竜と王と剣と盾

ノベルバユーザー173744

アルドリーは、可愛い弟弟子たちに出会いました。

日当たりの良い、平原に面したテラス付きの部屋に、先代カズール伯爵の設置した子供部屋がある。
おもちゃに絵本、お昼寝ように巨大なキングサイズのベッドと、ベビーベッドも置かれ、着替えもオムツも隣のクローゼットに完備されている。

これは、シエラシールが幼少時最初に準備させたものだが、シエラシールは全く興味を示さず、その他の子供たちが遊んでいた部屋である。

「うわぁ、何て、幸矢こうやに似合わないんだろう」

アーサーの言葉に、リジーは、

「ここは、私もよく遊んだんです。私は……父が忙しかったので」
「えっ?そうなの?」
「はい。私は2才のときに、父に引き取られたのです。養女ですから」
「えぇ?そんなこと気にしなくていいよ?」

微笑む。

「はい。元々、亡くなった両親はマディお兄様の友人で、お父様の部下だったんです。父の実家がマルムスティーン領にあって、冬に帰省したんです。その途中の町で、雪崩事故があって、両親は救助に。救助が終わったと確認をしていたら二次雪崩……」

言葉をなくすアーサー。
しかし、乗り越えた少女は答える。

「両親は間違っていませんでした。騎士として、生きました。で、私は、父方は商売をしていました。母方は職人の家系です。どちらも引き取ることができず、そうするとお父様たちが迎えに来てくれました。お父様は本当に可愛がってくれました。でも、私も、両親と同じ道を……お父様やお兄様たちと一緒の道をと告げたときにも、送り出してくれました。私は二人の父を持てて本当に誇りに思っています」
「自慢だね。良いなぁ~‼僕の父親ってあれだよあれ‼」

示すのは、疲労が極限で苛立っているシエラシールにぶん殴られているアレク。

「な、仲良しですね」
「あれは、仲悪いよ?絶対……あ、ガブリエルちゃんだっけ?はねんねだけど、セナ君とラファエル君は遊んでくれば?」

アルドリーの問いかけに、

「俺は、王太子殿下をお守りするんだ‼」

振り返ったのは、口調は少年だが、顔はどう見ても両親ではなく伯父にうり二つの……女の子である。

「え?えーとラファエル君、だよね?お守りって……」
「俺は、騎士になる‼で、王太子殿下をお守りするんだ‼それで、ママを助けるの‼おじいちゃんやおばあちゃんが倒れたら困るもん‼おじいちゃん。老後は俺が見るからね‼」

3歳児のお堅い……堅実で優しい夢に、子供たちのおもりをしていた祖父のセインティアは本気で涙ぐむ。

「ラファエル……何て優しい子なんだろう。あの息子の子供とは思えないよ‼」
「おじいちゃんの孫だもん‼俺だって一所懸命頑張ったら、絶対に、絶対になる‼頑張るからね‼おじいちゃん‼無理しちゃダメだぞ‼」
「嬉しいよ……本当にウィンが、嫁に来てくれるなんて思えなかったし、生まれてきたラファエルは本当に本当にいいこに育って……愚息は、この頃は、この屋敷のものを、持ち出しては壊したり、売ってお菓子を買っていた……あの頃は……」

号泣するセインティアに、アーサーは本気で不憫に思う。
どう見ても温厚さと賢さ、優しさ全面の彼の息子に、あのエリオットが生まれてしまったのは不幸としか言いようがない。

「で、でも、騎士になると、大変じゃない?」
「ウィリーパパが、なりたいんだったらシエラシール卿にお願いして、剣を教わると良いって‼俺は……ママを助けたいし、ファーママみたいに傷つくレディを無くしたいんだ‼」

