AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者とリョク



 さて、新しく取った職業や一部のスキルの説明を始めるぞ。まずは職業から――


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【勇者】Lv1 

職業固有スキル:(光迅術)

選ばれし者に与えられる職業
魔を払う光を操り巨悪を倒す力や、強力な戦闘補正や武技を持つ
力の用い方によって派生先が変わる

〔業値が規定値以下の者に与えられる職業強力だが、業値が規定値を超えると【勇者】を剥奪される
導士がいる場合は、これに当てはまらない〕

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 ――シャインが持っていた【勇者】だ。
 (光迅術)の使い勝手が良かったので、攻撃のレパートリーを増やすために選択した(闇の方はシャインにやらせれば取れる摸倣できるしな)。
 【勇者】と言えば雷魔法だと思うのだが、固有スキルには入って無かった。しかし……【勇者】って、悪人は就けないのか。俺みたいな導士の称号を持っている奴が堕とせば良いらしいが、あんな称号を持っている奴が【勇者】に会えるとも限らない。会えたとしても、そいつは良い導士だと思う。どうせなら俺も、聖導士とかが良かったなー。
 ……ん? そういえばシャインってなんで【勇者】に就けたんだ? アレってもう【性人】の方が向いていた気がするが(そんなの在るかは知らないがな)。
 ……よし、次行ってみるか――


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【聖人】Lv1 

職業固有スキル:(快聖魔法)

選ばれし者に与えられる職業
聖なる光を持って、人々を治す魔法を扱う
快復に特化している

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 元は【聖女】だったのだが、転職した途端【聖人】になった。多分女性専用職だったのでは? と思い、(変身魔法)で偽装してみると案の定、【聖女】に表記が戻っていた(その時俺を見ていた人々が、その姿を見てどう思っていたのかを……俺は知る由も無かった)。
 (快聖魔法)は、俺の偽善の為に習得した。
 別に、(治癒魔法)のままでも良かったのだが、付加価値としての効果が見込める(快聖魔法)がなんとなく欲しかったのだ。
 さて、お次はスキルセレクション。
 面倒なので一気に表記するぞ――



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武術:(異界柔術Lv1)

異界に伝わる柔の理を再現したスキル
Lvが上昇することで、再現率が上昇する

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武術:(戦舞術Lv1)

踊りと戦闘を合わせた戦舞を扱うスキル
戦いながら踊ることで、様々な効果を起こす
Lvが上昇することで、行動補正が増える

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武術:(祈舞術Lv1)

踊りと祈りを合わせた祈舞を扱うスキル
祈りながら踊ることで、様々な効果を起こす
Lvが上昇することで、行動補正が増える

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身体:(領域支配Lv1)

自分の周り(Lv×INT)の領域を支配する
支配下に入った領域の環境を自由にできる
Lvが上昇することで支配できる領域が増え、自在に改変可能な環境状態が増える

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その他:(武器同時所持Lv1)

Lv/10(少数は切り捨て)分、装備を同時に所持することが可能
ただし、ステータスに補正は入らない

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 まぁ、こんな感じかな――

 JUDOを使えるようにした(異界柔術)
 踊ってれば何か起こる(戦舞術)と(祈舞術)
 「こいつが届く範囲は俺の国だ」とか、言えるかも知れない(領域支配)
 そして最後に、武器がたくさん持てるようになる(武器同時所持)といった感じだ。

 ――最後のセリフを言う為のは、髪の毛は銀色の天然パーマで、武器は木刀の人かな?

 それと【熟練者】なんだが、(全○○適性)
が一つに纏められてしまった。その他にも使えるようになったのは良いのだが、取得SPが減ったのが少し残念だ。ま、1000Pもあるし、多分問題は無いと思うがな。


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『ではメルス様、またのお越しをお待ちしております!』


 サータの声を背に、俺は神殿を去った。
 声に熱が籠もっているのだが、何かあったのだろうか……。気を取り直して次はリョクに会いに行くとしよう。場所は、眷属の繋がり的にすぐ分かるので問題無い。さっそく移動をするとしよう!


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リーン城 玉座の間前


 リョクはこの中にいるらしい。しかし、自分の城なのに入るの初めてじゃないか? 今まで外から見てるだけで「お、良い城だな」とか思って満足してたし、城なら上空にもう一個用意してあるから、わざわざ入る必要も無
かった。あっちには、俺の用意した最高級の家具が揃っているしな。
 ……話が逸れたな。とにかく、入ってみることにしよう。折角だし、こっそりと――


ガチャッ

『……メルス様メルス様メルス様メルス様メルス様メルス様メルス様メルス様メルス様メルス様メルス様メルス様メルス様メルs(ry』


ガチャッ「…………」


 あれれ~おかしいぞ~? (声高め) 
 てっきり玉座にリョクが座っていると思ったら、その足元の床にリョクと同じような髪色の女性・・が倒れていたぞぉ。しかもぉ、何故か俺の名前をひたすら唱えてたよぉ。
 ……誰? あと、やっぱり下手だな……俺の演技。
 しかし、周りにリョクは居なかったし……まさかな。もう一度確認してみるか。


