竜と王と剣と盾

ノベルバユーザー173744

王太子殿下の補佐をする、兄ちゃんズです。

アリシア・ルイーゼマリアと聞くと、普通、女性であるが、その下にランドルフ・サーと続くと、マルムスティーンの直系の女性長子でなければ、男性と解る。

アリシア・ルイーゼマリア・ランドルフ・サー……めんどいのでルーである。
代々カズール家の家令の一族であり、カズール家当主を守る騎士の一族ロイド家の現当主グランドールの次男である。
ちなみに、ロイド家は元々は王家の分家筋で、王室公爵位を持っているのだが、それでも、カズール家の家令をしていたり……ルーの母親は、現国王アレクサンダー・レオンハルトの亡き父、先代国王アヴェラート・グジェリエーンの双子の姉である。
当時、王宮を破壊するのは、先代カズール伯爵リュシオン・エルドヴァーンか、その父で、現カズール伯爵のルーン・エイジャクスの祖父であるヴィクターか、アリシア・ルイーゼマリアかと言われるほどの男勝りの怪力王女として周囲に知れ渡っていたらしく、他の姉たちは、次々嫁にいくのだが、弟が結婚し姪が生まれても結婚しなかったため、当時、破壊魔の当主とアリシアを監視するためと、国王アヴェラートの幼馴染みとして幼い頃から王宮に出仕していたグランドールに父が泣きつき、結婚した。
ガッチリとした筋肉隆々のグランドールは、武器を持って入ることのできない場所でも、主や幼馴染みを守れるように、剣術だけでなく拳術を鍛えた。
いかついのだが、性格的に温和であったのだが、仕事だけでなく、嫁に振り回されるようになった。
仕事に出ていれば、主のリューが、気性の激しさを全面に出し、喧嘩を売る。
まぁ売る相手は、リューの恐ろしさを知らないだけである。
で、帰れば帰ると、年の離れたおっとりとした弟が、弱い胃腸を押さえてうめいている。

「ど、どうしたんだ!?セイン」

いかつい父に似たグランとは逆に、清楚な母に似たセインは頭は良いのだが体力がそれほどなく、おっとりとしている。

「兄上!!」
「何かあったのか!?」
「姉上が破壊活動を!!父上がお怒りです」

あぁぁ……

頭を抱えつつ、父のいるはずの場所に向かった……。

翌年、息子を生んだのだが、マーマデューク・ブルーノと名付けられた長男は顔立ちや性格は父親に似ていた。
その後、17年あまり暴れまわっていたアリシアが突然倒れ、医者に見てもらうと、

「二つに一つだ。身ごもっている子供を諦めて静養する……しかし、数年持つか持たないかだ。もしくは、子供を諦めず、出産して、静養する……だが、どちらもさほど長生きできる保証はない」

その言葉に困惑したグランにマディだったが、アリシアが、

「子供を諦めません!!一緒に生きます!!」

と宣言したのだが、言った当人が静養が嫌だと暴れ、早産してそのまま帰らぬ人となった。
国王アヴェラートは、

「姉上らしいよ……全く」

とあきれたのだった。
で、父に、母の名前をつけられたのだった。

ウェイトと同じ年の青年は、ウェイトは細身の美少女顔だが、こちらは、絶世の美女……と言うほどでもないが、母の亡きアリシア・ルイーゼマリアに瓜二つの美男である。
背丈は幼馴染みのウェイトと変わらず、背の高い他の従兄弟達や幼馴染みよりも低く、フィアよりも高い。

ちなみにフィアは全く気にしないが、159センチである。

一度、ルーはフィアに、

「なぁ、フィア。お前、背が延びないの気にしないのか?」

と聞くと、キョロキョロと周囲を見回し、示した。

「リオン兄様やカイ兄様、シュティーン兄様、ルード伯父様やお祖父様みたいに、体と動きのバランスが良ければ、長身でも良いけど、あのアレク叔父さんやエリー兄様みたいな筋肉か贅肉かわからないものに動きが邪魔されるのは絶対に嫌!!」

言いきったフィアの一言に、顔をひきつらせたことは否めない。
しかし、遠縁の縁戚である……母の双子の弟のアヴェラートの第二王女であるアールティーネ・シェイア王女の義理ではあるが息子に当たる少年に、そこまで言われると……かなり痛い。

その上、

「大丈夫だよ!!ルー兄様がとてつもなく根性悪くて、とてつもなく黒くて、とてつもなく破壊活動実践中のことも、姫にはお伝えしてないからね!!」
「げぇぇ!?」

にっこり笑う幼馴染みに、

「ちなみに、どこで調べた?」
「ん?……内緒!!もし、イタズラして、失敗したら、公女とグラン伯父上に伝えるからね!!」
「や、やめてくれ~!!」

父も怖いが、去年ようやく結婚した愛妻の家も同じく王室公爵家の末裔で、当主として、現在びしばしと現在の国王の一番上の姉であるアンネテア女王陛下……これは尊号として与えられたものであり、王位を継いだ訳ではない……に、一から徹底的にマナーを叩き込まれている。
その上、そんなことになったら目も当てられない。

「頼むから!!」
「あ、マディ兄様だよ!!」

17才年の離れた兄は、忙しい父の代わりに育ててもらった第二の父なのだが……。

「ルー!!お前又なにやらかした!!」
「えっ!?な、何って。何したっけ?フィア」
「んーと……騎士団でアホやって……アホやって……アホやって……バカやった!!」

6才下の幼馴染みのあまりにも酷い言いぐさに、

「おい、こら!!俺は!!一応、倫理的なものは……現在問題ない!!そして、特攻はまだ今月6回しかしてないし、この顔に言い寄るバカに徹底的に、根性を……」
「アリシア・ルイーゼマリア・ランドルフ……」