絶対なる‼
なりたいんだもん‼

と言いきり、べそをかくラファエルに、目を開けたアルドリーはニコッと笑う。
アルドリーにとって、うるさいのは父親。
可愛い年下の子供はうるさくも何ともないらしい。

「ラファエル……だっけ?」
「うん‼……じゃなくて、はい‼」
「えらいえらい。頑張ったらラファエルも、騎士になれるよ。ラファエルに、君も……」
「初めまして、殿下。僕はエドアルド・フェリオスの息子のセドリシア、セナと言います。年はラファのひとつ上です」
「じゃぁ、セナにラファ。お兄ちゃんは幸矢こうや。グランディアの名前で、幸福を運ぶ者になれって。年は16歳だよ。一緒に頑張ろうね」

二人の頭を撫で、微笑むと、

「じゃぁ、無茶は禁物。焦ってもダメだけど、お兄ちゃんの師匠のシエラシール卿に剣を習おうね?」
「「はい‼殿下」」

その言葉に、

「幸矢兄ちゃんで良いよ?仲良くしたいから」
「じゃ、じゃぁ、幸矢お兄ちゃん‼」

その言葉に表情が緩み、ラファには幸せな、セナにはめまいがするほどの絶世の美貌が姿を見せる。

「ありがとう。元気になったら、一緒に稽古を頑張ろうね?シエラシール卿には伝えておくからね?」
「はい‼お兄ちゃん。ありがとう‼」

手が伸びて、二人の頭を撫でたアルドリーは再びスゥッと眠ってしまったのだった。



そして、珍しく疲れ極限の不機嫌なシエラシールが、一番に入ってきたのは子供部屋。
アレクサンダーがアルドリーが倒れて運ばれていったのを追いかけようとするため、鬱陶しいので放り投げたばかりである。

「うぅぅ~頭いたい~‼」
「大丈夫?父さん」
「蒼記。幸矢大丈夫?」
「うん。ほら、幸矢がお友だちになっちゃった」

示すと、アルドリーと一緒に寝ている幼児と、二人の子供。

「うわぁ、可愛い‼幸矢と並ぶともっと可愛い‼」

親馬鹿丸出しである。
てててっと転がるように出てきた二人は、ペコンっと頭を下げる。

「初めまして。僕はエドアルド・フェリオスの息子のセドリシアともうします。年は4才です」
「初めまして‼お、僕はウィンディアの息子のラファエルともうします。3才です‼」
「うわぁ、初めまして。私はシエラシール・クリスティーンです。よろしくね?」

優雅に頭を下げると、ニッコリと、

「幸矢お兄ちゃんと仲良くなったの?」

ラファエルは、走るように前に出ていくと、ペコンと頭を下げて、

「シエラシール卿‼お、僕は騎士になりたいです‼どうか、僕に剣術を教えてください‼必死に頑張ります‼だから、お願いいたします‼」
「えっと、セインにいさま……もしかしてエリオットの借金……そんなに、家を圧迫してるの?」

不憫そうな声に、セインティアは俯き、

「そ、それは、家どころかロイド本家を圧迫する額……ではあるけれど、さっきは、『おじいちゃん‼俺はおじいちゃんやおばあちゃんをちゃんと見るからね‼』とは言っていたけれど、気を失っていたときに殿下をご覧になったら、『殿下の騎士になりたい‼』って、そうしたら殿下に『一緒に剣を習おうね』って言っていただいて……そうしたら絶対になるって……」

う~ん……

シエラシールは考える。
が、すぐに、膝をつき、

「じゃぁ、ラファエルとセナは、おじさんの弟子になって、セナはおじいちゃんやお父さんの名に恥じない、ラファエルは、お父さんよりもおじさんのウィリアム卿のような騎士になろう。良いね?泣いても良いけれど、やめるとか言うのはなしだよ?皆泣きながら頑張ったんだからね?良いね?」
「はい‼」
「よろしい。じゃぁ、二人は後宮騎士団見習いとして、お父さんとおじさんやお母さんと来なさい。お勉強も、マナーもお勉強だからね?」
「はい‼」

と言うことで、史上最年少の後宮騎士団見習いたちが誕生したのだった。



とは言え、まだ3才と4才。
シエラシールは、剣の訓練は自分達が、後は遊ばせつつお昼寝に、ちょっとマナーや数字を覚えたりをさせるように手を回したのだった。

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