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山田 武

02-12 武具創造【忍耐】



 リーン

「リョク、訊きたいことがあるんだが……」

「我が主、なんでも仰ってください!」

「そこまで深刻な話じゃないんだけどな」

 ある日のことだ。
 創造のアイデアに少しだけ詰まり、気分転換としてリーンを訪れた。
 そして、ふと思ったことを訊こうと思ってリョクの場所を尋ねたわけだ。

 ……実際は誰に訊いても問題なかったんだが、誰に訊ねようとしても『リョク様にお訊きください』と言ってきたんだよ。

「食糧に関する話だ。ウサギを定期的に用意してはいるが、さすがに飽きるだろう? だから畑を用意した」

「ワレらのことを思っていただけたこと、大変感謝しております」

「気にするな。民のことを思うのは、愚王でもできることだ。それよりも……その畑について、確かめたいことがある」

 実験によって生みだされた豊穣の大地。
 魔法と耕作スキル、その二つで耕した畑の様子をしっかりと確認しておきたかった。

 だが、自身で試す際は時魔法“時間加速クイック”によってじゃんじゃん生産していたので、本当の意味で調べてはいなかったわけで……。

「本来なら、俺もわざわざリョクの手を煩わせたくはなかったんだが……なぜか現場の者もリョクに任せていてな」

「…………余計なことを」

「何が余計だったんだ?」

「聞こえておりましたか……申し訳ございません、我が主」

 何やら謝られてもしょうがないんだが。
 まあ、一度気になって聴覚を強化したら理由も分かったので構わないんだけど。

「俺ってさ、そこまで話しづらいか? 恐れ多い、とか言っている奴もいたが……」

 そう、理由は俺への畏敬だった。
 直接話しかけられるのはリョクだけと決められてるって……俺は神様扱いか?

 ──そんな称号、得たばっかりだけど。

「我が主は、ワレら行き場のない魔物に住むべき場所を与えてくださりました。本来であれば、殺され魔核を奪われるのが自然の理。それを我が主は救ってくださいました。民にとって、我が主は救世主なのです」

「そんなに重いか……」

「それだけでなく、こうしてワレらの元を訪れてくださります。何もしない神よりも、我が主は尊き存在なのです」

 まあ、日本人もよく『神は死んだオゥ・マイ・ゴッド』というし……身近な存在に頼りたくなるのも、分かる気もする。
 だがそれでも、親しくしてもらえないのは正直堪えるんだ。

「先に言っておく、俺はただお前たちと親しくしていきたいんだ。王様だから威厳を、神様として威光を、なんてことは頼まれてもしない。ただ人として、お前たちデミゴブリンと仲良くしたい」

「…………」

「王は別の奴──リョクがやってくれ。神でも王でも無い、ただの人である俺の従魔。デミゴブリンキングのリョク、それがお前だ」

「……よろしいの、ですか?」

 不安気な瞳だ。
 何かを恐れ、それでも従魔としての義務を果たそうとしている。

「俺は居なくならない。まあ、これまで通りの間は空くが、それでもこの世界に来る限りはずっといっしょだ」

「ハッ」

「召喚もなかなかできなくて悪いな。けど、傷つくことを恐れているんだ……大切な、初めての従魔。それがお前だし」

「……っ!」

 よかった、怯えの目ではなくなった。
 王の思いは民にも伝染してしまう……俺の思いが伝わっていなかったのは、きっと民がリョクを真の王だと感じていたからだろう。

「顔を上げろ、前を向け、覚悟を決めろ」

「ハッ!」

「まずは意識改善だ……手伝ってくれよ、俺の従魔リョク

「御意に!」

 畑の話をしようとしていたのに、どうしてこんなにシリアスなことを話しているんだ?
 まあ、いずれはする必要があったんだし、ちゃっちゃと済ませておこうか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「そして後日、再び創造を行った」

 リョクの仲介もあってか、これまでよりも魔子鬼デミゴブリンたちの反応が好くなってきた。
 そうしてほっこりとしてきたからなのか、不思議と創りたいものが頭に浮かんだ。

「守るべきものができた……だからこそ、これが生まれたのかもな」

 それじゃあ、恒例のチェックといこう──

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不退の天靴 製作者:メルス

聖武具:【忍耐】 自己進化型
RANK:X 耐久値:∞

今代の【忍耐】所持者が創りだした履物
あらゆる場所に踏み止まり、決して退かない
危険な状況であればあるほど、所持者の能力値を強化し耐え抜かせる
また、この履物は意思を宿しており、攻撃や主以外の者を拒絶する

装備スキル
(自我ノ芽)(退転締脚)(平常歩行)(不動金剛)
(環境応吸)(自然無効)(逆境成長)(?)……
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 雨靴のような形をした天靴。
 レインならぬスカイブーツなこの聖具は、誰かを守るために創造した代物だ。

「足腰がしっかりしてなけりゃ、維持もできずに倒れ込む。摩擦ゼロ、なんて魔法もあるかもだし……うん、必要だ」

 倒れてしまえば、守りたいものを守ることはできないだろう。
 回復能力は他の武具も持っているので、今回【忍耐】には俺自身が闘い続けられるような力をイメージした。

「防御特化になるわけじゃないし、守るだけじゃ駄目な時もある……攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ」

 じっとしていても何もできないならば、自ら打って出るしかない。
 聖・魔武具があればそれができる。
 何一つ、俺の手から零さなくても──


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