竜と王と剣と盾

ノベルバユーザー173744

六槻ちゃんもアルドリーも、ビックリのお兄ちゃんたちです。

グランディアの長の幸矢こうやたちの祖父、清影せいえいとヴィクトローレの術によって、時空が繋がった道を、渡っていく。

ちなみに、フィアは、六槻むつきと手を繋ぎ、もう片方は六槻の祖父ヴィクターが繋いでいる。

「フィアちゃん。向こうは、何があるの?んっと、んっと……そ、それに、お洋服スースーする」

少し不安げに六槻は問いかける。



少し時間を遡る。
グランディアでは質素な生活をしており、出発前に着替えを出してきたヴィクトローレに、

「何でおじいさま……サイズがお分かりです?」

と冷たくすいに言われ、

「と言うか、エドワード?そこにいる義弟のように変態とか、お前このおじいさまを思ってないよね?」
「思ってますが?それに、周囲のみんなも、おじいさまを『残念変態ショタコン』認定済みです」
「私は、可愛い甥と姪に、孫。そして兄上を愛でること‼『ショタコン』『アレコン』ではありません‼『ブラコン』だけど‼」
「威張るな‼……その可愛い孫って、僕じゃありませんよね?」

無表情の彗がうすら寒そうに祖父を見ると、

「お前も孫だから入ってるよ。それに今はおてんば盛りのお前の妹もいるし。もう、口はたつし、誰ににたのかねぇ?」
「……ぶ、無事だった……エラン……エランティエ……」

震える声で囁く彗。
その第二次反抗期に入りつつある孫を引き寄せ、頭をくしゃくしゃと撫でながら、

「お前の髪って、マルムスティーン家って、良くわかるくしゃくしゃ髪だねぇ。それに、こちらとは、道は繋ぐのに地軸、地表同士が偶然の瞬間で近づき重ならないと難しいのだけれど、時々道ではなくお前とアルドリー、そしてセイラの両親、ヴィクター叔父上の力を探せば、力わざで、情報通信をすることができるんだよ。本当は、シエラが落ち着いた能力者であれば、六槻の力を使うこともなかったんだけどね……。アルドリーも安定してないし、お前は暴発するし……使ったこともあるけど。緊急に」
「ちょっと待って‼聞き捨てならないこと聞いたよ‼」

蒼記あおきが叫ぶ。

「何?皆の力を使ったこと?」
「それもあるけど、彗に幸矢に六槻の力使うんなら、どーして僕の力使わないの‼」
「え?」
「僕だって役に立つし‼無理に力使ったって言ったよね?幸矢と六槻は体弱いんだよ~‼彗のはバンバン使って良いし、祖父様は繊細で寝込んだら困るって青い顔してるからなるべくやめてほしいし、おばあ様の、破壊的要素とセイラさんの怪力‼そっち使ってよ‼邪魔なんだから‼二人が一週間でも二週間でも寝込んだら、シエラ父さんの破壊だけで済むでしょ‼」

呆気に取られるヴィクトローレ。

「あのさぁ、蒼記。うざっ‼僕と蒼記の術力の差は、生まれつきだって言ったじゃないか。それに、この時空を繋ぐのも、本来はしてはいけない禁じ手なの‼認められないの‼それに術師に負担がかかるの。現在のこの場にいる術師は、僕とこの変態お祖父様と、ヴィクターお祖父様、フィアちゃんにルゥ姉様。術師の勉強はしてないけどのろのろしてるシエラ父さんも、シルゥ伯父上も、向こうの術師の能力も総動員だよ‼それでも足りないから幸矢の力を使ってるんじゃないか‼」
「えぇぇ‼幸矢普通だけど?」
「さっきの、蒼水晶あおすいしょうのお陰だよ。一時的に安定しているだけで、帰ったら一月は最奥さいおくの王太子の間で静養だろうね」

