竜と王と剣と盾

ノベルバユーザー173744

ハニードラゴンは、見た目は可愛いけれど針を持ってます(鋭い突っ込みも)

「ハニードラゴンって何?」

 アルドリーの言葉に、フィアは自分の髪を示し、

「蜜色でしょ?で、本当は最初レッドドラゴンって言われてたんだけど、レッドドラゴンはね?繁殖期のみ特に気性が荒くなるの。普段はそんなに…でも、僕は年から年中暴れまわって裏組織ぶっ潰すから、ハニードラゴン。見た目は可愛いけど凶暴だからってつけてくれたエリー兄様には、蹴りをお見舞いしておいたよ」
「ハニードラゴン…」

 顔をひきつらせる周囲に、シエラは、

「だから、誰がそこまでやれって…」
「兄様」
「私は教えてない~!!」

 首を振る幼馴染みに、

「だって、戦い方に、戦略に、密偵の初歩から徹底的に叩き込んでくれたでしょ?それに、この馬鹿へーかへの対応の仕方!!」

 フィアは、アレクの両足をつかむとくるくると回し始める。
 そして、遠心力を駆使して、てやぁっと投げ飛ばした。
 吹っ飛んでいったアレクを見て、

「あぁ、行った行った!!へーか、戻ってくるな!!」

 その姿に、さめざめと泣くシエラと、誉めるルゥ。

「よくやった!!それでこそ私の弟!!」
「コラー!!ルゥ、フィアをあおらないの!!それに結婚してるんでしょ!!」
「え?何で?」

 首を傾げるフィア。

「僕、シエラ兄様と約束したもの。僕が大きくなったら、シエラ兄様の家に婿養子になるって、忘れたの?」
「えっ…」

 固まるシエラに、

「ひどーい。兄様!!僕、頑張ったんだよ!!7才で大学院に入って、12才で出て、それからだって仕事しつつレポートに時々講義まで出て、どれだけ資格取ったと思うの?兄様が、兄様に負けるような人間には娘はあげないっていうから~!!頑張ったんじゃない!!」

 プリプリと怒るフィアに、シエラは、

「い、いや…忘れてない…忘れてないよ!?でもね?フィア、考えてごらん?天下のあの、マルムスティーンの長男が、まだ正式に叙勲も受けてない私の娘の婿養子って…あり得ないでしょ!?」
「年が違うから?」
「いやいやいや…フィアは今年25で六槻も15になるけど…、身分が違うでしょ!!それにマルムスティーン侯爵家はどうなるの?」

 天下のと言うよりも、一族の総資産はシェールドの国庫を軽く越える大金持ちであり、その上外交の一族として、アシール大陸どころかアシエル中の情報を握っていると言われる家である。

「え?知らないの?シエラ兄様。僕、マルムスティーンの継承権放棄してるんだけど?それに、カルスのも」
「はぁ!?ちょ、ちょっと待って!!カルス…カルスって、どういうこと!?」
「あれ?セイラ姉様に聞いてないの?リュー父様が亡くなる直前に、エージャと遊び疲れて寝てて、目が覚めたら真っ白な、部屋に白い家具類、にポツンといて…窓には鉄格子、ドアには全部鍵もかけられてて、出して!!って叫んだら、フィン叔母上が入ってきて、『あなたは家の子です。カルス家の子供として、長子として生きなさい。命令です!!』って言われて…で、弟っていう子供と、妹っていう女の子が、叔母上に引っ張って来られて、『遊びなさい!!』って」
「はぁ!?」

 シエラは叫ぶ。

「あの人、何考えてんの!?信じらんない!!自分が家庭より仕事を優先して、勝手にアル兄様に離婚状突きつけといて、その時には子供を身ごもってたのに、父親であるアル兄様には黙って堕胎しようとして!!エディ父様が怒って、アヴィ兄様に頼み込んで、子供の堕胎を認めさせないことと、もし行ったら即刻財産没収に国外追放。そして、そんな母親に育てられるのは可哀想だとシルゥ兄様の実子として…」
「うん、そうなんだけど、あの家の息子…3才下のジークフリード・エルドヴァーン…フリードが、あんまり…出来が…普通?と言うか、とぼけた?ずれた?間が抜けてて?ウドの大木?」
「…ウドの大木って言葉、よく知ってるね?」

 シエラのずれた誉め言葉に、

「うん!!僕の専攻は『グランディアとシェールドの繋がりと関わり』そして、『カズール家とグランディアの風の鳥について』と『シェールド王家とカズール家とマルムスティーン家の存在意義』だよ。神話伝承総ざらい!!本ももう両手の指を越えるほど出してます!!」

 フィアは告げると、

「で、話は戻るけど、僕が抵抗すると暴力は振るわないけど、来なくなった。食事だけは三度三度くるけど、冷えてて美味しくなさそうで…それに単色の世界って怖いんだよ…いくら白でも、毎日毎日見てると参ってくる…。鉄格子を揺さぶって外して逃げようとしたり、食事を持ってくる人の横をすり抜けようとして、捕まって閉じ込められて…泣いて泣いて…食事も食べなくなって、ただ何時になったら死ねるんだろうって…思ってた。死んだら、シエラ兄様のところに、魂だけでも翔んで行けたらなぁって…」

