AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と『神樹の支配者』 その04



 勿論怒られた。
 帰って来た俺を待っていたのは、ジト目を向けてくる眷属達であっただった。前回と似たような問答を繰り広げたのち、俺は正座で反省させられることになった。そして、ユラルだが――


『……それじゃあ、ユラちゃんは一つのスキルの所為で故郷を追放されたの?』

『う、うん。それはそうなんだけど……ユラちゃんって私のこと?』

『うん、ユラルだからユラちゃん。そんなことより、ユラちゃんはメルスの加護をどこまで貰っているの?』

『え、え~と……守護だね』

『……てことは、指輪までは貰って無いってことか(ボソッ)。』

『今、何か言った?』

『ううん、何でもないよ。それより――』


 ――みんなと仲良くお話中であった。
 何で俺だけ正座をしているのだろうか。ユラルと契約したお蔭で(聖霊化)が使えるようになっていたので、それをバレないように発動させて、今回も乗り切れたから良いのだが((精霊化)は(聖霊化)に統合されていた)。


反省終了
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 さて、反省したと認定された俺は、再び生産用の結界に戻って、新しいアイテムを作ることにした。ユラルとの出会いで、また色々とアイデアが浮かんだしな。装備を整えておかなければ、西や北には行けないしな。
 早速生産活動だ!


作業終了
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『メルスン、呼んだ?』

「あぁ、お前に渡したい物があるんだ」


 前回はリーに呼ばれるくらい時間を掛けたからな、今回は時間になったらユラルに来てもらうことにしていた。契約をしたからか、意識しなくてもある程度なら彼女の場所が分かるようになったので、それでも問題無かったのだ。
 そして、彼女を呼んだのにはそれとは別に渡したい物があったからである。


『これは……指輪?』

「あぁ、お前の為だけに創ったんだ。……受け取ってくれるか」


 俺は箱に入った指輪をユラルに見せながらそう言う。ちなみに、嵌めこまれた宝玉の色は翠玉、てんくうホ◯ケモンの珠をイメージして作成してみた。


『メルスン……メルスンってハーレムを作っているんだよね』

「ん? ま、まぁ、そうだが……ハーレムは嫌いだったか?」


 まさかの、ハーレム否定派だったのか?! そんな俺の疑念は次の一言で消える。


『ううん、それは問題無いよ。聖霊は元々そういったことを気にしない種族だからね。私が訊きたいのはもっと別のこと』

「別のこと?」


 あ、そこは気にしないんだな。
 もしここで否定派であることが判明していたのなら、俺なりに説得するつもりだった。


『うん、メルスンの目的は何なのかな~ってことだよ。メルスンのこと色々聞いたよ。異世界から来た人で、今ではそんなプレイヤーと呼ばれる人達が、こっちの世界にたくさんいるって』

「…………」

『そんな異世界人のメルスンは、こっちの世界の人達とハーレムをして、何がしたいのかな? メルスンにとって、私達は仮想世界の住民、本物のメルスンは私達と触れ合えないのにどうしてハーレムを作るの? それを私は教えて貰いたいの』

「……あれ、聞いて無いのか?」

『……?』


 あいつ等、この展開を読んでいたのだろうか。そうでなければ、この情報だけを知らないなんてこと、普通ありえないだろう(俺の記憶を読めるのに、気付かない方が逆に無理だと思うのだが、誰かがそこの部分だけカットしたのだろう)。


「良いか、まずこの俺の肉体。一応はプレイヤーに与えられた肉体だが、魂は俺の物だ。そこまでは分かっているよな?」

『え……う、うん。メルスンがこっちに来た時の記憶は見たからね』

「プレイヤーは本来、魂だけをこちらの世界に持ってきて、こちら側での活動には自身で作った肉体を使用する。だから死んだとしても、魂が一時的に肉体から離れるだけで、運営と呼ばれる神様達が、肉体を復元して再憑依――死に戻りが可能になる。ここまでがプレイヤーの説明だ」