ヴィクトローレは告げる。

「アーサー。お前の術師の能力は術師が大勢いるこの中でも、厳しいことを言うけれど、最下位。シェールドの術師の中では中の上だけれど、お前が当たり前のように見ている術は、本当に高度な術が多いんだ。お前がもし使いたいとするなら、かなりの努力が必要だ。それに、お前の一番よく知っているだろう叔父上の術師としての能力でも、上の中でも下になる。その代わり叔父上は努力して力がないのなら、術を覚えようとそしてその術の荒さを取り去り、扱いやすく精度を上げて使ったものが多い。叔父上は、他の術力はほぼ平均値だけれど、光の術力が圧倒的に高いんだ。光は本当に扱いにくい。それを扱えるからこそ、素晴らしい術師として生きていける」
「……‼……じゃぁ、伯父上は……僕は役に立たない人間?」
「術師としては平均より少し上。それに、性格上セイラににていると思うから荒くなる。その荒さを取り去り、精度を上げて努力すればお前もそこそこの術師になれる。それと、シェールドの王家は基本的に精霊の守護を持つ。お前は、もう一人の王太子だから、精霊に愛されている。その精霊に助けを求めれば術の補助をしてくれる。でも、基本的に精霊は気紛れ、頑固だからそれをどうなだめるかだね。六槻は生まれながらに精霊に愛された姫だから、あの子はなだめたりしなくても、精霊が全部やってくれるけど」
「……む、六槻?何で?」
「さぁ?私はアルドリーのように生まれつき精霊を配下に従える能力ないし……解らないよ。にいさまも生まれつき水の精霊と風の精霊に愛されているけど、それはカズールとマルムスティーンの直系だからって、あのいつ死んでも良い、お祖父様も言ってたからね」

あっさりと告げる言葉に、蒼記は、

「お、お祖父様って、ヴィクトローレ叔父上のおじいちゃんまで生きてるの?家のおおじいさまのお父さんだよね‼」
「不本意ながら、生きてるよ。おばあ様のアリアンロード王女殿下もお元気。おばあ様は別名『シェールドの女王』とも呼ばれているからね。お祖父様はヴィクター叔父上のことを『ちびヴィ』ってからかう上に、私のことを『ちびヴィ二号』って呼んでくれるものだから……エドワード、良かったね。お前のあだ名は『3号』決定だよ」
「そんなのいるか~‼」

と叫ぶエドワードだった。

「で、話は戻るけれど、セイラに色々情報をもらっていたし、グランディアの女性は小柄だからね」
「で、これは……」
「緊急にお願いしたウェイトにいさまのお姉さんのカリナ、サレーヌ、ターニャ、ナーニャ姉様の力作だよ?」

ウキウキと六槻のドレスの最後に、リボンを結び、くつ下から靴、手袋に、髪飾りにと嬉しそうに飾り立てるフィアが声をかける。

「えーと、フィアちゃん。何で、六槻にそこまで熱心なの?」

清夜さやのドレスの手伝いをしていた幸矢は問いかける。
振り返ったフィアは、キョトンと、

「あれ?シエラにいさまに聞いてないの?僕、六槻ちゃんの婚約者なんだけど?」
「……エェェェェ‼こ、婚約者‼いつ決まったの‼」
「ん?えっと、18年前‼」
「六槻生まれてないじゃない‼」

蒼記の声に、

「うん。でも、カズールでは多いんだよね。少子女系の一族だから。生まれる前から婚約者決まってるの。ヴィクターお祖父様もそうでしたよね?」
「そうだね……こら‼大人しくしなさい‼お前の着たがっていたドレスだよ‼コルセットを締めて……柱に掴まって、息を吐きなさい‼」
「ギャァァ‼父さま‼死ぬ~‼苦しい‼」

悲鳴をあげるのは、清雅せいがである。

「きれいに着こなして、グランディアの王妃で、私の娘、ひいては、幸矢たちの祖母としてお披露目があるんだよ‼我慢しなさい‼」
「も、もう二度と……こんなの着ないわ……‼」
「いくつも行事があるんだよ。これを着るか、十二単じゅうにひとえか選びなさい‼それか、こちらの正式装束だよ‼」
「そ、そんな酷な選択……酷すぎる……」

