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山田 武

03-28 【封印】後篇



 メキッという感触が武器から伝わる。
 確実に頭蓋骨に相当する骨格に、影響が出ただろう。

 しかし、俺の頭の中は疑問符でいっぱい。
 なぜそうなったのか分からず、それを口に出してしまうほどだ。

「あ、あれ……?」

 相手は神の使徒である天使。
 予め必要とした神気の量を踏まえ、警戒は最大限に行っていた。

 まず、天使は翼から光状の羽を撒き散らして俺を串刺しにしようとする。
 その間に同じく光を纏った手で貫き手を仕掛けてきたので、それも大盾で防いだ。

 ……この辺りで違和感を抱いた。

 どうして防げているのか、と。
 だがその意識をすぐに消し去り、すぐに反撃へ転じる。

 大盾だった『模宝玉』を木刀──神気で生みだした神樹製──に切り替え、防がれたことで隙を見せた天使を攻撃した。

 ──そして、現在に至る。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 天使は地に降った……物理的に。
 今は普通の人族のように、ただ目を閉じて気絶している。

 この天使の扱い……うん、どうしようか。
 なんてことで悩んでいると、レンの方から連絡が入る。

主様マイマスター、少し宜しいでしょうか?》

「ん? 別に構わないが……どうした?」

《そこで倒れている天使、そちらを確保しておきたいのです。そのままでは、姉妹にどういった干渉が行われるか分かりません》

「それもそうだな。けど、どこに置いておくべきか……心当たりは?」

 少なくとも、外に放り出すのはダメだ。
 天使はこの世界の存在を知ってしまった、選択肢はすでに失われている。

 なのでどこに隔離しておくのか、それを知らなければならない。

《ございます──主様の捕喰空間です》

 捕喰空間とは、【暴食グラトニー】の能力に喰われた対象が最初に逝く空間である。
 内部では解析・分解・消滅など、いろんなことを直接触れずに行うことが可能だ。

 何より、そこは時間が停まっている。
 たしかにそこなら逃がすこともない……だけど、喰べるんだよなー。

「まあ、いちおう殺されそうになった? んだから別にいいか。因果応報、ヤられたらヤり返すってな──“捕喰ノ牙イーター”」

 触れずとも発動するが、外しては困るので手をかざして照準を合わせ……発動する。
 途端、先ほどまで倒れていた天使は消え、地面にその痕跡が残るだけとなった。

 そして感覚的に、【暴食】が喰べた対象をどうするか尋ねてきていると理解する。
 俺はとりあえず解析を指示し、そのまま放置するように念じておく。

「レン、これでいいのか?」

《はい。ありがとうございます、主様。ではさっそく、作業に取り掛かります》

「……あのさぁ、レン。その作業って、具体的に何をするんだ?」

《…………では、これで失礼を》

 これは……知らない方がいいのかな?
 まあ、それを忘れるためにも、姉妹の様子でも見ておかなければ。

「──ん? 突然UIが……」

 しかし、すぐにはいけないようだ。
 天使を捕喰した瞬間に出たのだろうか、これまで見たことのない文の羅列が一気に表れたUIに記されていく。


  □   ◆   □   ◆   □

【封印】の守護者の迎撃に成功しました
これにより、英勇クエスト『双剋英雄』が消滅しました
英勇クエスト『双剋英雄』が消滅したことにより、『■■■■■』の欠片は、『???』の下へ帰還します

 ERROR 異常なコードによる介入

『メルス』の『運命改変者』が発動しました
これにより、『???』の下へ帰還する予定だった『■■■■■』の欠片は、『メルス』の下へ移動します

『双剋英雄』の運命は『メルス』の支配下に置かれ、『???』の管轄外となります

英勇クエスト『双剋英雄』において入手可能なモノは、『双剋英雄』の成長度合いによって『メルス』の支配下に置かれ、以降、自在に使用が可能となります

『双剋英雄』の能力解放決定権は『メルス』が握るものとし、以降『メルス』の意思決定によって解放が行われます

  □   ◆   □   ◆   □


「……グー、これがなんだか分かるか? あとわけの分からないアイテムを入手したみたいなんだが」

《すぐに調べてみるよ……ただ、それなりに時間が掛かると思う。あの指輪以上にね》

「そりゃあドロップアイテムと違って、面倒臭そうなイベント絡みっぽいしな。優先はしなくていい、暇な時間があったらやってくれれば構わない」

《分かったよ。なら、マスターの言う通りにしておくね》

 英勇……まあ、名前の響きからして、英雄と勇者を合わせた造語だろう。
 そういった者たちと関わることが、クエストとして存在しているわけか。

 そして、フーラとフーリもそうだった。
 ……未来に決まることではなく、過去から定まっていた運命みたいなものか。

「いろいろと気になる点はあるけど……今は二人の所に行こう」

 将来のトラブルより、今の問題だ。
 倒れたままの少女たちを放っておくのは、揉め事になりそうだしな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「──で、大丈夫だったと」

「あの……メルス様、これは……」
「……壁?」

「結界魔法だ。結構便利なんだぞ」

 少女たちから事情を聴く……いつの間にか起きていたようだ。
 どうやら天使を喰べたときに、能力値に関する束縛が解かれたらしい。

 二人から許可を貰って“鑑定”をして視れば……なるほどたしかに、【封印】を失ったことで抑制されていた分の能力値が一気に増えていた。

 その補正もあって、すぐに目が覚めたのかもしれないな。

「……って、二人とも結界魔法を習得しているな。俺も持ってないのに……優秀だな」

「ほ、本当ですか!?」
「……知らない」

「さっきまで結界をペタペタ触っていたからかもな。じゃあ、そうだな……この結界に魔力を籠めて、操れるようになろうか。たぶんこれをやるだけでも、それなりに扱えるようになるだろう」

「……「はい!」」

 あとで知った話だが、彼女たちが目覚めた職業──【英雄】の性質が決まっていなかったため、それを補うために辺りの事象から最適なスキルが選ばれたらしい。

 分かりやすく説明するなら……たまたま結界が張られていたから、それを使えるようにしちゃえってことなんだとか。

 ……自由民も、結構チートみたいです。


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解放後のステータス
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ステータス
名前:フーラ(女)
種族:(普人族Lv12)
職業:(村人Lv12)・【英雄Lv1】

HP:150→1150
MP:100→1100
AP:100→1100

ATK:15→115
VIT:25→125
AGI:25→125
DEX:30→130
LUC:15→115

武術
(棒術)
魔法
(生活魔法)(結界魔法:職業)
身体
(病気耐性)→(異常耐性:職業)
技能
(耕作)(家事)
特殊
(英雄ノ卵:職業)(自己強化:信仰)
(全武器適性:職業)

祝福
(眷軍強化)
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---------------------------------------------------------
ステータス
名前:フーリ(女)
種族:(普人族Lv10)
職業:(村人Lv10)・【英雄Lv1】

HP:110→1110
MP:170→1170
AP:110→1110

ATK:15→115
VIT:30→130
AGI:15→115
DEX:25→125
LUC:8 →108

武術
(棒術)
魔法
(生活魔法)(結界魔法:職業)
身体
(病気耐性)→(異常耐性:職業)
技能
(耕作)(家事)
特殊
(英雄ノ卵:職業)(自己強化:信仰)
(全武器適正:職業)

祝福
(眷軍強化)
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(棒術)(耕作)(家事)を得ていますが……祈念者風に例えると経験値が一気に入っています
そのためスキルを習得したり、熟練度的なものが上がるなどの現象が起きています


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