もしも超能力者が異世界の魔法学校に通ったら

ノベルバユーザー202613

第17話 お世話

 午前中の授業が終わった翔馬は、隣のフォルナに話しかける。

「フォルナさん、一緒にお昼食べよう」
「え、あ、はい!」

フォルナが顔を赤くしながら頷いた。
しかし、その様子を周りで見ていたクラスメイト達が手を上げて名乗り出てくる。

「あー、フォルナちゃんだけずるーい!」
「私もー! 私も翔馬君と一緒に食べたーい」
「じゃあ私も!」

 他の女子達も手を上げる。
 昨日あれだけ大声で一緒に食べようと叫んだのだ。
 彼女達も当然それを聞いており、翔馬がその話題を言い出すのを待っていたのだ。

「ええ! ええっとー……」

 困った翔馬は、フォルナを見る。

「あ、私は大丈夫ですよ」
「じゃあ皆も一緒に食べよう」

 フォルナが頷いたのを見て、翔馬も頷く。

「「「やったー!」」」
「あはは……」

 嬉しいのだが恥ずかしい。
 そんな気持ちだった。

「では昼食を持ってきますね」

 そう言ってフォルナは立ち上がり、教室を出て行こうとする。
 女子達も翔馬に手を振って出て行こうとする。

「い、いやいや俺も一緒に行くよ!」

 女子に食事を持ってきてもらうなんてそんな恥ずかしいことはできない。
 お弁当なら話は別なのだが、給食台くらい男が運んでなんぼだと思う。
 翔馬は慌てて立ち上がって、女子達に付いて行こうとする。

「え、いえ、翔馬さんは座っててください! 私達は義務がありますので」
「義務?」
「はい。上級生の魔術師の方々は正式に軍属が決まった方々ですので私達とは立場が違うのです」
「へー」
(そういえば忘れていたけど、彼女達は将来魔物と戦わなくちゃならないんだよな……)

 平和なこの学校からは考えられない。

「ですので下級生は上級生のお世話をする義務があるのです」
「いや、じゃあなおさら俺もお世話する必要があるんじゃない?」
「いえ、翔馬君はソフィア様の従者ですので。それに男性の魔術師の方は免除されますので大丈夫ですよ」
「あ。そうなんだー」
(まあ俺も男にお世話されるより女子にお世話される方が嬉しいからなー)

 しかし、ただ彼女達が持ってくるものを何もせずに食べるというのも申し訳ない。

「じゃあ俺も手伝うよ」
「え!」
「ワゴン運びくらいなら礼儀とかは必要ないでしょう? それに……」
「それに?」
「あ、いやなんでもないよ。じゃあ一緒に行こう!」

 翔馬は誤魔化してフォルナ達の後ろに立つ。
 厨房の食事の載ったワゴンの停まっている場所まで行く。

「ええっと……本当に運ばれるのですか?」
「ん? 何か問題でもあるの?」
「い、いえ、普通の男性魔術師はこういったことはやりませんので」
「そうなんだー。俺なら大丈夫だよ。手伝いたいんだ、駄目かな?」
「じゃ、じゃあお願いします」

 フォルナは感動したような緊張したような顔で大きく頷いた。
 しかし、それを聞いていた女子達は、黄色い声を翔馬に送り口々に褒め称える。
(そこまで大した事じゃないんだけどな……)
 感謝の言葉を言いながら内心で少し呆れてしまう。

「さてと、やりますか!」

 気合を入れ直してワゴンを運ぶ。

「失礼します」

 食堂の扉を開けると、一年生の女子達が一斉に頭を下げる。
 翔馬も合わせる準備はしていたので、よく見れば少しずれてる程度の誤差で頭を下げる。

「え? あれ男じゃない?」
「え、どこどこ?」
「あ、本当だ!」
「私、二日前に彼を見たわよ? 確かソフィア様の従者だったはず……」
「え、本当に? じゃあ何でワゴンを運んでるの? しかも男なのに」
「さあ」

 翔馬が上級生達の食事をする食堂に入ると、あちこちからそんな声が聞こえてくる。
 翔馬にも聞こえていたが、微笑を携えて気にすることなくワゴンを前に進ませる。
 だが、一つ目の食卓に着いた時、上級生の女子生徒に声を掛けられる。

「ねえ貴方、男でしょ?」

 予想できていた質問であるため動揺することなく答える。

「はい、昨日編入してきました」
「へぇ、それなら……。貴方はもしかしたら知らないかもなんだけど、男の魔術師候補生は、彼女達見習いとは別枠の存在だからこういうことはやらなくていいのよ」
「あ、はい、先ほどお聞きしました」
「じゃあなんでこんな事をしているの?」
「それはお、いえ僕がやらせてほしいと頼んだからです」

 俺と言いかけて僕に直す。
 俺では失礼だが、私は少し違う気がする。
 だから、ニュアンスが少し柔らかい気がする僕を選ぶ。

「へー偉いのね」
「ありがとうございます。何か至らぬ点などがございましたら遠慮なくご指導ください」
「……」

 少し試すような言い方をしたのだが、翔馬があっさりと受け流したのを見て驚いた表情をする。
 上司に褒められたら本人は謙虚に否定しがちだが、それは上司の顔を潰すことになる。
 だから、素直に感謝することが正しい、と本で見たことがある。
 ちょうどこの卓の食事の配膳が終わった。
 一年生の女子と声を合わせて、「では失礼致しました」と頭を下げて次の卓へと向かう。
 だが、次の卓でも翔馬は上級生に質問をされる。

「ねえねえ、翔馬君ってソフィア様の従者って本当?」
「あ、はい、本当です」

 上級生のあちこちから騒ぎ立てる。

「でも途中から編入してきたってことは去年は違ったんでしょ?」
「はい、ソフィア様がお国から戻る途中で拾っていただきました」
「へえ、じゃあ……」

 聞けば聞くほど疑問が増えていく。
 しかし、ちょうど食事の配膳が終わった。

「申し訳ありません。次がありますのでこれで失礼致しました」
「あ……いえ、私こそごめんなさい」

 物腰の柔らかな翔馬の態度に顔を赤くして謝る。
 次の卓では魔法才能の話をして、更に次の卓では今まで何をしていたのかを聞かれた。
 翔馬はそれらを問題なく返答し、最後の卓を終わらせて挨拶をした後部屋を出て行く。

「翔馬さん、お疲れ様でした」

 食堂を出ると、フォルナが話しかけてくる。

「フォルナさんもお疲れ様」
「あ、ありがとうございます。それにしても翔馬さん、とても慣れたご様子でしたし」
「ソフィア様に色々教わったからね」
「そうなんですか? さすがソフィア様の従者ですね」

 これも嘘ではないが本当でもない。
 翔馬は重力系能力者。
重力は世界でも翔馬以外操ることのできない希少な能力だった。
 そして重力を操る能力は、非常に有能な能力なのだ。
 日本でしていたバイトも、無重力間での薬品製作や倍の肉体で鍛えた後、元の重さに戻すとどうなるのかといった、本来ならばとてつもない手間とお金が掛かるような実験を手伝っていた。
 それゆえ、各界の大物の方々と食事をすることは珍しくなく、最低限の礼儀作法は底で学んだのだ。

「それにしても毎日これをやるの?」
「いえ、ローテーションですから義務がない日が週に一度か二度ほどあります」
「へー、大変だね」
「いえ、慣れてますので」

 最後に自分達の分の食事が載ったワゴンを教室に運び、やっと食事になる。

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