泣き言を言う娘に、

「それだけ遊んでいた証拠だよ。権威の象徴の人間としての自覚を思い出しなさい‼野性児‼」
「……おおじいちゃま?さーと、むーちゃんはそんなの着ないの?」

清夜の問いかけに、ヴィクターは、

「正式なレディとしてのお披露目をしてからだね。今はまだそういうかわいいドレスで十分だよ。良く似合ってるよ?」
「本当?にーちゃ、あ~ちゃん。似合う?」

一応ヴィクターの厳しいマナーレッスンもあり、それなりに修めている清夜はスカートの裾をつまみ、優雅にお辞儀をすると、ニコッと笑いかける。

「似合うよ‼さーやも六槻も可愛い‼それに、月歩つきほ……わぁぁ、可愛い良く似合ってるね?」

幼児服、しかも着ぐるみ姿である。

「それ、パタパタさんがついてて、本当に可愛いね‼」

ナムグの着ぐるみの月歩はテテテっと歩くと、裾を引っ張り、

「にゃぁう?」

と問いかけたのは、シルゥ。
シルゥは、セイラのドレスを娘のルゥに任せて振り返ったところで、小さい、しかも美少女間違いなしの可愛い姪に、

「わぁぁ、月歩ちゃんだよね。可愛いよ‼とっても似合うね」
「シルゥ、ちゃんも、にゃーう‼」
「本当?ありがとう~‼シルゥちゃんうれしい‼」

シルゥは姪を抱き上げる。

「新しいおうちに行こうね?みーんな一緒」
「ととしゃんも?」
「お父さんも一緒だよ?ほら、着替えてきたね?」

現れた祖父たちに、月歩は、目を丸くする。

「ととしゃん……しゅごい‼」
「えっ?似合わない?」

月歩の父の隼人はやとはおろおろとするが、

「かっこいいって言いたかったんだよね?月歩ちゃんは」
「うん‼」

の言葉に、頬を赤くし、

「き、着なれなくて、大丈夫かなと思ったのですが……シュウ兄上ほど体格が良い方ではありませんし……」
「いや、お前のサイズで十分だ‼何なんだ‼このハデハデは‼」

出てきたシュウに、シルベスターとフィア、ヴィクターにヴィクトローレが目を見開く。

「うわぁ~‼リューにいさまの正装‼一応大柄なものも用意してたのに、それより似合ってるよ‼」
「いえ、似合うと言われると複雑なんですが……シルゥ兄上」
「ううん、良く似合ってるよ‼その金髪。瞳の色は違うけど、剣をつけてるから本当に、カズール家の‼」
「お前は、体格が良いからね。それに家の息子より落ち着いてはいるけれど整った顔だし、下品に見えないのは本当に良いことだよ」

感心する。
セイラもへとへとになりつつ正装をまとったのだが、寝付いている妊娠中の瑞波みずははともかく、シエラの妻の清泉いずみはジュリエットドレススタイルであり、

「なんでぇ‼いっちゃんはこれなの‼」

と訴えたセイラに、恥ずかしそうに、

「セイラ姉様……あの、実は、同じようなドレスを用意していただいていたのですが、サイズが合わずに……恥ずかしいです」

頬どころか首筋まで真っ赤にする清泉は色白である。
その後ろからルゥが出てきて、やれやれと首を振る。

「悪かった。セイラ。言うのを忘れていたが、王都での正装はセイラと同じだがカズールのドレスは基本これだ。それに……」

まじまじとセイラの胸を見つめたルゥは、

「良かったな、セイラ。姉上方のドレスが似合うぞ。本性をかくして、一応見られる姿だ。で、清泉ちゃんはカズールのシエラの奥方だ。だからこちらにしたんだ。それに、国王の王妃が正装でなくてどうする‼自分の身分を考えろ」
「……言いながら、私の胸を見たわね‼」
「同性だし下品ではないだろう?それよりも、セイラ?」

ニヤリ、ルゥは何かをたくらんだ顔になる。

「良かったな。丁度、成長したシエラやアル達に会いたいと、大おばあ様がアン叔母上とお待ちだ。とてもとても、お二人はセイラのことを待ってくれているだろう」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って‼ルゥ‼ルゥ様‼」
「特に大おばあ様は、可愛い可愛いアル達に、さーやと六槻のことを楽しみにされている。清泉ちゃんは先程少し確認したが、さすがはカズールのシエラの奥方だ。それに、着替えの時に手伝わせていただいた瑞波みずはちゃんも上品で……とても嬉しがるだろう……で、セイラは……」
「ギャァァ‼じ、地獄が待ってるわ‼」



そんなどたばたがあったのだが、不安定な『道』を歩いていった六槻たちの前には、

「お帰りなさいませ。王太子殿下」
「お待ちしておりました。アーサー殿下」
「そして、王女殿下、騎士の一族の姫様ようこそ、お帰りくださいました」

と言う、超絶美形の青年たちが揃いの正装で待っていた、シェールドに帰ったのだった。

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