ガチャツ

『……あぁ、メルス様。いつになったら再びそのお姿を拝見できるのでしょうか。メルス様の為に【忠義】を使って肉体を改変してメルス様の寵愛を受けられる様になったというのに。あぁ、メルス様貴方様はいったい何処に……』


ガチャッ「…………」


 何か色々と聞いちゃいけない言葉が聞こえてきたな。肉体を改変? 何やってんのさ! 寵愛を受ける? 別に男のままでもできてたよ! ……多分。
 ……ハァ、状況はよく分からんが、あれはリョクなんだろうな。【忠義】って言ってたし。しかし、本当に何をやってるんだろうかアイツは。仕方ない、訊いてみるとするか。
 溜め息を吐きながら、俺は彼女の待つ玉座の間に向かって行った。



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「……成程、話は分かった」

『分かって……頂けたのですね』

「分かったには分かった。だが、俺はお前がそこまでするような主なのか? 俺では不足ではないか? そんなことを思ってしまうんだ」

 姿勢を正して貰ってから、リョクにどうして女体化したかを聞いてみた(俺は玉座の上だぞ)。
 ――原因はフェニでした。新眷属の二人との決闘後に、(天魔の寵愛)について話したそうだ。それを聞いたリョクはどうにかして自分も受けられるような存在になりたいと思ったらしい。……だが現実は残酷。自分は美丈夫、使える主も男。主には男色の気は無いので、自分にチャンスは無い。そう思っていると、決闘を見ている内に能力が増えたのか、 【忠義】にこんな能力が存在していたらしい――

"憧憬転写リライト"

 心から憧れる姿に変わるという能力。デメリットは簡単で、戻る事ができないこと。
 【忠誠】心があってこそできることだな。
 そして、その能力を知ってリョクがどうしたかは……ご覧の通りだ。


 それを聞いた俺は不思議に思うのだ。何故そこまでするのか、こんな偽善者に。シンクには、感謝している人もいると言われたが、あれはシンクが聖人のように心が広かった為にそう思っただけだろう。だが、住む世界を用意したぐらいで、他を殆ど彼ら自身に任せた俺に、そこまでして【忠誠】を持っていてくれるのか……それが俺には分からない。


『何をおっしゃってるのですか!!』


 リョクが俺に向かって叫ぶ。
 その目には……涙が溜まっていた。


『我の……いえ、我ら鬼人族の忠誠は、ゴブリンの時から変わることはありません! あの時、主だけがあの場に来て、終わる筈だった命を救ってくれたのではないですか!』

「あれは俺が道を塞いだから……他の奴が来れなかっただけだ。その時の俺は最初、お前らを他の奴らと戦わせないようにする為、お前ら全員、皆殺しにしようと考えてたんだ。
 お前らの為にしたと思っていることだってそうさ、偽善だよ。俺が自己満足の為だけにやったことだ」


 ただ、俺は偽善をしてきただけなんだ。
 お前達にそう思われるようなことはしていない。リョクがそう思えるのはリョクが良い奴だからだ。……こんな打算めいた行動に、きっとみんな失望するだろうな。


『それでも! 主は我達を救ってくれたではありませんか。当時は・・・、魂を再び定着させる魔法など、主以外は使えません。世界を創るなど、今でも使えるのは主だけです。主だけなのです……我達を救うことができて、そして……救ってくれたのは。
 我はこの【忠誠】を、主に救って貰った全元ゴブリンを代表して、主に捧げるのです!
 どうか、それだけは、分かってください』

「…………」


 それでも、少し思うのだ。他のプレイヤーなら、もっと別の救い方があったのではないか? そして、そっちの方がリョク達にとって良い選択だったのではないか、と。
 俺はあくまで偽善しかできない。自分の思うことを他人に押し付け、それに満足する……そんなことしかできない。
 本当にその選択が正しかったかなんて、分かる筈が無い。表面では感謝していても、裏では嫌悪をする。そんな思いを救った者達から感じ取れるようになるのが嫌なのだ。
 それでも、俺は偽善を止めることができない。俺には、偽善しか出来ないのだから。
 ……だが、それでも、そんな俺でもやれることはある。目の前で俺への思いで泣いている緑鬼を泣き止ます。そんなこととか――


「……リョク。お前の……いや、お前らの気持ちは良く分かった。だが、それでも俺はお前らにそこまで尽くして貰える理由が良く分からない」

『ですから……「だから――」~~~~ッ!』


 俺は何か言おうとするリョクの唇を塞ぎ、言葉を止めさせた。……正直に言えば恥ずかしい。だが、それでも、俺の中にある思いを伝えるには……これが一番最適だったのだ。


「――これからは、もっと近くで俺を見て、感じて、尽くしてくれ。そうすれば、きっと分かる筈なんだ。何がお前達にそうしているのかが」

『は、はぃ……』


 今日一番の女の娘の表情を見せたリョクを見て、俺は再び唇と唇を重ね合わせた。



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