もしも超能力者が異世界の魔法学校に通ったら

ノベルバユーザー202613

第23話 坂上相馬

 爆発音が響き渡った。
 教室内は騒然とし、女子生徒達の悲鳴が響き渡る。


「皆さん、落ち着いて! 私の指示に従って落ち着いて行動してください!」

 フォルフーナが生徒達を静まらせようと大声を出している。
 そんな中、翔馬だけは立ち上がる。

「しょ、翔馬君、何処に行くの?」
「ソフィア様のところに行ってくる! フォルナさんは先生の指示に従って安全なところで隠れてて!」
「翔馬君!」

 フォルナの声を背中に受けながら、翔馬は走る。
 もちろんソフィアの下にではない。
 翔馬が向かった先は屋敷だ。
 騒ぎ、慌てふためく生徒達の波を押し退けて、翔馬はソフィアの屋敷の自分の部屋に行く。
 そこで昨日貰ったローブで顔を隠す。
 顔がバレると学園生活がし辛くなると、昨日ソフィアに注意されたのだ。

「よし!」

 準備が整った翔馬は早速爆発現場へと向かう。
 そこでは既に戦いが起こっており、学園在住の騎士達が戦っている。
 しかし、数、個の強さのどちらにおいても魔物の方が圧倒的に上回っている。
 上級生達も戦いに参加し、後方から魔法を放っているが、それでもなお魔物達の勢いは失われない。
 その光景を見た翔馬は、早速戦線に参加する。
 腕をしならせる様に上に向ける。
 すると、石畳が一斉にめくれ上がり、翔馬の周囲をまるで木星の周りを回る衛星のように回る。

「背後に敵影! 攻撃準備が済んでいる! 後方に注意しろ!」

 翔馬の怪しい動きに気付いた上級生の一人が叫ぶ。
 今の翔馬は黒マントを纏い、人型であること以外人間であることすら分からない。
 念のため敵として認識する彼女の判断は間違っていない。
 しかし、翔馬はあえてそれを正すことなく行動を続ける。

「グラビティ・レイン」

 技名を名乗ると同時に石畳だった石が、魔物達と騎士達の混戦の中に降り注ぐ。
 騎士達の悲鳴と魔物達の断末魔が辺り一帯に響き終わる。
 目を閉じ固まる騎士達は、自分が無事であることを確認すると、周りを確認して固まる。
 騎士や上級生達には傷一つ付けず百体以上いた魔物達が一掃されていた。

「な、何が起こったの?」

 状況についていけず戸惑っている騎士達に翔馬は近付いていき、自分の立場を名乗る。

「我はガリア王ソフィア・ルーイ様の命により参上仕った! これより、この学園全体に巨大な障壁を張る。触れば敵味方関係なく死を与える強力なものである! そなたら今から各門に行きこの事を伝えよ! 準備が整い次第、障壁を張る!」

 素の性格ではあまりに頼りなく思われてしまうとソフィアに言われた翔馬は、出来る限り偉そうに威厳をもって話そうとする。

「なっ……。そのような話、素直に信じられるわけがなかろう。貴方がソフィア王の命であるという証拠はあるのか?」
「もちろんだとも!」

 この程度は想定の範囲内だ。
 昨日、念のためにと貰ったソフィア直筆の名と判を押した命令書がある。
 懐からそれを取り出し彼女達に突きつける。

「これが証拠である!」
「……これは、確かにガリアの印! それにソフィア様の印まで!」
「信じていただけたか。ならば私の指示に従い動いてくれ。近付いてくる二人の魔王は私が撃退する。そなたらは手分けして生徒達が混乱して門から出ないよう注意してくれ!」
「か、畏まりました! それと一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 ぼろぼろではあるが気品のあるこの場の隊長らしき少女が、翔馬に跪きながら質問をする。

「うむ、何だ?」

 この時翔馬は少し舞い上がっていた。
 自分の能力の全力を出せる相手に出会えるかもしれないという高揚感。
 久しぶりの実戦を行う緊張感。
 そして目の前の敵また命あるものを百体以上を全滅させたことによる興奮。
 日々紛争の中にいたわけでもない翔馬が、今の現状に少し舞い上がってしまうのは仕方のないことだろう。

「あ、貴方様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「私か? 私の名前は坂上翔馬……」
(あ、間違えた!)

 だから、名乗り慣れた本名を名乗ってしまった。

「坂上翔馬? それって……」

 彼女は、先日帰ってきたソフィアの横に付いて来ていた翔馬を知っていた。
 翔馬は慌てて誤魔化すために頭を回転させる。

「……翔馬、のあ、あー……そう! 翔馬の兄、坂上相馬だ! 弟の翔馬が世話になっているな! はーっはっはっは」
(上手く誤魔化せたか?)

 恐る恐る跪く騎士達の顔を見る。

「な、なるほど! ではあのお噂は事実ということですね!」

 彼女達は恍惚とした顔で翔馬を見ながら言った。

「噂?」

 噂など聞いた事がない。
(何の噂だろう?)

「貴方様が千体以上の魔物に囲まれたソフィア様をお救いなさい、そのお礼として翔馬様を学園にご入学するに至ったという……」

 完全なガセネタだ。
 噂に尾ひれがつきまくっている。
 たかが十体を倒しただけなのに千体も倒したことになっている。

「えーっと……」

 否定しようと思い口を開くが、今はこんなことをしている時ではない

「い、今はそんなことはどうでも良い。私はもう行く。では、そなたらも頼んだぞ!」

 折衷案として固定も否定もしないでおく。

「は、はい! お任せください!」
(うーん、なんか取り返しの付かないことになりそうな……)

 彼女達の目がキラキラと輝いているのに不安を感じながらも翔馬は彼女達に背中を向け空へと飛ぶ。
 魔王達の話ではベルゼビュートという魔王が空中から強襲をかけるという話だったはずだ。
 上空に上がった翔馬は周りを見渡す。
 東西南北に一つずつある門の内、北門以外の場所からは魔物達が押し寄せていた。
 逆側の南門はたった今、翔馬が制圧したので後は残り二つの門を制圧すればいい。
 そして魔物が押し寄せていない北門。

(まあまず間違いなく罠だろうなー)

 どう考えても罠だ。
 しかし、混乱している生徒達にそれが分からないのも無理はない。

「グラビティ・レイン」

 ひとまず西側と東側の魔物を石の雨で駆逐する。
 その後、北側に走って逃げる生徒達を一斉に持ち上げ、学園の敷地内に戻していく。
 突然体が宙に浮いて来た道を戻された彼女達の耳を貫くような悲鳴が聞こえてくる。

(うーん、ちゃんと注意してからの方がよかったかな……)

 女の子達の悲鳴は心が痛い。
 しかしそれも、彼女達の目の前に広がっていた森から魔物達が姿を見せたことで収まっていく。
 翔馬は彼女達の戦闘に降り立ち、女子生徒達に向かって叫ぶ。

「魔王が現れた。君達は騎士団の指示に従って校舎の中に避難して! ここは私が食い止める!」
「あ、ありがとうございます!」

 生徒達は口々に翔馬にお礼を言って、敷地内に戻っていった。

「ふー、これで何とか全員学園の敷地内に収まったかな」

 空高くに移動して、前後左右を念入りに見回す。
 魔物達も、一瞬で中に入った魔物が殲滅されたのを見て、二の足を踏んでいる。
 結界を張るならば今しかない。
 そんな時だった。

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