竜と王と剣と盾

ノベルバユーザー173744

アレクサンダーさんのずれすぎた愛情は、伝わらないようです(やっぱり…)。

「う~ん…うぅぅ…頭痛い…」

 ゼイゼイと荒い息を吐き、呻くアルドリーに、医師免許を持つフィアとヴィクトローレが、診察し、薬を用意するが、

「い、いらない…薬飲めない…から…」

 薄く目を開け、首を振る。

「は…」
「ハイハイ!!幸矢こうや。通訳は僕がするから、寝てて」

 双子の弟アーサーは、曾祖父のヴィクターに託すと、

「幸矢、薬吐くの。異物認識するから。で、薬どころか食べ物とか吐ききっても胃液吐いて、余計に体力消耗するから、やめてあげて」
「でも、それじゃぁ…って何してるの!?ヴィクターお祖父様!?」

 フィアは絶句する。
 透明な筒に液体が満たされ、その先には針が着いている!!

「注射。黙ってみてなさい。説明しながらやって見せるから」

 ヴィクターは、二の腕を圧迫させ、肘の裏に当たる部分を探る。

「血管があるだろう?ここに、針を差す。そして…」

 水分を含んだ脱脂綿で針を差すと、二の腕の紐を解きつつ、もう一方の手で筒の反対側を押して、満たされていた液体を注ぐ…。

「液体は、薬。でも飲むものではない。体に合った薬を溶かしてある。もしくは栄養素の含まれたものなどを直接体内に入れることができる…よし。終わり。幸矢。押さえておきなさい。血が止まるまではアルコールに浸した脱脂綿で」
「…はい…おお祖父様…」

 アルドリーは呟きつつ、すぐにウトウトと眠り始めたため、アーサーが押さえる。

「あ、あれは…叔父上!!」
「ん?異国の治療方法だよ。後で、点滴もしておくから、その前に、色々と知識を渡しておこう」

 ヴィクターは、手を差し出すとコロコロとした宝玉が幾つも現れる。

「こ、これは…?」

 フィアは目を丸くするが、ヴィクトローレは、あっさりと手を伸ばす。

「知識の宝玉だよ。叔父上の特技と言うか、触れれば、叔父上の得た情報を共有できるように叔父上が作った複合術の一つ。複雑すぎて、私にも出来ないくらい繊細で、細かい術なんだよ」
「そうなんですか…」

 じっと宝玉を見つめ、視線をさ迷わせると、フィアは手を差し出し、丸い玉を生み出した。

「…フィ、フィア!?」
「えっと、中身のないまがい物ですが、外側は出来ました」
「ちょっと見せて」

 ヴィクターは、兄の孫の宝玉を手に取ると、

「あぁ、フィア…この部分の土の力が足りない。もう少し風を減らして…いや、それよりも思いきって増やして…容量を増やすのもいいかな。へぇ…ヴィクトローレにも出来ないのに、見ただけで構成を読み取るとは、かなりの能力者だね…すいでも、10日はかかったのに…」
「そうなんですか?と言うか、僕は極端に風の力が強すぎて…」
「まぁ、そうだろうね。風の精霊の加護があるから」

 ヴィクターは、フィアの左目を示す。

「そのみどりは、マルムスティーンの色だけど、そのなかに淡いけれど青が入ってる。空の青。風の象徴。ふーん…あぁ、精霊じゃない…お前は、祝福を得てるんだね…」
「祝福を得てる?」
「これ以上は言えない。これはお前のことであって、私が覗き込むのは良くないからね。はいはい、すみませんでした」

 手を下ろすと、

「じゃぁ、戻ってから、情報を入れていく方法も教えるから」
「でも、お祖父様?そう簡単に自分の術を人に教えていいのですか?もし悪用されたりとか…」

 フィアの問いに、ヴィクトローレは、

「悪用する人間かどうかは解るものだよ。それに努力家、勤勉で、知識の宝庫のシルゥの息子なら、情報をうまく扱えるだろうね」
「見て、選んでいるのですね?」
「と言うか、六槻むつきが好きか嫌いかだね」

 余り丈夫でない六槻は一応安静をとり、アルドリーと並ばせて寝かせている。

「うちでは皆、六槻か幸矢…アルドリーの直感、無意識の行動で判断する。もしくはエイだね」
「エイ?えっと、清影せいえいですよね?どうしてです?」

 ヴィクトローレは、従姉の夫の愛称に首をかしげる。

「ん?あぁ、エイはあれでいて好悪の感情がはっきりしている。年も年なのに、大人げない」
「え?シエラじゃぁ…」
「ん?あの子ははっきりしすぎて、逆に選択しづらいので却下!!全く…私の子供は癇癪もちばかりで困るよ」

と愚痴り、

「その点、エイは最初は無表情だけれど、次第に笑顔になると嵐が起きる。真剣になると熱を帯びる…」
「あ、嵐って…」
「あれ。本当の気を抜いて微笑むエイは安全だけど、作り物めいた笑顔になったエイがきれて、ドッカン!!の跡だよ?」

