AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
02-10 武具創造【憤怒】
あれから数日が経過し、畑の植物たちも大量に実った。
町に行って種を買っては、リーンの畑に埋めて魔法で急速栽培していたんだ。
時魔法“時間加速”を適度に施し、育てた結果──品質はA+。
まあ、無理にやった側としてはしょうがない結果だと理解しているし、デミゴブリンたちも新しい食べ物を喜んでくれていた。
「せめて、木魔法が木以外にも使えるような魔法だったらよかったんだけどな……」
木蔦や木茨という言葉があるお蔭か、蔦や茨には干渉できるんだが……それ以外のモノには対応しておらず、時魔法で時間を飛ばすという方法しか取れなかった。
「まあ、その考え方だと木苺にも効くことになるんだが……そこはまず、この世界にそもそも存在しているかを試さないとな」
西のエリア──適正レベル20以上である『迷いの森』が植物の宝庫だという噂を耳にしたし、もしかしたら木苺もそこら辺に落ちているかもしれない。
甘味で味付けしたポーションは、子供たちにも大人気となっている。
仮初の王であろうと、国民が喜ぶ物を用意するのは当然の義務であろう。
と、ここまで他者を思いやっての思考が行われていたが、ここからは完全に個人的な考えを元に動いていこう。
──そう、つまり武具創造である。
「ついに、これを創れば半分の聖・魔武具を生みだしたことになるんだな」
七つ目、一つ一つが主人公の能力として採用される程に強力で凶悪な力を秘めたアイテムを個人が有する異常事態。
ステータスとは関係ないが、なんだか手馴れてきた作業を今回も行う──
(“魔武具創造”)
ついには思考による発動で起動させ、よりイメージを伝えられるようになるまでに……まあ、実際どうだかなんて分からないが。
毎度のことだが、魔武具の創造時は昏い雷光が生みだされた空間の裂け目から辺りに向けて炸裂する。
綺麗なエフェクトもただ綺麗だと思えるぐらいに、経験を積んできた。
「おっと、そろそろできあがるか」
タイミングもバッチリだ。
生みだされた魔武具を手に取ると、すぐに鑑定を発動する──
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反理の籠手 製作者:メルス
魔武具:【憤怒】 自己進化型
RANK:X 耐久値:∞
今代の【憤怒】所持者が創りだした籠手
所持者に不殺の格闘技術を齎し、装備中に起きた事象を覆す力を有する
対価を支払えばあらゆる運命に干渉し、死すら覆すことが可能
また、この籠手は意思を宿しており、攻撃や主以外の者を拒絶する
装備スキル
(自我ノ芽)(接触反転)(因果改変)(禁殺格闘)
(物理増幅)(物理貫通)(殴打成長)(?)……
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怒りが力となる、某野菜の宇宙人みたいな能力も最初は考えていたんだが……魔武具とは関係なく、【憤怒】の能力自体がそれに近しいものだったので、俺のイメージはこのような物となった。
「キレた奴といえば、やっぱり拳骨だ。けどそれはただ発散のために行うモノと、相手のことを想って行うモノがある」
それによって荒んだ心が癒える、なんてドラマみたいな話があるぐらいだしな。
──そこから発想を得て、この魔武具は創造されたわけだ。
「殴ったダメージが回復する、そう例えると【救恤】の近接版みたいになっちゃうな。もちろん、全然違うけど」
怒りとは、さまざまな要因によって引き起こされる原初的な感情だ。
物理的や精神的、有形無形に問わず、その事象が自身にとって気に食わない結果であれば怒りの想いが生みだされる。
この魔武具は、要するに発生した問題へ対処するために創られた物だ。
先も挙げた人の心を動かす象徴として、籠手を用いて改変したいモノに触れる。
すると俺の魔力を対価に、打撃のダメージが問題を解決するためのエナジーとして使用されるわけだ。
殴られた者は心身を癒され、荒れ果てた自然は豊穣を約束される。
「……まあ、今のままじゃ全然使わないだろうけど。わざわざ近づかずとも、魔法の連射でだいたいの問題は解決できるし」
ならなんで、なんて疑問が飛んできそうだが、それにはわけがちゃんとあるのでお気になさらず。
──創りだしたからには、俺なりの意義という物を籠めているのだから。
「怒りは誰でも抱くモノ。聖人であろうと、救われない者たちを救おうと憤る。【憤怒】すること自体に善悪の感情は無いんだ。俺たちが、今生きていることの証明なんだから」
神話によれば、神様だって怒って人間に試練や裁きを与えるのだからそうなのだろう。
正しい憤怒なんてものは分からないが、それでも感情そのものに罪はない。
人の捉え方が善悪を定めたのであって、複雑な感情を罪や徳という形でカテゴライズされていたわけではない。
「そもそも偽善って罪なのか徳なのか……考えれば考えるほど、謎が深まるな」
まあ、両方ってことでいいか。
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