コマンド見えるようになったので、ハーレム作ります!

片山樹

2

 俺の目の前にいる男は懐かしそうに部屋を見渡し、椅子に腰をかけた。
 息切れが激しく、全身から血が出ている。

「あの……どういうことなんですか? 過去の俺って」

「悪いが、お前に血漿を打ち込む。
 それで理解してくれ。俺には時間がないからな」


 もう一人の俺に腕を掴まれ、クイッと引っ張られた。
気づかない間に手の甲に傷をつけられた。
 血がポタポタと流れ始めるが全く痛くない。
かまいたちのようだ。
 もう一人の俺の血が俺の傷口に入り込む。

 刹那――俺の意識は飛んだ。


 ✢✢✢

 ――太古の昔。今から一万年程昔。
 世界は混沌に満ちていた。
空は黒い雲が覆い尽くし、太陽の姿は見えず、至る所で爆発と叫び声が断末魔の様に聞こえていた。
 人族と魔族は怯え、魔物はそんな人族を食らい、魔族を惨殺して楽しんでいた。
 その中には愛する人を守る為に戦う者。
死なないように戦う者。魔物を神と崇める者などが居た。
 この世の終わり。その言葉がふさわしいと思う程に世界は荒れていたのだ。
 辺り一面は建物が半壊され、瓦礫の山になっている所が多かった。

【※ 魔族とは――一般的に知能を持つ魔物。人間と共存している場合に使うこともある。
 魔物――知能を持たない魔物。人間と共存することができない場合に使うこともある。】

 そんな中、とある黒髪の少年はある一人の少女を抱え、血だらけになりながらも変わってしまった世界を歩いていた。
 血だらけということもあり、意識が朦朧とするがそんなことをお構いなしに少年は足を動かす。
 ゴツゴツとした道は歩きにくく、何度も靴が瓦礫に当たった。その度に体力を使い、息切れも激しくなる。
 だが少年の身体は徐々に慣れてきていた。

「ん? どうした?」
 髪の毛を撫でられた少年は少女に声をかける。
サラサラとしたシルバーの長髪で毛先が一部分だけくるりと立っていている。
 一度も日焼けをしたことがないほどに肌は白く、美しい顔立ちをした少女だ。

「も、もう……お、おろして! 私はもう使えない。
 私を置いて、逃げて!」

 少女は怒鳴り散らすかのごとく懇願する。
生きることを諦めた。そんな声だった。

 しかし少年は黙って、少女を抱え、歩き続けた。
魔力は底を尽き、限界の限界に来ているが、少女との約束を果たす為に少年は終極の塔終わりの始まりを目指した。

【 終極の塔《終わりの始まり》――大昔、三大魔法使いの一人であり、
 『銀炎の魔女』と恐れられていた者が造った塔。
 ここで『ギルルド族』の時空を越える力を使えば、過去や未来に行き来ができるとされている。
 ただし、信憑性はかなり薄い。 】

【 ギルルド族――エルフに近い容姿をしているが特に関係は無い。大昔、人間と共存し、世界を作り変えたとされている。 】

 それから何時間も歩き、塔に辿り着いた。
塔は雲を突き抜け、更に続いているのが見える。
 どれだけ高いのだろう。
 中に入る前に白色の大きな門があった。
外壁が崩れかけていたので急いで上まで行かなければならないと思いながら、門を開けようとする。
 しかし全く開かない。
――少し、力を使うしかないか。
 ググッと力を入れると、門が少しずつ開いていく。
片手で動かすのは少し辛かった。
 中に入ると、そこにあったのは螺旋階段だ。
この螺旋階段を駆け上った先にあるのが、終極の塔の名物――悠久の鐘である。
 ギルルド族がその鐘を七回鳴らしたことにより太古の昔世界は救われたと言われている。

 それからどれだけ上り続けたことだろう。
 少年の身体は限界に近かった。
階段を上るに連れ、空気が薄くなっていくのを感じていた。
 だが、その後も上り続けた。
休むことなく。一歩一歩迷わずに。

