AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
03-15 眷族決闘 その01
装備アイテムの生産が完了する。
余裕を持って考えていたら、明確なイメージが浮かんだのでサクサクと作り上げた。
さすがに神鉄石は使っていないものの、普通の生産職ぐらいを狙ったので質は良い。
──S品質で揃えているからな。
「さてさて、どこに行ったかな~?」
「こ、これはメルス様! どうしてこのような場所に?」
「リョクと連れてきた奴らを探している。ここいらで見かけたか?」
「い、いいえ。ですが、先ほど神殿へ向かったという話を耳にしました」
まあ、そこがゴールだからな。
ただ、もう居ない気がするんだよ……なぜなら進化は早急に済ませた方が、彼女たちにとって得だからだ。
「そうか。情報提供感謝する、また何かあればよろしく頼む」
「はっ、はい!」
直角に近い角度で頭を下げられ、なんだかなぁという気分になりつつも──周りの気配が異様なものになっていることに気づき、即座に“空間移動”で空へ逃げる。
『メルス様ぁあああ! どこぉおおお!』
「……おう、長居は無用だな」
老若男女問わず集まった国民たちは、我ぞ先にと先ほどまで俺の居た場所に向かう。
さっきまで会話をしていた者はなんだか恍惚としているし、それをとても羨ましそうな目で見ている者が居るし……ハァ。
「俺、そんなカリスマとか無いよな?」
この問いに応えてくれる者は誰もいない。
だが、解答は俺自身がよく知っている──あるわけないだろう、そんなもの。
それは主人公やその仲間たちが持つ才能の一つであり、凡人が持つモノではないのだ。
神殿に向かい訊ねてみたが、やはり彼女たちは進化と転職を済ませて別の場所へ案内されたようだ。
どこに居るのか、まあ探せばすぐに分かるのだが……やるしかないか。
「さてさて、我が眷族の居を示せ…………いや、レベル1のプレイヤーを案内する場所ではないと思うんだが」
眷族の居場所がなんとなく分かる。
俺の願いを基に構築されている個有スキルなので、そういった機能も搭載されていた。
それを使い、三人の場所を探ってみたのだが……どうやら南に居るみたいだ。
◆ □ ◆ □ ◆
青い空に白い雲、そして煌めく太陽。
この表現だけで、彼女たちがどこへ案内されたか理解できるだろう。
……不思議だよな、直接言っていないのに伝わるって。
「よお、待たせたな」
「……ここって、どこなの?」
「いきなりそれか? だから、運営に知られていない特殊なフィールド──空間魔法で生みだされる個人の空間だ」
「広すぎるのよ!!」
日光を物ともせず、吸血鬼の少女は俺の胸ぐらを掴み激しくシェイクする。
リョクをチラリと見るが、何かしらの話を済ませているのかとても申し訳なさそうな表情を浮かべるだけで体は動いていない。
「ま、まあそんなことはどうでもいいだろ。それよりもティンス、具体的にどんな種族に進化したんだ?」
「……『吸血鬼・準男爵』よ。日光で弱体化することは無くなったし、血を吸わずとも吸血衝動が起きなくなったらしいわ」
話によると、満腹度と一定時間内に補給した血液量がリンクしており、一定以下になると暴走状態になるんだとか。
新人だったからそうならない内に、進化したと……普通ならありえないだろうに。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
「どうしたんだ、オブリ?」
「わたしは『高位妖精』になったんだよ!」
「そうかそうか、いい種族を選んだな」
ちなみに、二人の容姿に大きな変化は無いと思う。
ティンスは吸血鬼としての爵位を得ただけなので目に見える変化は必要なく、オブリも背中の小さな羽の模様が複雑になっただけ。
ただ、進化は間違いなく彼女たちの力を高めてくれているようで、感じ取れる生命力やら魔力やらのエネルギーの強さがより高まっているように感じた……鑑定で視てみれば、たしかに補正で増大していた。
「──さて、なんでここに来たんだ?」
第一世界の南は海洋フィールド、俺がテンションのままに生みだした七つの海が広がるビーチエリアだ。
バカンスと特訓をできる場所なので、リョクは当然知っていたが……なぜここに?
「私は日当たりのいい場所を聞いたのよ。そしたらここだって習ったわ」
「はい、わたしは楽しいところに行ってみたいって言いました!」
「──双方の主張から、海洋フィールドを案内しました。我が主、何か問題があったのであれば申していただけないでしょうか?」
うっ、イケメンになってもリョクはリョクで、その忠犬っぷりは変わらない。
とてもしょんぼりとするイケメンを宥め、二人にも何か言わなければ。
「……問題は無い。ティンスとオブリも、あとで処理を済ませたらこの世界に来れるようにする。案内してもらったかは知らないが、他にもいい場所がある。よければリョクにまた案内をさせてやってほしい」
「どうやったら来れるのかしら?」
「魔道具……『だいじなもの』を使えば、来れる場所だと思ってくれ。いちおう捨てられず、壊れないようにすることもできるが……やっておくか?」
「お願いするわ」
よくあるよな、絶対に壊れないとか謳い文句にしているアイテムを防御手段にするって方法……全身をそういうアイテムで包んでおけば、ある意味無敵かもしれない。
壊れないのは材料的な問題で解決するとして、捨てられないのは呪い系の性質かな?
頭に過ぎる【生産神】補正曰く、闇魔法を使えばそういう風にできるらしい。
「おっと、魔道具で思いだした──二人の武具とリョクの新装備だ。要望通り、望んでいた能力も付与できた」
「おおっ、我が主……誠に感謝致します!」
「……変形するって、おかしいわよね?」
「うん、ありがとうお兄ちゃん!」
三者三様、それぞれな感想を受け取る。
しかし、防具を与えられたリョクはともかく、二人に渡したのは武器だ。
──そのまま放置、とか弱すぎる相手で試させるわけにもいかない。
「いっそのこと、二人と直接戦って調べてみる……なんてのもいいかもしれないな」
「いいわね、それ。どこかで試したいわ」
「お兄ちゃんの作ってくれたこれ、どれだけ凄いかやってみたい!」
「……どうされますか? ワレが代わりに戦うことも──」
「いや、俺がやろう。それにせっかくだ、こういうことは大々的にやらないとな」
リョクに俺のアイデアを伝えると、すぐに作業を始めるためにリーンへ向かった。
俺もレンに繋ぎ、いくつかやってもらいたいことを指示しておく。
──まずは……舞台の設営だな。
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