 遠い目をするフィア。

「もう、耳元ではヒステリックに叫ぶ叔母上。見知らぬ弟妹っていう子供たち、強引に食事をとらされるけど全部吐き出して…ボーッとしてたら、コツコツと音がして、『誰かいるのか?』って」
「コツコツって、どういうこと?」
「アル伯父上の杖の音。伯父上目が悪いんだよ。昔から」

 フィアの言葉に、

「えっ!?」
「うん、僕も20の時に、白騎士団長として着任する前に挨拶と、正式にカルス家の継承権の放棄と財産放棄の手続きをしたときに聞いたの。生まれつき片目の視力が悪かったんだって、でも、カルスの長子…一人息子だったから、家族にも隠してたって。それに元々あの性格でしょう?突っ走る叔母上をボーッと見てるというか…ハッキリ言って、仕事以外はどんくさいし、不器用で口下手な伯父上だから…それに目も完全に失明して、片方の目だけで、後宮騎士団にいたんだけど…」

 フィアはため息をつく。

「悪気はなかったんだよって、伯父上庇うんだけど、叔母上が伯父上のペースが気に入らないって喧嘩を吹っ掛けて、おろおろしてる伯父上殴り付けたんだって。そうしたら、柱に頭打ち付けて…伯父上も伯父上で、すぐに医務室に行くなりすればよかったのに、仕事に戻ったんだって。…で、さほど日をおかずに、ものがぶれたり、霞んだりするようになって…不審な動きに、アヴィお祖父様が、無理に医師に見せたら…失明するって」
「…!?」

 絶句する。

「でも、カルスの家の当主として、カズール家の分家として恥じぬ働きをするって、完全に失明するまでの間に、あらゆるものの場所、物の位置を覚えて、周囲に解らないように…そう振る舞うように動くようにしたんだって。でも、ちょっとでも不審に思われたらって勘の鋭いルード伯父様とかお祖父様とかには、余り会わないようにして…後宮に部屋を貰って、生活するようになったら、またキャンキャンと…浮気だとか…」
「あり得る…あの、フィン姉様だったら有りうる!!」
「ありえたの。で、言えない伯父上と、ボーガンの矢のようにグサグサ悪態をつく叔母上にもう周囲は呆れ果てて、一応修復をって…したんだけど、駄目でねぇ…でも、僕ができてたと。まぁ、話は戻して、僕が何時死ぬかなぁ~…って思ってたら、ルード伯父様が助けに来てくれて、父様とヴィク伯父様とお祖父様が3人で、僕の親権は正式にマルムスティーン家にある。これはれっきとした誘拐だ、監禁しているってことになって、訴えられたくなければ、もう二度と僕と会うなって」
「フィンねーえーさーまー!!女性でなければ!!」

 怒り狂うシエラに、

「で、半年ほど静養して、騎士の館に入ってで、ファーと会ったんだ。2才下でいい子なんだよ?」
「いい子…女の子?」
「うん、ウェイト兄様の奥さんだよ?ジェディンスダード公爵の長子。アルファーナ・リリー公女。ウェイト兄様もうメロメロ、デレデレ。結婚して7年なのに、いまだに『ファーを着せ替えするんだ!!衣装を揃えて、装飾デザインしたいんだ!!じゃないと仕事したくない!!』って」

 その言葉に、

「ウェイト…相変わらずだね…」
「ルー兄様もこの間結婚したよ?で、リオン兄様ももう8年。エリー兄様はウィン姉様と結婚してて…こっちは4年?」
「は?皆結婚してるの?カイは?」

 首を振る。

「仕事に忙しい上に、エリー兄様がこしらえたギャンブルの借金の保証人になっちゃって…日々労働…」
「あぁ、可哀想すぎる!!」

 嘆くシエラに、

「ねぇ、兄様。さっきからカイ兄様のこと聞いてくるけど、どうして?」

 フィアの問いかけに、シエラは、

「あれ?知らなかったっけ?カイはリュー兄様の息子だよ?でも、フェリスタ公爵家の正式な後継者だから、カズールの名前を名乗れないけど、戸籍見てないの?」
「えっ!!知らない…そう言えばランスロット・レウェリン・ヴィクトール・エルドヴァーンって…」
「カイの本名。まぁ色々あってね…深くは聞かないで。それに、何でわからないの?顔そっくりだよ?目鼻立ちも」

 フィアは、

「カイ兄様、何時も長い髪で顔隠してるから。一度聞いたら、目が嫌いなんだって」
「は?あのアイスブルーは、フェリスタの色なのに…全く…戻ったら、エリーを絞めて、カイの借金を全部エリーにつけてやる!!」
「無理だよ?だって、もう三千ルゥド以上の借金をグラン伯父様が肩代わりしてて、セイン伯父様も胃に穴が開いて入院に、叔母上も元々虚弱体質なのに寝込んだままで起き上がれなくて、もうすぐ3人目の孫が生まれるっていうのに、二人枕を並べて面会謝絶だもん」

 グランとは、カズール家の側近として、家令として働くだけではなく、ロイド公爵としての責務を兼任しているグランドール卿。
 シエラの幼馴染みのルーことアリシア・ルイーゼマリア・ランドルフ…ちなみに、男…の父であり、セイン…セインティアは弟であり、シエラの養育係だった。
 セインの一人息子のエリオットが、大人しくおっとりとした両親の間に生まれてからは、日々胃痛と頭痛に悩まされていると言う。

「あぁ、行くしかないか…エリーを絞めに」

 呟いたシエラは、近づいてきていたアレクを足元に転がっていたほうきで面打ちしたのだった。

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