コマンド見えるようになったので、ハーレム作ります!

片山樹

桜田南の行動は謎である その4

 俺は主人公ヒーローに昔から憧れていた。ヒロインが困っていたら、すぐに駆けつけて助けくれる、そんなヒーローってのに。
『将来の夢 主人公ヒーロー
 そんなことを昔、書いた気がする。
勿論、今の今までヒロインを助けることもできなければ、女子とまともに喋ったことも無かった。だけど今は違う。
レイシスが居る。レイシスが居る。
俺の目の前でアイツの攻撃を全部受け止めてくれている。無理しやがって。
だけど、もういい。
俺は弱くない。強くないけど弱くはない。

「チャネリング小僧には悪いけど死んでもらう」
 煉獄柱亜左是嶐は左手をこちらに向けた。
時空が少し歪み、黒い禍々しいオーラが煉獄柱亜左是嶐の手に集中していく。

「お、おい! お主! 私がここは守りきる。ここは一旦、逃げるぞ!」
 レイシスがこちらに振り返る。
汗がポタポタと床に落ちる。
それほどまでに辛いということか。
息切れも激しい。

「小僧。お前に聞きたいことがある。お前はこの世界に何を望む?」

 俺が望むモノ。それは何か。

「ふっ、分からんか。じゃあー聞き直す。お前は過去、何を望んだ?」

 俺が過去に望んだモノ。

それは一つしかない。

「……主人公ヒーローになりたい」

「ふっ、そうか。それがお前の望んだことか。そうか、そうか。それは良かったな。だがな、ボーイ。夢ってのは弱者には手に入れられないんだ。お前みたいな雑魚にはな。夢ってのは強者の為にあるんだ」

 言いたい様に言ってやがる。
やり返したい。言い返したい。
だけど身体が動かないんだ。
口が動かないんだ。
あまりの怖さで。あまりの恐怖で。
竦んでやがるんだ。情けない。
死がすぐ近くに待っているから。

「そうだねぇ〜。面白いこと思いついちゃった」
 煉獄柱亜左是嶐はニヤッとして、右手の中指をクイッと立てた。するとベットに寝ていた桜田南の身体が宙に浮く。

「お、おい! アザゼル! 貴様、何をする気だ! 一般人には手を出すな!」
 レイシスが必死に叫ぶ。

「ふっ。この出来損ないが。愚痴愚痴と口を聞いてんじゃねぇー!」
 魔力が更に強まる。
そして圧倒されるレイシス。

「お前に選択権をやろう。小僧。この女を助けるか。間抜けな姫様を助けるか。それとも……皆、ここで死ぬかな」

 ふ、ふざけるな。
そんなことをしたら許さない。
ユルセナイ。赦すことができない。

「ほら、早く選べよ……」

 ビビット……あいつがやってきた。
あの選択肢がやってきやがった。
身体全身が電気を浴びたようにブルブルと身震いがした。
そして視界上に最悪な選択肢がやってきた。

『1:桜田南を助ける』
『2:レイシスを助ける』
『3:皆で死ぬ』

ふざけんなよ。
コマンドふざけんなよ!
なんで、こうなんだよ!
なんで、こんな選択肢しかないんだよ!
あまりに理不尽だろ!
おかしいだろ!

 どんな選択肢を選んでも誰も救われない。
誰も報われないじゃないか。

ふざけんなよ。

「お、お主。迷うな。我を殺すのじゃ。こうなってしまったのも全部、我のせいじゃ。我を殺すのじゃ」

嫌だ。ふざけんな。
そんなことはさせない。
そんなことは絶対にしない。

「さっさと選べ。そうしないと皆、殺すぞ!」
 亜左是嶐がこちらに手を向けて、黒彈を撃ってきた。
走馬灯の様に色々な記憶が遡ってくる。
俺、死ぬのかよ。

 ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。
ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。
ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。


 ヒーローになりたい。主人公になりたい。
皆を守れる存在になりたい。
誰かの役に立ちたい。

守りたい。守りたい。守りたい。守りたい。
守りたい。守りたい。守りたい。守りたい。

 殺される。殺される。殺される。殺される。
殺される。殺される。殺される。殺される。

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。

 彈はこちらに物凄いスピードで来ていた。
あ、当たる。当たった。当たった。

俺の腹をえぐりながら、内蔵をこれでもかと言うほどにぶち撒けながら、通り過ぎていった。
幼女の叫び声が響いた。
多分だが、レイシスの声だろう。
あ、あ、俺って死ぬんだな。
頭の中で理解ができた。
良い人生だった。
そして馬鹿みたいな人生だった。

 ーーこれでいいのか?

 いいんだよ。別に。
ってか、お前は誰だよ。俺の脳に直接声を伝えやがって。誰なんだよ。
死ぬ時ぐらいは静かにしてくれよ。

 ーー本当にこれでいいのか? あのままなら皆、死ぬぞ。

 それぐらい言われなくても分かってるよ。

 ーーお前の夢はなんだった?

 ヒーローになりたい。

 ーーなら、行けよ。今、行けよ。

 無理だ。身体が動かねぇーよ。

 ーーそれはお前の認識のせいだ。レイシスが言ったのを聞いてなかったのか? この世界は『作り物』なんだぜ。誰かが作った紛い物の世界なんだ。

 そんなこと言ってたな。
でも、身体が動かないのは事実だ。
どうやっても無理だ。この状況は現実だ。

 ーーそれなら書き換えてやればいい。

 書き換える? 何をだよ?

 ーー"世界"をだよ。

 世界?

 ーーそうだ、世界だ。この世界は紛い物だ。誰かの考えた世界だ。それなら書き換えろ。
書き換えてみせろ。それで救え。
お前は弱いかもしれない。力は無いかもしれない。だけど……俺はいつもお前の近くにいる。
側にいる。そして俺はお前を見守っている。
だから行くんだ! 救え!
救ってみせろ!

 だから、お前は誰なんだよ!
教えろよ! お前は誰なんだよ!

 ーー俺か? 俺はな、お前が選ばなかったお前だよ。

 お前が選ばなかったお前?
もしかして……お前は俺なのか?

 ーー厳密に言うと違う。だがお前だ。
俺はこの時、桜田を助けた。そしてレイシスを見捨てた。最低だった。だから……お前には俺みたいになってほしくない。だからお前は戦うんだ! それで皆を救うんだ。


 戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。

戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。


 ヒーローにはならなくてもいい。
主人公にもなれなくていい。
誰かの役に立てなくてもいい。
身勝手でもいい。雑魚でもいい。
弱くてもいい。弱者でもいい。
セコくてもいい。金の力でもいい。
何でもいい。誰でもいい。他力本願でもいい。
勝てればいい。守れればいい。
助けれればいい。

俺は立ち上がる。ボロボロの身体を必死に動かして、立ち上がる。身体中溶かされ、肉も所々千切れているし、骨も見えている。
湯気も出ている。だが、身体は徐々に回復していた。皆を守る。守りきってみせる。

だって、俺は伝説の吸血鬼の騎士なのだから。
守らなければならない人がいるから。

 「Rewrite the world.」

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