『え? メルスンもプレイヤーなんでしょ? 何で態々別にするの?』

「……そうだと思っていたんだけどな。
 この島に飛ばされる前に色々とあってな、今の俺は死んだ場合どうなるか分からないんだよ。俺が最初にここに来た時に在った石の所で死に戻るのか、そのままこっちで死んでしまうかがな」

『へぇ~……って、それとメルスンがハーレムを作っているかは関係無くない!?』


 あ、やっぱりバレたか。少し深い話をすれば、同情で終わると思ったんだけどな~。


「それは簡単な話だ。俺があっちの世界で好きになれる異性がいなかったからだ」

『……?』

「まぁ、分かりやすく説明するとこんな感じだな――」


 そう言って、俺は(具現魔法)で日本人女性
のイメージを具現化させる。


『……目が細くて。鼻と口が大きいね』

「あぁ、俺にはそれが嫌だった。だから、AFOを――こっちの世界の人達の顔を知れる機会があった時、俺は歓喜したよ。あぁ、楽園パラダイスはあったのだと」


 そもそもとして、俺は地球の人の顔の美醜が分からない。いや、さすがに顔面がグロ注意とかなら分かるぞ。だけど、美しいというのが全く分からなかった。そんな俺が美しいと思ったもの……それは、二次元に存在したキャラクター達だった。アニメ、小説等々、それを知ってからというもの、俺はそれにのめり込んで行った……まぁ、典型的な二次元好きな人だな。昔の人は過去はそうだったと懐かしみながらも、自分と相性の良い三次元の女と結婚するか、魔法使いや賢者を目指すことになっただろう。
 だけど、今は違う。VRMMO――それが世に出た時、二次元好きに新たな道が開かれた。


「――そう、結果俺はこっちの世界でハーレムをつくることにしたのだ。俺好みな女性を囲って、愛でる。例えそれが一方通行でも構わないんだ。現実での俺は何もできない無力な一般人。せめてこっちの世界でぐらい、愛する者を愛し尽くしたいと考えたんだ」


 まぁ、簡単に纏めると、二次元最高! ってことだな。今はなんやかんやあって多分デスゲーム状態な訳だが、そんなのはどうでも良いんだ。俺は自分がやりたいようにやっていくだけだぞ。運営に嫌われようが呪われようが、現実で一般ピーポーとして過ごすより刺激的な毎日が待っているだろう?


「まぁ、そんな訳だ。これが俺のハーレム設立秘話だ」

『…………』


 さて、ユラルの反応はどうなのだろうか。彼女は何かを考える様な顔をしている……と思っていたんだが――


『……ククク、アーハッハッハッハ。メルスン、そんな理由だったの。馬鹿みたい!』

「…………」


 物凄く笑われた。そりゃあ、もう、翌日は筋肉痛になるんじゃないかってぐらい。


『ヒーヒー……ふぅ、メルスン。メルスンって面白いんだね。てっきりメルスンはもっと真面目な理由でも持っているのかと思った』

「……そうか、悪かったな。そんな自己中な理由でよ」

『まぁまぁ、そんなに拗ねないで……うん、メルスンのこと、良く分かった』

「……どう分かったかは、俺には理解できないが、結局……これをユラルは受け取ってくれるのか?」

『……良いよ、私に填めて』


 ユレンはそう言うと、左手を俺に差し出してくれた。


「ありがとう……ユラル」


 俺は彼女の薬指に、いつもながらに祝福と呪い(填める指の制限)が掛かっている指輪を嵌めていく。


『……ふふ、メルスン、何でそんなに顔を赤くしてるの? 初めてって訳じゃないのに』

「ユラルこそ、林檎みたいに顔が真っ赤じゃないか」

『「……ハハハッ」』


 俺とユラルは顔を真っ赤にしたまま、笑い合った。



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