AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

03-02 スキルレベリング



 転職ギルドでの試験をすべて終わらせた。
 あれから数日が経過し、張り切っていた上司さんが可能な限り試験官を集めたため正式に転職可能な職業は大幅に増えたわけで──

「これで鑑定や看破で視られても、証明書を見せるだけで誤魔化せそうだな」

 紙は特別なスキルで加工がされており、偽装ができないようになっているためだ。
 転職というシステムに神が関わっているため、偽装した物を持っていても何の意味も無いからである。

 証明書を水晶に読み込ませることで、普通の人々は転職リストに認証された職業が追加されるんだとか。

 俺は……試しようがないし、そもそも全開放状態だから意味が無い。

「さて、次はレベリングかな? ある程度いま就いている職業の武具にも慣れてきたし、次の職業に行く分の経験値を溜めようか」

 というような考えもあって、俺は第四世界にある迷宮へやって来ていた。 
 そこにはレベリング装置……と言いたくはないが、まあそんな環境が整えられている。

 支配する迷宮内であれば、【迷宮主】はそこを自在に転移可能だ。

 第四世界までを時空魔法で、迷宮までを空間魔法で移動して、それから【迷宮主】の機能を使って目的地へ向かう。


「──かくかくしかじかだ。これから始めさせてもらうぞ」

「何がかくかくしかじかなのか、それがよく分からないのだが……うむ、承知した」


 天を見上げながら話しかける。
 そこには炎を纏う──否、炎でできた巨大な鳥が立つ。

 それこそが、もっとも効率よくレベルを上げることができる迷宮の魔物なのだ。

「今日は武具関係がメインだ。魔法は極力使わず、ダメージを与えられるように最低限の付与をするだけ」

「……そうか」

「必要分の経験値が溜まったら、好きにしていい。こっちも頼んでいる側だ、ある程度願いは叶えるぞ」

「そ、そうか!」

 いくら言語理解スキルがあるとはいえ、違和感のある共通語。
 ソレの種族的な性質もあって、気になるものの声自体は滑らかに届く。

 そのため、声がどういった感情で発せられているかがよく分かる。
 ……だからこそ、俺は少しだけげんなりとしてしまうんだよな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 メルスは無数の武具を宙に並べていく。
 炎の鳥──不死鳥フェニックスである迷宮魔物ダンジョンモンスターは、その様子をただ眺める。

「準備はいいか?」

「うむ、いつでも」

 示し合ったように確認を取ると、二人はすぐにいつものやり取りを始める。
 急加速しメルスに向かって飛んでくる不死鳥に対し、ただ無造作にソレを振るう。

 ──振るわれた大鎌は、ただ振るわれるがままに不死鳥の首を落とす。

 頭部を失った首より下は、制御を失い錐揉きりもみしながら地面に墜落してしまう。
 痛々しい音を立てながら、強制的に減速してやがて停止する。

「さて、一度目……次やるぞ」

「嗚呼、嗚呼……嗚呼──ッ!」

 だが、首から切断された頭部は、突如高々に歓声・・を上げ始める。
 自身の状況を理解していない……いや、しているからこそ歓喜の涙・・・・を浮かべた。

「相変わらずだな……まあいいか、速く再生してくれよ」

「そ、そうであったな──完了だ」

 首と頭部を繋ぐようにボゥッと炎が生じ、炎の勢いが増せば増すほど二つの距離が近づいていく。

 天まで焦がす勢いで燃え盛ったとき──切り落とされたはずの首が接続されていた。

「よし、なら二回目はサクッと」

「バッチこ──」

 棍──同じ太さで作られた直線状の棒が、不死鳥の頭部を押し潰す。
 グシャリとヘコみ、飛び出た内部を気にも留めずクルリと棍を回してもう一度叩く。

「あ、嗚呼……」

「嬉しそうで何よりだ」

 ズタズタに破壊された頭部を、無理に動かして表情筋を緩める。
 その様子に同様の表情を浮かべ、異なる武器を再び握り締めて不死鳥に振るう。

 しかしそのほんの少し前、不死鳥から魔力が放たれる予兆を感じ取ったメルス。
 行動を強制的に停止させ、勢いよく地面を蹴って後方へ下がる。

 そして、魔力が解き放たれた。

「──“紅蓮大蛇ブレイズサーペント”!」

 特殊火系統魔法──紅蓮魔法。
 炎にさまざまなものを象らせることができるほど、高い火属性対する適性を持つ者が扱えるその魔法によって、地を這う大蛇がその場へ現界する。

