(高速機動)(暗視)(精神強化)(意力強化)
(聖■の血脈)

〔祝福〕
〔(聖■の加護)〕

〔呪縛〕
〔(偽りの救済)〕

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 魔獣さん自身がしっかりと自身を認識していない所為か、一部■が入っているのだが……それに関しては今は置いておこう。
 只でさえ俺より高いステータスは黒い靄の影響で、更に強化されている。


 そんな魔獣さんは、俺に向かって爪を向けてくる。(未来視)を発動させながらそれを回避していく。
 ……さて、繋がるかなっと。


「(お前、どこに攻撃をするか分かるか?)」

《何で、攻撃を、するか、ならなっ!》


 お、ちゃんと繋がった。
 外側で、魔獣さんに"天魔の創糸"をくっつけてあるのだ。
 それによって、糸念話を行えるようにしておいたのだが……まさか本当にできるとは。
 会話を続けよう――


「(俺が、闘う・・には、少々、分が悪い。だからそれだけで良いから教えてくれ)」

《分かった……竜魔法だ》

 GYAAAAA!

 ――魔獣さんがそう告げた途端、魔獣さんの尻尾に生えている竜が息吹を吐いてきた。
 ……(冥魔法)の反応もあるな。

(――"反射結界")

 息吹を靄の方に反射させてみたのだが、息吹はそのまま靄の中に吸い込まれていき、特に変化は無かった。魔獣さんの魔法だから効かなかったのかな? ならば――

(――"縮地""スラッシュ")

 靄との距離を一瞬で縮め、持っていた剣で切り裂いてみたのだが……やはり靄に変化は無い。
 物理は効かないっと。
 一度距離を戻してから――

(――"ライトランス"×100)

 100本の光槍が靄へと飛んで行く……が。

 GUGAAAA!

《……あまり痛くないな。これが全力か?》

「(いや、当たるかどうかを試しただけだ……というか、お前は(物魔激減)でどっちもそこまで効かないだろう)」

《それもそうだな》


 魔獣さんが靄の元へ移動して、俺の魔法を全て遮った。
 (物魔激減)は魔法を最大で75%までカットできるスキルだ。
 威力ではなく数を重視した俺の魔法など、チクっとするだけだろう。

 なら、こうするか。
 俺は(転移眼)で魔獣さんと靄の死角に移動して、再び魔法を放つ。

(――"ビームランス"×500)

 脳が強化できるようになった今なら、これぐらいの量ならば余裕で発動できる。
 槍状の光線が、散弾銃のように散らばっていく。
 靄はそれを……あっさりと呑み込んだ。


《……効かないな》

「(魔法も効かないのかよ。ならもう一つしか方法は無いぞ)」

《……まだあるのか。一体どれだけ策を持っているのだ》

「(いや、一つしか無いと言ったばかりじゃないか……ま、その一つの策を行うのに、何重通りの方法があるんだけどな)」


 そんな話をしながらも後方に下がり、次の策を試す為に作業を進めていく。


「ドゥル、浄化系の武器を出してくれ」

《仰せのままに、我が王。"偽・布都御魂"を転送します》

「ありがとな」


 布都御魂は、通常の刀とは逆で刃の方に湾曲している片刃の鉄刀だ。柄頭に環頭が付いており、約85cmぐらいの長さを誇る。
 神話では毒気を浄化し、勇気を奮い立たせる力を持つと云われているぞ。
 その伝承をできるだけ再現したこの"偽・布都御霊"は、スキルの効果を解除できる効果を持っている……よし、早速試すか。


「(それじゃあ、試してみるから)」

《その前に咆哮を上げて、悪魔を創るぞ》

「(りょうかーい)」

 GYAAAAAAA!

((音魔法)+(結界魔法)="遮音結界")

 ――――――。

 よし、何も聞こえない。
 魔獣さんが叫び続けていると、その周りから中位悪魔デーモンが出現し始める……邪魔だな。


("龍人因子1割注入""不可視の鉤爪・光芒")


 見えない筈なのに光るという、わけの分からない状態の手が悪魔達を切り裂いていく。
 悪魔達を倒し終えると――

("転移眼""横薙ぎ")

 再び転移して靄を斬る……すると――

「(――お、変化ありだな)」

《本当に何者なのだ。中位悪魔と言えば、人共が束になっても勝てない強さらしいが》

(……スキル関係のことは覚えているのか? 今の俺は、ただの人じゃ無いらしいからな)」

《……むしろこの強さで人であったなら、己以外も捕まっていたのであろうな》

「(安心しろ。俺の種族は個有種族だぞ)」


 自分で言ってて何に安心して良いか分からない説明だが、切り裂いた靄の腕がそのまま落ちているのを見るとそんなことはどうでも良く感じられる。
  やっぱり(模造だけど)神器は凄いな。
 今までは不可能だったことが、こうも簡単にできるなんて。


 ――よし、このまま続けていくか。



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