 世界を救うために。彼女を救うために。

 少年は終極の塔を上りきった。

 ――そこには先客がいた。

 ピンク色の髪をしたあどけない幼さを残す少女。

「お兄ちゃん、遅かったね」
 彼女はポツリとつまらなさそうに言った。

「あぁ……遅くなった。ごめんな、ユズハ」
 少年は少し警戒しながら、彼女に近寄る。

 が。
少女は少年に手を向けていた。

 その手には魔力が込められている。

「私に近づいたら、不幸になるからこっちに来ないで!」
 彼女は少年に怒鳴った。

「と、止まってよ! おにぃーちゃん!」
 ユズハが怒鳴るが少年は動き続けた。

 彼女の頭にポンと手を置く。
 そして撫でる。
ユズハは少年の胸に抱きつき、泣いた。

「お兄ちゃん……わたしを殺して」

 それは覚悟していたことだった

「本当にいいのか? ユズハ……」

 少年は問う。彼女に。

「うん。もういいの。お兄ちゃんの妹だったことが幸せだから。お兄ちゃんの隣にいれたことが嬉しかった」

 そして少年は涙を流しながら、ユズハの首に手をかける。

 こうして、世界は平和になった。


 ✢✢✢

 グルグルとミキサーで俺の記憶をかき混ぜる様に色んな記憶が思い浮かぶ。中には俺の知らない記憶もあるし、俺も知っている記憶もある。
 そんなものがグルグルとグルグルと走馬灯の様に思い出され、ごちゃ混ぜにかきまわされた。
 正直、吐き気が酷いし、クラクラする。

 でもはっきりと鮮明に残った記憶があった。

それは――俺に似ている少年がユズハと名乗る少女を殺した記憶だった。

 正直な話。
さっきの少年が俺でも無いし、柚葉でも無い。
 だが俺は無性にイライラしていた。
 俺のことでは無いのに。
イライラは途中から吐き気に変わる。
 それに首を絞めた時の彼女の表情が今にもまた浮かび上がってくる。


「未来の俺。教えろ。お前は何しに来た?」

 するともう一人の俺は表情を曇らせながら言った。

「察してくれなかったか……。どうやらこの世界の俺は一段と馬鹿らしいな。なら、仕方ねぇー。
 教えてやるよ」


「ユズハを殺せ」

「どうしてだ?」

「あいつはこの世界に生まれてはいけない存在だからだ」

「なんだよ……それ」

「元の世界にユズハは居たか?」

「いなかった……で、でも」

「でもなんだ?」

「あいつは俺の妹だ! 短い付き合いだけど、俺の妹なんだよ!」

「はっ。笑わせんなよ。俺はあいつに右腕を奪われたんだぞ!」

「う、奪われた? どういうことだ!
 お前の説明じゃ全く分かんねぇーんだよ!
 もっと、詳しく説明しろよ!」

「お前もさっきの古代文明みたいな映像を見ただろ?
 俺も見せられたよ。未来の俺にな。
 だけど俺の元にはレイシスはもう居なかった。
 だから……殺せなかったんだ」

「レイシスが居ない? もしかして、お前。
 アザゼルの時、俺に喋りかけた奴か?」

「あぁー、そうだ。俺がお前に喋りかけた。そしてお前を救った。
 少しは理解できたろ?」

「確かに救ってもらった。だけど……俺は柚葉を殺さない」

「あいつは悪なんだよ」

「悪?」

「そうだ。悪の根源だ。あいつは生きているだけで世界に災厄をもたらす存在なんだ……」

 俺はこいつの胸ぐらを掴み、叫んだ。

「ふざけんなよ!」

 もう一人の俺。
いや、こいつは確かに容姿は俺だ。
 だけどこいつは俺じゃない。
俺と一緒にされちゃ困る。

「先に言っておくが柚葉はお前の敵だ。殺しておけ。
 そうしないとお前が殺されるぞ」

「おい! もっと詳しく教えろ! 柚葉が敵になるって、どういうことだよ!」

「あいつはな、不幸の器なんだよ」

「不幸の器……? それはなんだ!」

「あいつは無意識の内に人の不幸を集め、体内に宿す。そして時間と共に膨れ上がり、爆発を起こす。
 その瞬間、この世界は終わる」

「なんだよ……それは……。
 ふざけんなよ。ふざけんなよ……。
 どうすれば良いんだよ……」

「こればっかりはどうすることもできんな。どうしてもだ」

「なんでだよ……」

「バグを修正させる為には世界を根本から書き換える必要があるからだ」

「なら、柚葉は生まれてきたら駄目なのかよ! あんな可愛い妹が生まれてきたら駄目なんておかしいだろ!」

「……………………」
 もう一人の俺は黙ってしまう。
そして腕を組みなおす。

 その瞬間だった。
もう一人の俺の首が跳ねた。
 床に転がる。俺の胴体はゆっくりと膝を床について倒れた。
 俺は口を抑える。吐き気がやってきた。
急いで近くにあったゴミ箱に胃のものを出す。

『レイシス……起きろ。何かが起きた。
 早く、起きろ!』

 寝ているレイシスを起こす。
しかし全くレイシスは起きる気配がない。
 僕の部屋に見たことも無い金色の靴が見えた。
 なんだ……これ?
そう思いながら、視線を上にやると。

 そこには金色に輝く髪を靡かせ、黄金の鎧を着た美少女が居た。仮面は着けていないし、所々鎧には傷がある。
 おまけに豊かな胸を持っており、俺に黒色の剣を向けている。
 剣先には血が付着していた。

「一つだけ問う。貴様は何者だ?」
 美少女が剣を僕の首筋に触れる所で止め、俺の返事を待っている。
 これは多分ミスったら終わる。
確実に終わる。死ぬ。

「俺は……ただの高校生です」

「ふざけるな。ただの高校生が鬼を体内に宿らせることなどできまい」

 鬼? あぁーレイシスのことか?

