AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
04-04 フェニ その02
「……なんだ、これ」
神眼が一つ、鑑定眼を行使して見抜いた指輪のステータス。
だがそこには、こんなことが──
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水神の指輪 製作者:〔メルス〕
魔道具〔神器〕:指輪
ランク:S〔X〕 耐久値:500/500〔∞〕
装備補正:VIT+50(MIN:50)〔LUC+50(CHR:50)〕
説明:水の恩恵を使用者にもたらす指輪
才能の無い者でも限定的に水系統魔法を行使可能となる
擬似的に祈念者の権能が組み込まれており、仮初の祈念者を装うことができる
〔説明:愛しき者を想い、水・氷の神より祝福を授かりし指輪であり神器
水系統魔法に適性を得たうえで、一日に一度任意で水系統の攻撃を無効化できる
擬似的に祈念者の権能が組み込まれており、仮初の祈念者を装うことができる〕
〔※この装備は、特定の部位にしか装備することができない〕
装備スキル
(水魔法:限定)(氷魔法:限定)(鑑定無効)
(快適調整)(使用者識別)(高速自動修復)
(魔力自然回復・高)(システム:限定)
〔(専用装備)(神威偽装)(水氷無効:限定)
(水属性適性:限定)(天魔の寵愛:メルス)
(水神の祝福)(氷神の祝福)
(神々のお節介:左手薬指限定装備)〕
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……ツッコミどころしか無かった。
まず説明しておくべき〔□〕で覆われた部分だが、これは看破系のスキルを発動した時のみ視ることができる部分だ。
神眼で無くても問題ないのだが、その装備の品質によって成功率が異なるため、実質神眼でなければ視ることができない。
装備が神器なのも、性能が半端ないのもまだ問題ない。
だが……あらゆるツッコミを差し置いて、一際輝く点が一つ。
「……なんだよ、このお節介って」
左手の薬指にしか装備できなくなる、それが意味することぐらい平凡な学生でも理解している。
これを与えようとした者、テキスト通りにたとえるなら『愛しき者』へそれを渡せと神は思し召しているようだ……なぜだ。
「否定はしないけどな。うん、それが愛でも恋でもない【強欲】な感情なだけで」
出会ってから数週間ほど、さすがに創作物みたいな劇的なイベントでも経ない限りはそういった感情を抱くことは無い。
だがそれでも、欲しいと想った。
ひどく【傲慢】で【色欲】に塗れようと、それは凡人に許された『思う』権利だ。
「……物凄く、お膳立てされているな。だけど、それにとやかく言って否定できるか? ここで何を言おうと、俺が出していた考えに変化なんて起きないのに」
それこそ、突発型難聴を何度も引き起こしている物語の主人公みたいに。
優柔不断では、誰も救えないということもある……だからこそ、決めねばなるまい。
「──行くか」
たった一言、だが俺の想いが詰まった決意の言葉だった。
ゴクリと漏れそうになる息を呑み下し、覚悟を決めて“空間転位”を行使する。
◆ □ ◆ □ ◆
そして向かったのは、第四世界に配置された迷宮──『天魔迷宮』。
コツコツと音を鳴らして通路を進み、やがて目的地へ辿り着く。
そこまでの間、何度想いがぶれていったことやら……それと同じ数、彼女との思い出が蘇り──固まってしまう。
人とは単純で、自分を見つめ直せば見えてくるモノがある。
自分で考えたからこそ、その結論は自身にとって信用度が高い情報となるのだ。
「──だから、かな? なんか、胸がドキドキしてきた」
現実では知り得なかった感情。
それを俺は、この世界で知り得た。
俺らしからぬ想いではあるが、それでも抱いた心は止まらない。
はち切れんばかりの想いを告げるべく、彼女の下を訪れた。
「──フェニ!」
「むっ! ご主人ではない……か。どうかしたのか、なんだかいつもと様子が……」
「おかしくもなるさ。今日来たのはレベリングのためじゃない、もっと大事なことのためなんだからな」
「大事なこと?」
首を横に傾けると、彼女の真っ赤な髪が揺れて火のように揺らめく。
普通はそんなこと起きないだろうが、不死鳥が人化したフェニならではの現象だろう。
そんな彼女を見て、改めて考える。
俺の想いとはとても単純……彼女を独占したいというものだ。
それは【迷宮主】の在り方からは外れ、不可解とも呼べるものかもしれない。
だが言うではないか──恋はノンストップであると!
(なんか、何でもできる気がしてきたな……理由は分からんが、これがハイってヤツか)
「……ど、どうされたのか、ご主人?」
「フェニ、お前は美人さんだよな。人化がどういう原理かは分からないけど、不死鳥としての幻想的な姿が人に収まるとこんなに美しくなるのか」
「本当に……どうかしたのか?」
嗚呼、心配してくれるんだなフェニ!
今ならば……今ならば理解できよう──これこそが、この胸の中で鳴り止まない鼓動、これこそが我が想いの証明であろうと!!
「偽者ではないと断言できる。が、しかし、その瞳は……」
「瞳? いいや、そんなことはどうでもいいだろう。偽者でないと分かってくれる、その想いが俺のモノであると理解してくれる……相思ではないか!」
「ご、ご主人……」
戸惑っているな、愛しき者よ!
そんな表情もまた綺麗……だが、これから行うことにその顔は似合わないな。
空間魔法“空間収納”から、例の指輪を取りだして愛しき者に渡す。
もちろん、普通にではない──片膝立ちとなって、箱に入れた指輪を開けてみせてだ。
「唐突で悪い。だが、今しか俺はこの想いに正直になれそうにない。嘘偽りのない気持ちで、お前にこれを渡したい」
「……ご主人?」
「俺はフェニ、お前を好きみたいだ。少なからずその見た目を好きになったこともある、それと同じくらい不死鳥としてのお前にも、愛おしさを感じる。愚かな俺を支え、ここまで至らせてくれたのはお前だからな」
そう、俺は死を与えることしかできなかった愚者だ。
償いがしたわけではない、贖いたいわけでもない──これからを変えていきたい。
だからこそ、伝えるべきことを伝える。
たとえ心のどこかでおかしい、ありえないと告げられようが構わない……俺は『俺』の願いに逆らわない!
「──俺と、俺とハーレムを創ってくれ!」
だからだな、たとえ愛しき者の目が冷め切ろうと俺は止まらなかった。
むしろ、やり甲斐を感じた──俺のことを想っていてくれるからこそ、一喜一憂してくれているのだと!
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