AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

04-55 撲滅イベント その33


「──何それ、ずいぶんと狭量な神様も居たモノね」

「認識としてはそれで合っているが……そんな受け取り方でいいのか?」

「今さら過ぎたことだし、何とかしてくれるでしょう? それより、何がどうなったらあれだけの補正が入るのよ」

「だからこその個有スキルなんだよ。今度、探してみるといい」

 まあ、補正という概念においては、フェニこそがもっともそれにあやかっているけど。
 死ねば死ぬほど強くなる……祈念者や三白眼の少年に使わせたくなるチートだよ。

 共有させればいいとお思いのそこの貴方。
 残念ながらこれは不死鳥という種族に結びついた能力らしく、共有させても正常な効果が発揮できなくなるらしい。

 俺も同じことを考えて、グーとレンに調べてもらってあったのだ。
 残念と言えば残念だが……俺自身は、称号でその効果にあやかれるからな。

「まあ、結構な問題があるお前のステータスだったけど……」

「……否定はできないわね」

「解決方法は二つだな。スキルの方をどうにかするか、神様の方をどうにかするかだ」

 剥奪するにしても、停止させるにしても。
 何かしらの策を講じなければ、彼女は変わらず魅了に悩まされるだろう。

 うん、それを解決してこその偽善。
 眷族にもなってもらったわけだし、問題の解決は何かしらの方法でするつもりだ。

「一つ目ならスキル自体を無くす、もしくは条件を満たせないようにするかだな。ただ、称号スキルだからかなり難しい」

「……どうして?」

「称号自体はお前自身がやった事実だしな。まあ……そっちをどうにかするのは面倒って考えてくれればいい。だからいちおう、二つ目も提案した」

「そっちは止めておくわよ。なんだか、ロクなことにならない気がするわ」

 まあ、交渉に失敗すれば『(物理)』に移行するし、それでもダメなら──殺す。
 どんな手段であれ、彼女への悪影響を止めさせればいいわけだし。

 だがそれをすれば、間違いなく親玉が動くことになるだろう。
 まだまだ神としては見習いのモブなので、さすがに勝てるという保証はない。

 俺としても、そんなに前傾姿勢ではないので、できるだけ一つ目を選んでほしかった。

「とにかく、神様をどうこうするのは止めるし、スキル自体をどうこうするのも止める。というわけでスキルの影響が周りに及ばないように、この装備に手を加えよう」

「これは……コートかしら?」

 俺が取りだしたのは、眷族になった者に渡している外套──『隠者の外套』。
 いろいろと秘密が多くなるだろうメンバーの、助けになるかもと作っていた品である。

「今の状態でも隠蔽系の能力をふんだんに次ぎ込んであるが、他にもいろいろと便利な機能があってな……まあ、論より証拠って言葉もある。とにかく着てみろ」

「……分かったわ」

 不安な表情を隠そうともせず、それでも縋るように外套を身に纏う。
 それ自体に意味はない……だが、ちゃんと便利な機能はあるのだ。

 それには手順が必要で、それを予め頼んでいる……ちょうど、連絡が来た。

《──そうだね、認識偽装スキルをオススメするよ。隠蔽派生の偽装スキルの中でも、他者からの認識のみに干渉する類だね。ステータスはあいにく偽ることができないけど、その分目的は果たせるだろう》

 と、グーが習得すべきスキルを提示する。
 いったい何を意味するのか、それをすぐにイアも知ることになることだ。

 隠蔽スキルを再習得し、経験値を注ぐ。
 偽装スキルに進化後、再び経験値を足してカンスト──認識偽装スキルを習得し、ようやく本題に移る。

「この外套は、一つだけ他所からスキルを取り込むことができる。レベルはその元となった奴のモノに依存するが、ノーコストで欲しいスキルが使える」

「……認識偽装スキル?」

「確認したから分かると思うが、それで顔を隠せる。外套を被っていなくても発動するから、普段使いもできるだろう」

 まあ、割と地味なデザインなので、そこら辺は気にするかもしれないな。
 そういう部分は、いずれ生産職にでもなんとかしてもらいたい。

「魅了が観測によって起きる事象なら、それさえ防げばいい……子供じみた考えだが、意外と通用するはずだ」

「けど、本当に?」

「俺を信じろ、とか言えたらいいけどな。看破系のスキルのレベルが高い奴なら、今は視ることができると思う。だが、間違いなく、日々の生活の邪魔にはならないはずだ……」

 そうでなくとも、認識を弄られているのだから違和感を覚える者は多く出るはずだ。
 だが、そこは自己責任ということで諦めてもらおう。

「このコート、強すぎない? 防御性能はあまり無いけど、それ以外の性能が高すぎる」

「別に、俺にとっては不要な物だからな。好きに使ってくれ。AFOをやっている間は、嫌かもしれないが眷族だ。俺は眷族を大切にする……責任ぐらい、取るつもりだしな」

「責任って……嫌な言い方ね」

「それでも、だ。まあ、本当に必要なとき以外は行動を制限するつもりはない。自由にしてくれて構わないぞ」

 何やら思う所はあるようだが、それを受け入れてくれるようだ。
 あと、まったく関係ないが、俺用のローブはさらにえげつない性能である。

 あくまで彼女たちに渡しているのは、その劣化版でしかない。
 というか、俺のヤツを装備しているのがバレたら、たぶん狙われるだろうからな。

「ともかく、これがあればもう心配は無いってことなのよね?」

「念のため、街中では顔を隠しておけよ。看破系の能力も、通常の視界で捉えている部分の方がスキルの性能を発揮する。隠しておいた方が、見づらいはずだからな」

「わ、分かっているわよ、そんなこと……その、ありがとね」

 彼女が礼を言う。
 これまでAFOをやってきて、この問題が解決するまでに、彼女がどれだけ辛い思いをしたのか分からない。

 だが、間違いなくその言葉に嘘偽りは無いだろう……偽善者の勘が、そう言っていた。


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スキルメモ
(隠蔽Lv30:4)→(偽装Lv50:4)→(認識偽装Lv1:4)

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技能:(認識偽装Lv1)

発動中、対象者の姿を認識できない
能力の効果は、レベルによって変化する

〔看破系統のスキルに視認された場合、対象のスキルレベルの合計が上回っていた場合、偽装の効果は反映されない
またレベルを上げることで、ある程度自由に偽装できる〕

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ちなみに外套が取り込めるスキルは、あくまで偽善者のものだけです。
他所で固有スキルを拝借するなんて……ええまあ、できませんよ?


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