「チャネリングしてるんだ」

「ちゃ、チャネリングだと!
 そんなことできるはずない。吸血鬼は人間に懐かないはずだ!」

「それはどうかのぉー」

 レイシスが大きなあくびをして、俺の影から姿を現した。

「…………クッ、そういうことか」

「そういうこととはあれじゃのぉー。
 はて、お主どこかで見たことがあると思ったら黄金黒龍ゴールドブラックやないか?」

 クックックっと嬉しそうにレイシスが笑い出す。
 ゴールドブラックだったっけ?
めちゃくちゃ強そうな名前だなぁー。
 レイシスの知り合いっぽいし、強いのだろう。

「そういうお前も虐殺奴隷姫ジェネサイドプリンセスじゃないか?」

「お、お主……。殺すぞ?」

 レイシスのオーラが殺気へと変わる。

「やれるもんならやってみろ。そう言いたい所だが、今回はそんなことを言うために来たわけじゃない。少しばかり、和解。いや、相談をするために来たんだ」

「そ、相談……?」

「そうだ。相談だ。あぁー別にお前には全く関係ない。寧ろ、こっちの高校生に関係があることだ」

「お、おれ……?」

「そうだ。お前だ」

「お、お主! 絶対に我が眷属は渡さんぞ!」

「少しだけ確かめたいことがあるだけだ。
 返答次第ではお前を殺す。
 もう一度、問う。貴様は何者だ?」

 剣を向けられ、たじろいでしまう。

 レイシスはニヤニヤして

「なるほど……そういうことじゃったか」

 と納得していた。

 助けて! レイシモン!

と、叫びたい気持ちがあったが助けてはくれそうにない。

 こういうときはコマンド君出現してほしいけどそんなに都合良く人生は行かない。

 ということで考えてみよう。

 このままさっきと同じ返答をしたら、俺は確実に殺される。
 レイシスが黙ってないと思うけどとりあえず俺は殺されるだろう。
 ここらへんの上下関係を後から聞いてみよう。
 もしかしたら後は無いかもだけど。
それよりどう考えてもこの女は怪しすぎる。
 一応こいつは未来の俺を殺している。
やっぱり俺に何か恨みでもあるのか。
 いやー無いよな。
とりあえずカマをかけてみるとしよう。

「お前は礼儀を知らないのか? 人に何かを尋ねる時は自分から名乗ったらどうだ?」

 自分の中ではよく頑張った。
うん、俺は良くやったよ。

 剣が俺の首元を横切った。

 こ、殺される。本気でそう思った。

 でも殺されることは無かった。

 剣を鞘に引っ込めた彼女は顔を引きつらせながら言った。

「私の名はセラ・テラミック・ゴールドブラック。セラと呼んでくれ」

 手を差し出された。

 あれ? 手首に切り傷があるんだけど。

 歴戦の証なのかな?

 とりあえず、俺は差し出された手を握り返し笑みを零しておいた。

 セラは顔を真っ赤にして喜んでいた。

 もしかしたら男性慣れしていないのかもしれない。

 とか思ってたら近くからガリガリと音がしたので見てみる。

 すると、レイシスが未来の俺の遺体を喰っていた。

「お、おい……? 大丈夫なのか?」

「なぁ~に。心配することは無い。
 我とお主は眷属じゃ安心せい。腹は壊さん」

 あ、あのなぁー。そういう問題じゃなくてだなぁー。
 だけど考えてみろ。
こいつは吸血鬼だ。

「おい。俺を喰ってもいい。その代わり、絶対に今よりも強くなれ。亜差是嶐戦の時みたいになったら困るからな」

「心配するな。我が眷属。お主を喰うことが出来れば我の身体は復活できる。
 クックックッ、魔界を血祭りにするのじゃ」

「まぁー魔界のことはどうでもいい。
とりあえずそっちのことはお前に任せる。
 俺はこっちのことを考えるとしよう」

 まず一つ目。

 「ユズハを殺せ」という助言。

 二つ目。

 太古の世界の少年の物語。

 三つ目。

 セラの目的の三本立てだな。

 とりあえず、セラの目的から潰していくとしよう。

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