AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
03-27 【封印】中篇
《解析が終わったよ》
《解析が完了しました》
まったく同じタイミングで、二人から終了の報告を受ける。
俺も俺で、思考加速スキルを使って調べていたのだが……全然分からなかったのに。
《【封印】に関する情報は、僕の本体に転写しておいたよ。それを確認してね》
「了解、さっそく読んでみる」
魔武具『万智の魔本』を取りだし、目的のページを開いて読んでいく。
グーの言った通り、そこには【封印】に関する情報が記載されており……。
「──なるほどな。弱体化には相応の仕組みがあったわけか。上級鑑定だけだと所々見えない部分があったが、そういうことだったのか……詳細が分かりやすくて助かる」
《それが僕の役目だからね。けど、それを纏め上げたのはレンの方だよ》
「そうだったのか……俺、あんまり著者の違いとか分からないタイプだから気づかなかった。けど、これだけ詳しいのはレンのお蔭ってことか。ありがとうな」
《いえ、それがご命令ですので》
能力云々の問題以外にも、どうしたら姉妹から能力を消し去れるのかも書かれていた。
そしてその方法は、やはり俺以外には難しいものであり……。
「神気を使った状態で、スキルに干渉する能力を行使する必要がある……ねぇ。そもそもスキルをどうこうできる能力って、今のプレイヤーが習得できるものなのか?」
《どうだろうね? マスターが自分を例外と認めるなら、違うとも言えるんだけど》
《そういったスキルの存在は確認されていますが、DPでの購入の場合それらはかなり高額での取引が行われます》
「……レアな能力なのは間違いないのか。仕方ないと言えば仕方ないんだけどさ……やっぱりモブが持ってていいモノだったのか?」
闘技大会のときに使ったが、俺は他者のスキルをどうこうできる能力を持っている。
あのときは模倣だけだったが……その気になれば、奪うことだって可能だ。
今回の場合、それを使用する。
俺がコピーをしてもなんら得をすることなどないが、奪うことを選択すれば姉妹から生活の邪魔になるスキルが排除できるのだ。
それをやらずして、何が偽善者だろうか!
「まあ、プレイヤーはシステム的にスキルのオンオフが自在になっているからこそ、やるわけだけど……こういう完全デメリット系はオフにできないらしいが、最初からオフの状態で奪えば話は別……なんだよな?」
《その設定はこっちでどうにかするよ。重要なのはそこじゃなくて、マスターがそれを成し得るかどうか……そこだけさ》
《【封印】の防御は堅固で、それこそ神気を使わねば干渉不可能です》
「……はあ、頑張って練ってはみるけど。あれって、結構集中力使うんだぞ?」
神気を混ぜたアイテムを創っている時から分かっていたのだが、少しでも制御をミスれば体が内側からズタボロにされてしまう。
肉体を持つ身で、行うからこそ起きうるリスク……神って普段は干渉不可能なの、あれは端から物理的な体を持たないかららしい。
なのでモブがやるのは精一杯。
たとえるなら、針の穴に糸を連続で通すような緻密さが求められる。
……これが生産活動だったら、【生産神】が補助機能として働いてくれていたかもしれないな。
「──はあ、制御できる限界ギリギリぐらいまで練り込んだぞ。これでいけるか?」
《成功率は……うん、高くはないけど低くもないね。あとはマスター次第だよ》
「二人分だしな……神気だって、俺は称号的にまだ見習いだ。少しでも可能性があるだけまだマシだ」
《では主様、制御ができている内に》
口で答える代わりに、結界の中に居る姉妹の下へ向かい手に触れた。
小さくはない、だが柔らかな少女の手に何やら脳内でサイレンが鳴り響くイメージが湧いたが……それを払拭し、能力を行使する。
「──“奪能掌”!!」
今の俺に【思考詠唱】を用いる余裕など無かったので、口頭で宣言した。
対象は【封印】、二人の指示通りに二つ纏めて姉妹から奪い去る。
そして感じる、凄まじい抵抗。
手が焼けるように熱く、バチッと痺れる感覚にも襲われるが……構わず行使を続ける。
神気を使っているからか、それでも抵抗に負けじと干渉を続けることができた。
とにかく想う、姉妹から【封印】を奪い彼女たちが苦しまずにいられる姿を。
「さっさと……寄越せッ!!」
想いの丈を叫ぶのと同時、抵抗を続けていた【封印】が姉妹から引き剥がされた。
瞬時にグーとレンによって、能力の発動が停止され……【封印】は俺のスキルとなる。
「やった……のか?」
《ああ、おめでとうマスター》
「……はあ。緊張した……もう、正直ダメかと思ったんだが」
最後に叫んだ辺りで、そろそろ制御が狂いそうになっていた。
姉妹に影響が及ぶかもしれない点を考慮すれば、一度中止していたかもしれない。
結果的に成功したのはよいだが……思いのほか抵抗が凄まじかったのだ。
「これにて一件落着ってことで……いいんだよな?」
《はい、おそらく──上ですっ!》
「上? 上にいったい何が……んなっ!」
レンが突如、警戒心を露わにして告げたその先には──ナニカが飛んでいた。
とても見覚えがある、創作物でも定番の存在……神の使徒として。
「あれは……天使、なのか?」
『緊急の事態により、規定目録に従い行動します。神気、及び特異な強奪能力の確認……行使者を発見、排除を実行します』
「スー、結界! そのまま遠くに運べ!」
細かな指示をする暇もなさそうだ。
俺は俺でギーの本体『摸宝玉』を取りだして、その形状を大盾に変えておく。
スーは俺の言うことをすぐに理解して、姉妹を安全な場所まで遠ざけてくれた。
ここは第二世界『修練場』、多少無茶をして環境に影響など出やしない。
「天使様がどれだけ強いか分からないが……やるだけやってみるしかないか。グー、レンは引き続きサポートを頼む」
《了解》
《畏まりました》
「このタイミング、間違いなくトリガーはあのスキルだな。創作物でたとえるなら、負けたら元通りのヤツ。アイツらを救うには、天使を行動不能まで追い込まないとダメ……救うため、やり遂げてやる!」
口で自分の中で考えを纏め、やる気を出して天使へ武器を向ける。
天使も俺に手から光の刃を生みだし、こちらへ飛んできた。
おそらくは長丁場になるはずだ……まずは様子見といこうか。
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