AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と状況確認 その03



『二人共、解析が終わった……のだけれど。どうやら忙しそうだね』

『ま、待っt「よーしよしよし」……キュ~』

「よーしよしよし、スーの耳は撫で心地が良いな―。ずっと撫でてたいぞ」


 俺は今、モフモフの素晴らしさを体感している。スーの熊耳は丸形で白いのが特徴だ。
 撫でる為にそっと手を置くと、耳がピクリと反応をしてくれたり、円を描く時のようにわしゃわしゃと掻き混ぜた時の感触ときたら……時間を忘れられるような気持ち良さだ。
 さっき誰かの声が聞こえたような気もしたが、スーの耳を撫でるという重大な使命に比べれば、後に回しても問題無いことだろう。

 そんなモフリスト動物愛好家へと覚醒していた俺は、グーに強制的に意識を戻されるまでずっと……耳をモフモフしていたという。


閑話休題「モフモフは最高だ」


「……ゴホンッ! それで、解析の結果はどうなったんだ?」


『僕がそれを言う前に、先輩に何か言わなければいけないことがあるんじゃないかい?』

 グーがジト目で俺にそう言ってくる。
 俺が……言わなければいけないこと――


「――尻尾も触って良いか?」

ビクッ

『違うでしょ』

「……悪かったって。今度はちゃんと許可を貰ってからにするよ」

コクンコクン

 スーも許してくれたみたいだ。それを見ていたグーも、スーの頷く姿を見て先程までしていたジト目を止めてくれた。


『先輩が良いなら、良いということにしておこう。じゃあ、解析結果を説明するよ――
 まずこの場所……"終焉の島"と呼ばれているこのフィールドは、マスターが今までいた"ネイロ王国"と呼ばれていたフィールドから遥か南に位置しているよ。そのフィールドの中でもこの場所は、中心に位置しているみたいだよ』

「位置なんて、どうやって調べたんだ?」

『マスターが気絶させられた時に現れた魔法陣を記録しておいたんだ。それを解析していたら、ここの座標に関するデータが見つかったんだよ』

「ん? グー、お前はその時"収納空間"の中に入っていなかったか?」

『色々と、やりようはあるってことだよ』

「……そうか、なら良いか」


 本人がそう言うなら、そういうことなのだろう。頼もしいこったよ。
 しかし、遥か南のエリアね~。見た感じ南国って訳でも無いんだが……。


『じゃあ、続けるよ――
 このエリアの特殊な所は、このフィールドの周りを囲っている環境にあるみたいだね。
 上空に浮かんでいるあの雲が強力な魔素を帯びていることによってこのフィールドからの脱出系の移動魔法が阻害されていたり、ここから見える森全てに幻惑系統の魔力が掛けられていたり……他にも何が起こるかは確認はできていないけれど、色々な所で強力な魔素の反応が見つかっているよ』

「じゃあ、雲を吹き飛ばせば転移が使えるようになるってことか?」

『うーん、それはあまりお勧めしないね。
 あの雲は強力な魔素の他にも色々と仕掛けがあるみたいだから。もし、その中に迎撃系の仕掛けがあったら――』

「あったら――」

『――今のマスターじゃ、仕掛けを何とかするだけでMPとAPが尽きると思うよ。今までは自分の分のステータスがあったから、"魔法の雨"みたいな荒業もできてたけど……今のマスターはフェニの補正だけだからね。雲を吹き飛ばすのは無理だと思うよ』

「そうか……」


 やっぱりそう簡単にはいかないものか。もしそんな簡単に吹き飛ばせるなら、運営もここに俺を飛ばすなんてことしないか。


『では続きを――
 環境の魔力反応を調べている時に、周囲の魔物の反応も調べていたんだけど、今までいたフィールドとは比べ物にならない程に強い魔物がいっぱい確認できたよ。一番強い反応は今のマスターは勝てるか分からないってぐらいの反応だったけど、そんな魔物の所にはいかなけらば良いしね』

「……ちなみに、どれぐらいいるんだ?」

『大体13体ぐらいだったね』


 マジか! 今まで俺が苦戦した相手なんて、プレイヤーを除けば、フェニと憤怒猪と嫉妬蛇ぐらいな物だぞ! そんな相手が13体もいるのかこの島には……隠れて暮らす選択肢しかないのかな?


「あ、そういえば俺の体に関する情報は?」

『それはまだ終わってないよ。マスターの体が今までと少し違うことは確かだけど、それが種族が変わったことによるものなのか、それともマスターが言った通り、マスター本来の肉体が受肉した為のものなのかが判別できないんだ。これを調べるのには、かなり時間が掛かりそうだね』

「:封印:の解除の方は?」

『そっちの方もどうしたら良いのか。多分、その封印は(神氣)を使った"奪技掌"を使っても外れないと思うよ。だから、今そっちの方も同時に調べている所さ』


 グーには色々とやって貰っているな。
 ……よし、いつかブラシでも作って毛並みの手入れでもやってあげよう。
 そんな関係無いことを考えながら、グーの説明を聞いていく。


『……じゃあ、最後にマスターの種族についての解析結果を纏めるよ――
 マスターの種族[不明]、一部制限があるのは、運営が邪魔をしたからだと思う。3つ残っているスキルだってだいぶ強力なスキルなのに、それが他にもあるからね。運営がそれを見て可能な限り強力なスキルを封印していったんだと思うよ。封印の外し方は分からないけど、Lvを上げれば何か分かるかもね。
 後、その3つのスキルの内、(アレンジ)と(適応)で創られたスキルは成長度とかは関係なく突然創られる物だから、:封印:の効果は受けないと思うよ。(因子注入)に関しては使ってみないと分からないから……』


 ……今ある3つですらTueeeとか考えていたのに、もっと強力なスキルとか言われても正直困る。まぁ(経験値貯蔵)を使えば、Lvも上がらないから、とりあえず今ある3つになれるまでは、そのままの方が良いかな?
 で(因子注入)だが、俺も気になっている。
 どんな効果があるんだろうか――


「――なら早速試してみるか」

『そうだね、試してみようか』


 俺達は不敵な笑みを決めてそう言った。



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