もしも超能力者が異世界の魔法学校に通ったら

ノベルバユーザー202613

第22話 襲来

 次の日、ソフィアとディアナは朝早くから学校に行ってしまったので、一人で朝食を食べ、学校に向かった。


(やる気出してるなー……)

 しかし、翔馬は昨日と変わらず、呑気に学校への道を欠伸をしながら歩いていた。
 そんな時、背後から翔馬に声が掛かる。

「おはようございます、翔馬さん」
「あ、ケレスさん、うん、おはよう」

 ケレスと挨拶をして、二人で並んで教室へと向かう。
 暫く女生徒達と話していると、鐘の音と同時にフォルフーナがドアを開けて慌てた様子で教室へと入ってくる。

「皆さん、お早く席に着いて下さい」

 いつもなら言わないその注意に生徒達にも緊張が走る。

「どうしたんでしょう?」
「うーん何だろうねー」

 翔馬は予想が付いている。
 しかし、適当なことを言って不安にさせるのも良くないと思ったので黙っている。

「生徒の皆さんに大事なお知らせがあります」

 フォルフーナの声音には少なからず恐れの感情があった。
 恐らく、既に魔王が二人、この学園に侵攻を始めようとしていることを知っているのだろう。
 生徒達にもその不安が伝わったのだろう。
 教室中がざわめきたつ。

「皆さん、お静かに! これから重要なことを話します」

 フォルフーナの声に、教室は段々静かになっていく。
 それを確認したフォルフーナは、一度頷くと重々しく口を開く。

「この学園は……本日をもって、閉鎖となります。貴女方の動揺も分かります。しかし、そうしなければならないほどの脅威がこの学園に近付いてきております。皆さんは冷静に行動してください」
(あー、やっぱりソフィア様、駄目だったのか……。まあそんな気がしていたけどね)

 彼らを説得し得る材料がない。
 兵力を各国から集めるにしても時間が掛かるし、魔王を何とかできる保証もない。
 ここからは各国に逃げる道が幾つもある為、運がよければ国に戻れるだろう。
 しかし、その道をもし魔王が知っていたら為す術なく全滅の憂き目にあう。
 だが、ここにいても全滅する可能性がある。
 翔馬の存在を知らなければそんなものだろう。

(でもそれって大の為に小を切り捨てる方法だよなぁ。日本ならどうするのかなぁ)などとどうでもいいことを考えている間に、話は進んでいく。

「ですが、今日までは授業を致します。皆さん、最後の授業です。落ち着いて受けましょう」

 そう言うフォルフーナの表情は無理して作ったような笑顔があった。
 生徒達もそれを聞き、静かに授業を聴いていた。
 次の休み時間、いつもであれば翔馬の下にやってきていた女子生徒達も、今日は横の友人達と話し合っていた。

「あ、あの……、翔馬君」

 翔馬も横のフォルナに相談をうける。

「翔馬君はどうするの?」
「うん? うーんソフィア様は存続を望んでいる方だから……。多分、最後までこの学園に残ると思うよ。その後は多分、ガリア王国に付いて行くだろうね」
「そう、ですか……。私達も国から戻るよう言われたら、すぐに出発できるよう待機状態を命じられるかと思います。そしたら……翔馬君ともお別れになってしまいます……」

 フォルナがそう言った途端、外から爆発音が響き渡った。

 少し時を遡り、一間目を欠席して生徒会室にて……。
 ソフィアは撤退で決まりかけている会議に歯止めをかけようとしていた。

「お主ら、背後から狙われたらどうするつもりなんじゃ?」

 しかし、ナタリアは呆れた顔で答える。

「それは既に話が付いたはずよ。ここにいて全滅するよりも国から援軍が発っている道を行った方がよほど安全であると」
「ふん! お主らの国に背中から魔王に強襲されて何とかできるほどの戦力があったとは初耳じゃな」
「私達は王侯貴族として自国の民を守る義務がありますわ! それが例え他国の人間を犠牲にしても、よ」

 他の移動経路が魔王に襲われている間、自分達が逃げる時間を稼いでくれる。
 例え、後ろ指を指されるような方法であっても自国民を守らなければいけない立場に、彼女達はあるのだ。

