AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者とユニーク その05



第四世界 天魔迷宮 第三層 闘技場


 攻撃が俺の元にやって来ると、ドーーンッという音と共に周りに濃い煙が発生し、辺り一面を包んで行った。


『おーーっと、メルス様の元にユウちゃんとアルカちゃんの魔法が炸裂ーー!メルス様はどうなったのかーー?』

『ふん、あれぐらいで主様がやられる筈が無いだろう』

『と、言いますと?』

『先程主様は、体の周りにスー様の(結界魔法)を発動させていた。たかが数百の魔法で破られる程、あの結界は軟じゃない』

『あ~~。確かに、昔とはいえ私達全員で攻撃しても壊れませんでしたものね』

『そういうことだ』

『お、煙が晴れて来たぞ』


 フェニがそう言っていると、煙がだんだんと薄れ、フィールド内が見えて来る。その煙の中心には当然、俺が立っている。


『……本当に無事でしたね。しかも無傷』

『我もあの魔法には苦労した。本気を出して割れるのが十回に一度だったからな』

『うむっ、近接の場合は30回以降で無いと、罅すら入らなかったぞ』


 いや、逆に割れた方がビックリだったからな。その時の結界はスー作の物だったから、割れて凹んでたスーを慰めるのに、グーと頑張ったんだぞ――色々と。
 だけど、やっぱり俺だけだと結界も強度があまりよろしく無かった。(反射魔法)で魔法同士を当てながら結界にぶつかる魔法の数を減らしてなかったら、絶対に結界を突き破って俺に当たってただろうし。


『さっすが師匠。かなり本気を出したんだけど……あっさり防がれるとびっくりだよ』

「ま、まぁな。にしても二人とも前にやった時より強くなってるじゃないか」

『当たり前よ。だけど、まだまだ手は用意してあるんだから――舐めるんじゃないわよ』


 そう言うと、二人は頷き合って行動を開始した。ユウは剣を抜きこちらに駆け寄って来ており、アルカは杖を構えて再び魔力を高めている。あれか、天地陣的な奴かな。剣士を時間稼ぎにして行う、大魔法的な。


『少しの間、師匠には僕と戦ってて貰うよ』

「へーえ、一人で俺を相手にできるのか?」

『それを今から試してみるんだよ!』


 ユウが持つ剣が、黄金色に輝いていく……ゲッ、あの剣は。


『喰らえ! ――"万能切断"!!』


 ユウが剣を俺の方向に向けて、全力で何も無い所を横一閃に切り裂いた。すると空気の一部が歪みながら、こちらを切り裂いた時に生じた斬撃が飛んでくる。
 ……ちなみに、"万能切断"とはユウの持つ剣"Xカリバー"の装備スキルである。切りたいと思ったものを何でも切れる、大変便利な剣である。
 だが、そんな何でも切れる剣の斬撃が今、こちらに飛んできている。何とかして防がねばならないな。


「笑止! こんなもので、俺を倒せるとでも?」


 少し気が動転しておかしなことを言いながらも、しっかりと対策は用意する。


(――"幼化鱗粉")


 (妖精魔法)の一つであるこの魔法。名前から分かるように、この魔法は幼くなる粉を振り撒く魔法だ。俺が小さくなったら横一閃に
振るった斬撃はどうなる。
 ――勿論、俺の頭の上を素通りしていくだけだ。


『し、師匠。どうして小さくなってるの?』

「(妖精魔法)の一つだ。使うと一時的に体が小さくなる」


 時間稼ぎなのか、質問してくるユウ。何故か顔が紅潮しているのだが、気にしないことにしよう。


『そ、それってどれぐらい続くの?』

「? ……そういえば、一体どのくらいこのまま何だ?」


 調べるのをすっかり忘れていた。
 よし、あっちも時間を稼いでいるみたいだし、乗ってやるか。……えっと、何々? 効果はINT×Lv×(1/10)秒か。……あれ? おかしいな。俺の計算が正しければ――1時間ぐらいこの状態なんだが。


『あれ? どれくらいだったの?』

「……1時間」

『え?』

「1時間だよ1時間。こんなショタ状態が1時間も続くんだよ!」


 誰得なんだよ老獪ショタなんて、クソッ。こんなことになるんだったら、しっかり説明文を読んでから使えばよかった。


『……ねぇ、師匠』

「なんだよ、どうせユウも笑いたいんだろ。良いぜ、笑えよ。自分の魔法でこんな子供の姿になった俺をよ!」

『別に、僕は全然笑わないよ。だけど、1時間と言わずに……ずっとそのままでいない?』

「……ハァ?」


 コイツハナニヲイッテイルノダロウ。


『だ、だって、今の師匠可愛いし! こ、今度僕の用意した装備を……き、着てみない!?』


 エーット、ショタコンカ? 


「お前、ショタコンか?」

『ううん? 僕は違うよ。僕が好きなのは、可愛いものだよ。今の師匠、最ッ高に可愛い! 可愛い検定準2級の僕が認定するよ』


 そんな検定あるか!! って、今の俺は可愛いに属される姿なのか。大体の体格は分かるのだが、顔までは分からない。
 自分の頬を触ってみても、プニプニとした感触が返ってくるだけだ(というか今、僕は違うって言ってたよな……気を付けなければ)。


「……ま、良いか。どうせ1時間もすれば元に戻るし、その気になれば一瞬で可能だし」

『そんな! 今の師匠がいなくなるのは、AFOにとっての致命的な損失だよ』

「知るか! とりあえずはMPの無駄だから戻る気は無い。さっさと決着を着けてから元の姿に戻ってやる」

『なら僕は本気で師匠を止めるよ。一分一秒でも長く、師匠をその姿にして置く為に』


 どんな本気の出し方だよ。だが、そんな俺の力の抜けようとは裏腹に、ユウの魔力は先程以上に高まっている(そういえば、SSや動画で俺を撮れば良いんじゃない? と思っている皆さん。この闘技場は秘匿主義のダンジョンマスターによって、そのような行動が撮れない、もといとれないようになっております)。


「……銃ならこの姿でも楽勝だな。さぁ、行くぞユウ!」

『負けないよ、師匠!』


 今、俺の肉体カ・ラ・ダを賭けた戦いが始まる。



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