AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と報酬カタログ その02



???


 前回のあらすじ
 カタログで見つけた、(豪華特典付)という言葉に惑わされた俺は選んだ999999Pも掛かる"個人面談"を選択してしまった。すると、目の前が光に包まれ……って感じだな」


 誰に向けてかは知らない状況説明も終えたし、次は周りの確認だな。
 一言で纏めると、(空間創造)で創った初期状態の世界だな。
 今では立派な国が存在する第一世界も最初はこんな感じだったなー……って待て、もっと前に見たことがあるぞ! あれは、確か……そうだ――


ピカーン(何かが出現する音)


「初期設定をした場所だ!!」

『うわっ! ビックリした―』


 突然後ろで声がしたので振り返ってみるとそこでは、紅髪の女性が驚いたような顔をしながら立っていた。


『突然大きな声を出さないで頂戴。ビックリしちゃったじゃないの』

「……あ、お前は撲滅イベントの声の人」

『声の人って……えぇ、そうよ。私が撲滅イベントのアナウンスをやってた――GM05よ』


 そう言って、胸を張っていた。……胸に関しては何も言わないが、クライミングがやり易いとだけここに記しておこう。


『何か、変なことを考えている気もするけどまぁ良いとするわ。メルス、貴方がカタログで選んだ"個人面談(豪華特典付)"は、貴方に頼みたいことがあったから用意したの。私の話――聞いてくれる?』


 05はそう上目遣いをこちらにしながら、そう言ってきた。……あざとくねぇか?


「俺は(豪華特典付)の為にこれを選んだんだが……お前の頼みを聞いたら貰えるのか?」

『え? まぁ、用意したのも私だしね。叶えてくれたならお礼はしっかり渡すわ』

「そうか、ならば引き受けよう。……で、頼みたいことは何なんだ?」

『……案外理解が早いわね。私が頼みたかったのは――名前よ』

「名前?」

『そう、名前よ名前。貴方、前に01お姉様に名前をあげたのよね? ――"レイ"っていう』

「……あげたな」

『それからというもの、01お姉様は自分のことを"レイ"と名乗って、いつも楽しそうなのよ。『"模倣者"に会って名前を貰ったって』……そんな話を何回も聞いてれば、みんな名前が欲しくもなるじゃない! 何回聞いたと思う? ……50回は聞いたわよ少なくとも!』

「そ、そうなのか」

『……フゥ。ま、そんなレイお姉様の姿を見て、私や他の姉妹達も貴方から名前を貰おうとしていているの。今回は丁度私がイベントの担当GMだったから、イベントの報酬カタログに貴方しか選べないようなPで、干渉に必要なあれこれを組み込んだ景品を入れたの』

「成程」


 要するにあれだな。レイさんが名前を自慢したから、他のGM達も名前が欲しくなった。だから999999Pでこの場を用意した。
 ――と、そんな訳か。


「……つまり、俺はお前に名前を用意すれば良いってことなのか? それなら、俺じゃなくても良いと思うんだが」

『貴方じゃないとダメな理由があるのよ。詳しい理由は言えないんだけど、私達に名前を付けるってことは、普通のプレイヤーには不可能に近いことなのよ。だから、そんな厳しい条件を達成できている現在たった一人の存在である、貴方に頼んでいるのよ』

「まぁ、名前を考えるだけだしな。こっちもできるだけ、良い名前を考えてはみるが……あんまり期待はしないでくれよ」

『……え? くれるの、名前』

「まぁな。何かこうなった理由の一部に、俺も関連している気がするしな。少し待っててくれよ」

『わ、分かったわ』


 さて、そうはいったものの、どうするか。
 05だからレイコなんて、そんな後で後悔するような名前にする訳にもいかないし……どうするべきかな?
 0・5・05。そうだな~――


「――"シンク"。シンクってのはどうだ?」

『シンクって、どういう意味なの?』

「シンクってのは、5という意味だ。ちなみにその意味とは別に、こういった字を用意している――」


 そう言って、(具現魔法)で漢字を空中に出現させる。


「"真紅"。お前のその綺麗な髪の色と合わせたダブルミーニングだけど……どうだ?」

『…………』


 彼女は下を向いて黙っていた。
 よく見ると顔が赤いので、気に入らなかったのだろうか。


「……やっぱり、駄目だったか」

『――ッ!? そ、そんなこと無いわよ、気に入ったわ!』

「……(ホッ)。そ、そうか。気に入ってくれてなによりだ」

『ありがとう、"シンク"って名前。これから使わせて貰うわ。
 だ、だから、私のことを呼んでみてくれる? シンクって……』

「……シンク」


カァァァ

 そんな擬音が聞こえて来そうな程、05改め"シンク"が顔をより赤くしている。やっぱり『さん』や『様』を付けた方が良かったのかな?


「すまん、『様』を付けた方が良かったか?」

『ば、馬鹿! そうじゃないわよ!!』


 えー、違うのかよ。……やっぱり、秋の空と乙女心は移り変わりが速いなー。
 そんなことを考えていると――


ピカーン

 先程と同じように、何かが出現したような音が鳴り、眩い光が眼球を照らす。

 俺は光が止むと、光から現れたその人物を見て驚くことになった。
 ――あ、貴方は!!



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