「もしも自分達が襲われたらどうするつもりじゃと聞いておる!」
「その時は運が悪かった、でしょ?」

 ナタリアの眼がソフィアを責める様に細める。
 自分だって好きでこんなことを言っているんじゃないと、その眼が言っている。

「じゃからここにいる者達で力を合わせてじゃな!」
「お話になりませんわ! 我がクリミア公国の民は撤退させていただきます」

 その言葉に同意するように横のエルフと獣人の女生徒も頷く。

「同じく、アルフヘイム王国も撤退しますわ」
「アースガルド王国も撤退しろって命令が来ている……諦めろよ、ガリア王」

 獣人の女生徒が周りの会議に参加している各国の王国貴族達を見回しながら言った。

「おめぇの味方はいないみてぇだぜ?」
「ぐっ……」

 呻くソフィアに、ナタリアが質問をする。

「ソフィアさん、貴女はどうなさるおつもりですか?」
「ここに残って魔王を迎え討つに決まっておろう!」
「貴女……自分が何を言っているのか分かっているの? 貴女の国の大事な子ども達を危険に晒すことになるのよ?」
「魔王共に背中を討たれる方がよほど危険であろうが。我は貴様らの判断の方がよっぽど狂気の沙汰じゃと思うがのー」
「……」

 ソフィアの言う事には一理ある。
 しかし、それでも生き残る可能性が高いのはここから離れ、国に戻ることだった。
 おかしいのだ。
 ソフィアもそれが分からないはずがない。
 ソフィアならば可能性の高い方を選ぶはずだ。
 それを訝しんだナタリアが、ソフィアに聞く。

「貴女、何を隠しているの?」
「突然なんじゃ?」
「だってそうでしょう? この中でこの案に一番賛成するのが貴女でしょ。それが突然の居残り案を推してくるなんて……、何か隠しているとしか思えないわ。何? 復讐で頭がおかしくなったの? それとも、とうとう魔王側にでも寝返ったの?」
「ふん! どちらも違うわ! 我は冷静に判断してここに残る方が良いと判断しただけじゃ」

 ナタリアの言葉を、ソフィアがゆらりゆらりとかわしていくのに苛立って、とうとう獣人の女子生徒が切れた。
 机に両の拳を叩きつけ怒鳴り散らす。

「だから! てめぇはいったい何を隠しているんだって聞いてんだ! ここに残る方が可能性がたけぇってんならその証拠を見せてみろ!」
「証拠は見せれん。我が国の最重要機密ゆえ、な」
「はぁ? ざけんじゃ……」
「リアリー、止めなさい。ソフィアさん、おふざけが過ぎるのではありませんの? 証拠は出せないけど信用して欲しいなんて傲慢が過ぎるわ」
「別に信用して欲しいとは言っておらんぞ。そなたらが出て行くのは勝手じゃ。じゃが、バラバラに行動されたら流石に守りきれん。そなたらの行動に付いて行って死ぬ生徒達を不憫に思うただけじゃ」
「貴女……、そんな情に深い女だったかしら? もっと冷酷で冷静な判断が出来る女だと思っていたけど」
「我を人でなしのように言うでないわ。まあ、当たらずとも遠からずじゃがな」
「なら、何で……」
「我ではない。優しすぎる奴が傷付いて閉じこもってしまっては事じゃからのう」
「はっ?」

 最後にソフィアが呟いた言葉が聞こえず、ナタリアが聞き返した途端、外から大きな爆発音が響いてきた。

「きゃっ、何?」
「何だ? 魔法の暴発か?」
「いえ、これは……」
「来たか……」

 会議室内が騒然とする中、ソフィアだけは小さくそう呟く。
 待ち焦がれていた時が来た。
 そんなソフィアの様子とこの状況への焦りから、今まで冷静だったナタリアが怒鳴りながら立ち上がる。

「貴女が何時までもごねるから魔王が来てしまったじゃない。どうしてくれるの!」
「魔王? そんなものに興味はないわ!」
「は? 本当に気が狂ったの?」
「ふん、気も狂いたくなるわ。我らの歴史が、努力が、こんなあっさりとひっくり返されてしまうんじゃからな」
「貴女、何を言ってるの?」

 ナタリアの質問を無視して、ソフィアは空を見上げる。

「お前達もかつ目して見るがよい。我が最強の鉞の力を。この世界の歴史が変わる瞬間を」

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