「おっと、ようやく反撃か?」

「ある程度満足したのでな。そろそろご主人が満足いくような闘いにしようかと」

「なら、そうしてくれ!」

 両刃の巨大な斧を担ぎ、不死鳥が生みだした炎でできた大蛇の頭部に振り下ろす。
 魔力を(魔付の心得)によって一瞬で纏わせていた武器は、炎の蛇を切り落とした。

「──“振打スイング”(“切斬スラッシュ”)!」

「げふぅ……!」

 口頭による武技の発動宣言に加え、悟られないように思考詠唱を用いて発動するもう一つの武技。
 それぞれ斧の基本武技なのだが、上手くメルスが軌跡を描くことで同時に発動させる。

 振る速度や当たったときの威力を向上させる“振打”と、斬撃としてのダメージに補正が入る“切斬”。

 その二つが同時に発動することによって、威力そのものと斬撃の影響がより向上する。

「あ、嗚呼……あぁぁぁ、あっ……」

「どうだ、今の一撃は?」

 首ではなく腹から裂かれるように斧を受けた不死鳥だったが、それでもなお、不死鳥から恍惚とした声が絶えることはない。

「……本当に今さらな話だが、よくもまあ何度も殺すようなヤツに忠誠を誓えるよな」

「言ったであろう。我ら不死鳥は、死ねば死ぬほど強くなると。そしてご主人は、我を素敵な形で殺し尽くしてくれる……感謝こそすれども、恨むことはない」

「その感性はともかく、この世界の不死鳥のチートっぷりには驚いたものだよ」

 不死鳥専用の種族スキル──(再生の焔)。
 その効果は能力値への補正、向上方法はスキルを持つ個体の総死亡数。
 死と再生の象徴である不死鳥には、無限に強くなる可能性を持つ力が存在するのだ。

 メルスは効率の良いレベリング方法を探し求めた結果、不死鳥の召喚を試みた。

 初期投資がどれだけ高かろうと、決して尽きることのない経験値とポイントしげんを考えてプラスにしかならない、そう考えたのだ。

「とりあえず、職業関連はこれで最後だ──そのあとは、分かっているな?」

「う、うむ……よ、よろしくお願いする」

「ああ、任せておけ」

 二振りを剣を握り締め、メルスは不死鳥へ駆けていく。
 そして不死鳥もまた、燃え盛る翼をはためかせてメルスを迎え入れた。

 ──そして、命の炎が消えていく。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 不死鳥のステータス

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ステータス
名前:■■■(♀)
種族:(不死鳥Lv1)
職業:(迷宮階層主Lv-)

HP:200
MP:400
AP:150

ATK:45 【+10】
VIT:30 【+10】
AGI:100【+10】
DEX:50 【+10】
LUC:50 【+10】

【迷宮の加護】

スキル
(再生の焔:■■■)(紅蓮魔法)(飛翔)(遠視)
(嘴撃)(回避)(危険察知)(強襲)(高速再生)

迷宮スキル
(連携)(隠密)(体力譲渡)(回復魔法)
(消費軽減)(異常耐性)(精神耐性)(緊急転移)
(環境耐性)(言語理解)(魔法耐性:追加)

祝福
(迷宮の加護)(眷軍強化)

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※一つ目の伏字はすぐに分かります
 二つ目の伏字は三桁の死亡数を意味します
『:追加』はDPを消費して追加したスキルであることを意味します


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