 示されたのは鯉の泳ぐ池…。

「元々、離れがあったんだよ。私の隠居。それを、外のものがやって来て、一切合財盗もうとしてね…馬車に乗せた時に駆けつけたエイが、中でまだ何かを探しているものの姿にプッツン…で、雷が落ちて、離れが一気に燃えてねぇ…中にいた者は大火傷」
「げっ!?」
「で、そのあと、雨が降って…池になりました。だよ。まぁ、私に比べたら、まだまだだね」

 アハハ~♪

と笑う叔父に、ヴィクトローレは顔をひきつらせながら、

「叔父上は貴重な旧都シェールディアを全部陥没…で、今は湖ですもんね…一応、シェールド一の術師と呼ばれている私だって、そこまでやったことありませんよ!?どうして貴重な遺跡群を!!」
「だから、私は暴発。と言うか、バランスが悪いんだよ。光の術力以外は全て平均値ギリギリ。ほぼ全て平均的に高いヴィクトローレよりも、その分崩れると、一気に暴走するんだよ。だから、砂漠のファルト領に雪が降ったり、小さいとはいえ幾つも降り注いだ隕石で王宮ニーリィードの殆どの屋根を突き破って、陥没に、その他もろもろ…。あ、大丈夫。私を苛立たせないようにしてもらえれば、害は及ばないよ…って、お前は、コソコソと何をやってる!!」

 ヴィクターの鋭い声と共に、ドカーンっとどこからか一本の大木が宙を舞い、地面に突き刺さる。
 丁度その場にいた男…アレクサンダーは寸でで避けている。

「ひぃぃ…!?お、叔父上!?これ、これは!?」
「ん?木」

 甥に言い放つ言葉も、きれている。

「何をしに来た!!この馬鹿者が!!帰ったのではなかったのか!!エイとシエラにのされても足りないと言うのなら…」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って…下さい!!」

 アレクサンダーは、ひきつった顔をして必死に手を振る。

「あの!!い、一応…ア、アルドリーの薬を、持ってきていて…ね、熱を出したって聞いたので、持ってきたんです!!」
「薬は、飲めないけど?」

 ヴィクターは苦々しげに、アルドリーの父であり、もう一人の孫娘の夫を睨み付ける。

「あの!!これを!!」

 差し出したのは、涙型の宝玉…。

「これ、何?」

 近づき、触ろうとするアーサーに、

「危ない!!」

とアレクサンダーは叫び、避けようとするが、間に合わず、

「い、いたぁぁぁ!?痛い、痛い!!」

 触れた右手の人差し指を握りしめ、悲鳴をあげる。

「な、なんてものを、持ってきたの!!」

 ヴィクトローレは、アーサーに駆け寄ると、癒しの術をかける。

「…う、うぅぅ…い、痛かった!!何なの!?それ、薬どころか、幸矢を傷つけるものじゃない!!」

 涙目で父親に食って掛かるアーサー。

「違う。これは本当にアルドリーの薬なんだ」
「はぁ!?どこが!!どうしたら!?」
「あの…近づいても構いませんか?」

 真面目な表情のアレクサンダーに、ヴィクターは警戒を解き、

「それが、薬なら…そうなんだろう。やってみなさい」

と、スペースを開ける。
 近づいたアレクサンダーは、アルドリーの手を取り、その手に涙型の薄青い石を握らせる。
 そして、それを両手で包むと、呟き始める。

「『我、王の中の王アルドリーの血を引く末裔アレクサンダー・レオンハルト・アンドリュー・サー・シェールド。我が名は偽らざる真の名。そして、我の血を引くアルドリー・ランスロット・アンドリュー・サー・シェールドの癒しとして、竜の涙、捧げ請い願う』」

 次第に…アレクサンダーの手の中から光が溢れ、周囲のものの目を射る!!
 
「うわっ!」

 目を庇うように手をかざし、しばらくすると光は収束し、フィアとアーサーは信じられないものを目にする。

「一応陛下が倒れてる!!」
「え、えぇぇ!?あの陛下が!!何なの!?」
「気絶してるだけだよ。ほら、起きて、アレクサンダー」

 ヴィクトローレに頭を叩かれ、目を開けたアレクサンダーは、

「義兄上!!成功した!?平気!?アルドリーは生きてる!?」
「…うるさいなぁ…一応父さん。俺、病人なの。静かにしてよ」
「生きてる!!良かった!!」

 ガバッと抱き締められ、呻くアルドリー。

「く、苦しい…やめて…死ぬ!!」
「良かった!!成功した!!73回目?にして、初の成功!!」
「嘘をつかない!!それに、100を足す!!全く…一度は、暴発して大惨事!!ヴァーソロミュー様はブチキレて大暴れ!!…って、何やってるの!!アルドリー気絶してるじゃないか!!」

 ヴィクトローレの声に、脱走したアレクサンダーを探していた面々が姿を現し、半殺しの目に遭ったのは…当然のことだった…。

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