低い低い声に、

「あれ?兄上俺の名前よく覚えてますね?アハハ……」
「アハハ、じゃねぇ!!ウィリアムが、怒り狂ってたぞ!!あいつの作戦の精密さと緻密さは騎士団の歴代団長でも優秀だって言うのに、お前が出てきたら、一発で崩壊!!ウィリアムが、嫁のアルファーナ公女と長期休暇を申請していたのに、お前は何度ぶち壊せば気がすむんだ!!エージャ……伯爵も、あのウィリアムの激怒に泣いたんだぞ!!」
「ウェイトの激怒って……」
「あれは怖いよね……アハハ!!ルー兄様。頑張って!!応援するよ!!」

フィアに逃げられ、とっさに逃げようとしたルーは、兄に抱え込まれ、

「ウィリアムが、待ってるぞ。来い!!」
「わぁぁ!?いーやーだー!!」

連れていかれた先で、ウィリアムの地獄の女性としてのマナーレッスンは、日を改めるまで続いたのだった。

「あら。突撃攻撃がしたいのでしたら、それよりも潜入を学ばれてはいかがですの?その方が怪我も少ないでしょうし、私のように……緻密な計画をこんこんと言い聞かせて、不器用なリオンでも大丈夫、不幸体質のカイでも平気、エリオットは除外、フィアは勝手に行ってこいで潜入してどれだけ功績をあげたかご存じでしょう?」

夜の間のレッスンでも生き生きとした、ドレス姿の美少女が扇を広げ、目を細める。

「私の作戦に協力できないのでしたら……奥方にこれ以上迷惑はかけられないでしょうし、死んだことにして、潜入部隊に入ってこられても結構よ?実は昨日になるけれど、ルード伯父様が、内々にとお伝えくださったのよ」
「えーと、ウェイト……似合いすぎてて逆に不気味だから、ポーズ取るな」
「うるさいですわよ!!」

パーン!!

扇が翻り、ルーの脳天を直撃した。
呻くルーに、元のポーズに戻ったウェイトは、

「この姿の時はローズと呼びなさい!!アリシア!!」
「呼ぶか、ぼけ!!」
「言葉遣いがなっていないわ!!」

ドガガ!!

と今度は、拳が舞う。
しかしその拳には、手袋の上に宝石ではなく、金メッキの指輪が4つそれとなくつけられ、それが女装の時に非常事態が起これば、即席武器になるようになっており、

「あだだだ!!いってぇ!?」
「お仕置きよ!!昔、セイラが言っていたけど、何か『月に代わってお仕置きよ!!』って言う台詞を言って、戦う女の子のお話があったらしいのよね~」
「お前いくつだ?」
「うるさいですわよ!!忘れてしまうとは、年ですの!!って、逃げたわね!?」
「当たり前だ!!逃げるわ!!この女装変態男め!!って、ででで!!」

捕まったのは、ひょろひょろに背が高い190㎝越えの亜麻色の髪の青年と、ワンレングスの長い金髪で顔を完全に覆った青年。

長身の青年は、リオン……現カズール伯爵ルーンの兄である。
歳はルーとウェイトよりも二つ下。
金髪はカイ・レェウェリン。
髪で顔を隠しているのは自分の瞳が嫌いで、なるべく隠しているのと、人見知りするのである。
それなのに、何故か女性に追い回されたり、お菓子を押し付けられたり、ともすると集まって、ハンカチや騎士団の身分証でもあるバッジを取られたり、一応命令で、後ろ髪を結んでいる白リボンまで取り上げられ……その様子に、現在騎士団のトップはルーンだが、その補佐の代理をしている後宮騎士団長ヴァーソロミューがカイを後宮騎士団メンバー第一号として、後宮に住まうことになった。
現在いるのが、国王アレクサンダーだが、カイはアレクの騎士ではなく、もうすぐ来る王太子アルドリーの側近として警備のはずなのだが……。

「あれ?ルー先輩。どうしました?眠いのでしたら、私の部屋にいきますか?」
「こらこら!!カイ。カイは後宮に入れるように、その特殊なピアスで認識されて扉が開くようになっているんだから、無理だよ」
「あー、そういえばそうだった気がする。ありがとう、リオン。私はちょっと抜けてるみたいだ」

こんな緩いノリの親友同士である。

「リオンどけ!!変態とやれるか~!!」
「と言うか、先ほど、国王陛下とマガタ公爵、そしてフィアがグランディアに出発しました。フィアは元々生まれてより王太子殿下の側近ですが、カイは出迎えの準備、そして、エージャより、アーサー殿下、下の殿下の側近を緊急に決めてほしいとのことでした」
「えっと、じゃぁ、私は……」
「ぼけないぼけない……本当にカイは、普段と仕事、試合モードじゃぁ……性格は変わらないのに動きが……」

リオンは緩い親友を見ると、カイはえへっと首をかしげ笑う。

「師匠が、めちゃくちゃ強かったから……それに、メルシュも危険なんだもん……あー?逃げちゃダメですよ~!!先輩」
「行かせてくれ!!」
「じゃぁ、貴方はアーサー殿下よ!!良いわね!!私は王太子殿下に着くから!!」
「勝手にしてくれ!!女装だけは嫁に見せたくないんだ!!」



アルドリーたちの側近になる人々はかなり変人が多かったりする。

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