竜と王と剣と盾

ノベルバユーザー173744

綾ちゃんは言霊を大事にしてる女の子です(大事ですよ?本当に)

 アルドリーは、巨大な翼つきの犬にしか見えない漆黒の獣の頭を撫でながら、

「この子が俺の大事な友達のレイ・ロ・ウ・アルドリア。女の子だよ?この子はとってもお利口で良い子なんだけど…」

 急に唸り声をあげ、後ろ足で立ち上がると、蹴りかかろうとする。
ちなみにその相手は…。

「アレク一応父さん…やめてくれない!?うちの子に飛びかからないでよ!!この子は密猟者に襲われて俺のところに逃げてきた子なんだよ!!」
「希少種…エンナ…くれ!!」
「やるか~!!俺の大事な友達なんだから!!」

 アレクの手を振り払うと、周囲に、

「申し訳ないけど、基本的にレイは臆病で、神経質で、大人の男嫌いなの」
「でも…」

 甥のアルドリーだけではなく、美少女の顔立ちだがれっきとした男のフィアと、ルゥの父親を示す伯父の清秀せいしゅうに、

「シルゥじいとフィアちゃんは、調教師の資格を持ってるんだよ。だから、レイの様子を確認したり、これは駄目だと思ったら、即離れる。落ち着いていたら、訓練をするんだよ。パパファンもだよね?」
「まぁ…父様…親父どのが、基本的にと言うか徹底的に叩き込んだから…私も、何とか近づけるけれど、いつもこいつが…」

 懲りずに近づこうとするアレクを、今度こそ本気で投げ飛ばしたシュティーンは、

「いい加減にしろ!!アレク!!全く。それでも父親か!!」
「どうせ、子供たちにも嫌われてるし…良いんだもん♪」
「何が良いんだもん♪だ!!お前が、親としての自覚がないから駄目なんだ!!」

 説教を始めるシュティーンを横目に、

「だから、なるべく…大人の男は…遠慮して?女の子なら大丈夫だよ」
「むーちゃんは?」

 六槻むつきは、自分を示す。

「大丈夫…と言うより、レイ…六槻みたいに可愛い子大好きだよね?」

 そうだと言いたげに、漆黒の尻尾を振る。

「じゃぁ、レイ?この子は六槻。カズールのお姫様。仲良くしてね?そして、この子…俺の妹のさーや。で、あやちゃんは…セイラさんの妹。六槻とさーやと綾ちゃん、仲良くしてね?」

 うんうんと何度も大きく頷いた漆黒の獣は、ご挨拶と言わんばかりにすりすりと頬をさすり、ベロ~ンとなめる。

「ふわぁ!!レイちゃん可愛い!!むーちゃんも大好き!!」
「さーも!!ぎゅっする!!」
「…私が、触っても平気か?」

 だぼだぼとした大きな袖から出した手を、レイに見せ…、

「これは君を殴るための手ではない。親指以外動かぬのだ。だから…触っても平気か?それと、姪の日向夏ひゅうか月歩つきほも仲良くしてほしい」

 その言葉を理解できるのか、レイはすりすりと頬をすりよせる。

「日向夏。月歩。いいこいいこして、仲良くしてねと言うがいい」

 姪たちに告げ、綾は頬を寄せる。
 綾の様子を見た4才と2才の二人は、安心したように近づき、撫でる。

「いいこいいこ!!ひゅーかだよ。レイちゃん。仲良くしてね!!つきちゃんは、いいこいいこしようね?」
「う、うん。れーちゃんこにちは、つきなの。いいこするね?」

 撫でられ、レイはゆっくりと、小さい子供たちにすりすりとする。
 巨大な体躯に怯えられたら、レイ自身も悲しいからである。
 その様子に、周囲は特に幼児二人の両親は目を見開く。
 上の日向夏は、物怖じしないしっかりとした…少々お転婆な子供だが、月歩は、人見知りが激しく、なにかが起こると怯え泣きじゃくる。
 しかし、今は…。
 ひょいっと、レイに背中にのせてもらった六槻と日向夏、月歩はゆっくりと歩き出したのにわぁっと歓声をあげる。

「いいなぁ…さーも」

 羨ましげな清夜さやに近づく純白のナムグ。
 首をかしげ、そしてひょいっと背に乗せ、綾も乗せると、レイの後を追うように歩き出す。

「わぁ!!ありがとう!!えっと、エーナちゃんでいい?」

 清夜は問いかけると、いいよ~♪と言いたげに、

 きゅるん♪

と鳴く。

「…一度馬に乗ったけれど、それよりも乗り心地が良いし、それに、エーナ…?の毛並みの艶やかさは素敵だ」

 綾がエーナの背中を撫でながら呟くと、当然♪と、再び、

 きゅるるん♪

と鳴く。

「賢いのだな…エーナは。私は綾だ。友達になってくれないか?」

 綾の言葉に、主のシルゥは微笑み告げる。

「綾ちゃんだっけ?エーナは、とっても綾ちゃんのことを大好きだって言っているよ?それにお友達にもうなっているんだから、これからもよろしくね、だって」
「…ありがとう。エーナ。それにシルゥ伯父も、私は大好きだ!!あ、も、すみません。私は、言葉が…き、きつい、と…ごめんなさい。許してください」

 頭を下げつつたどたどしく謝罪するその言葉に、シルゥは、

「気にしていないよ?綾ちゃん?この国は言霊ことだまの国でしょう?嘘偽りはけがれになる。それに、ちゃんとグランディア…清野さやのの言葉じゃなくシェールディア話しているじゃない。上手だよ?伯父さんビックリしちゃった!!」
「…ほ、本当に…?」
「うん。それにね?エーナに言ったありがとうは、とっても綺麗な発音で、やっぱり綾ちゃんは言霊を大事にしてるんだって分かったんだよ。だからね?お話ししてくれて、伯父さんの方こそありがとう。綾ちゃんの言葉は本当に、綺麗な言葉だね。素敵な女の子だね」

 シルゥの言葉に、綾はポロポロと涙を流す。

「え、な、泣いちゃった!!伯父さん…悪いこと…」
「ううん。伯父上のことも、私は大好きだ!!だから、ありがとう。伯父上もエーナも大好きだ!!」

 綾は、突然シルゥの腕のなかに飛び込む。

「大好きだ!!伯父上。仲良くしてほしい」

 とっさのことで、よろけそうになったものの、華奢とはいえ騎士、受け止め微笑む。

「伯父さんも大好きだよ。仲良くしてね?」

 その様子に兄の隼人はやとは、眼鏡をはずし懐の手巾ハンカチで涙をぬぐったのだった。

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