もしも超能力者が異世界の魔法学校に通ったら

ノベルバユーザー202613

第11話 フォルフーナ

 二人がそんな話をしているとは露知らず、呑気に学園内を見回していた翔馬は噂を聞きつけた女生徒に囲まれていた。

「ねぇ、貴方、ソフィア様の従者にゃんだって?」

 最初に話しかけてきたのは猫耳をした如何にも活発そうな表情をした女の子だった。

「え、あ、はい」
「へー」

 次に横にいた眼が紅い耳の長いエルフの勝気そうな少女が話しかけてくる。

「でもソフィア様がお国に帰る前にはいなかったわよね? ということは従者になったのは最近よね?」
「はい、俺が住んでいたところは凄い田舎でして、自分に魔法の才能があると知ったのもごく最近でして。ソフィア様に拾って頂いたのも偶然でした」

 昨夜、ディオネと打ち合わせをしたのでこれくらいの質問はお手の物だ。

「ふーん」

 次に話しかけてきたのは普通の少女だった。

「それでそれで! 魔法適正は幾つあるの?」
「風、土、水、闇の四つです!」

 翔馬がそう言った瞬間、周りの生徒達から歓声が上がる。

「あはは……」

 こういったことに慣れていない翔馬は素直に照れる。

「あ、照れてる! 可愛い!」
「ねえねえ貴方、名前は何ていうの?」
「あ、申し遅れました! 俺の名前は坂上翔馬と申します。よろしくお願いします」

 翔馬が素直に頭を下げたところでケレスが声を掛ける。

「あの翔馬さん、そろそろ行かないと遅刻します……」
「あ、それはいけない! 皆さん、ではこれで俺達は失礼します」
「うん、じゃあね!」
「また後でね!」

 やっとのことで抜け出せた翔馬とケレスは改めて校舎へと向かう。

「翔馬さんは田舎に住んでいらしたのですか?」
「え、あ、はい……」

 元々嘘があまり得意ではない翔馬は、純粋そうな顔で聞いてくるケレスに嘘をつくことに心を痛める。

「そうなんですか。でも翔馬さん、結構裕福そうな雰囲気がありましたよ。私も最初に見た時はてっきり何処かの大きな貴族のご子息様かと思いました」
「ええ! いやいや全然そんなことはないよ! 普通の、田舎では、普通の家でしたよ」

 慌てる翔馬の姿に、ケレスはクスリと笑う。

「でしたら翔馬さんは特別なんですよ」
「そんなことはないと思うけどなー……」

 和やかな談笑をしながら校舎に入り、廊下を歩き、一つの教室の前で止まる。

「ここが俺が授業を受ける教室ですか?」
「あ、いえ私は翔馬さんがどの魔法適正があるのかを先に聞いておりましたので。翔馬さんは基本的に私達一年風組と授業を受けます。ですが翔馬さんは風以外の魔法適正がありますので、他の魔法適正は週に三度、別の教室で授業を受けてもらうことになります」
「なるほどー」

 つまり、ここは風以外の魔法才能を習う教室なのだろう。
 続けて二つの教室を紹介され、最後に職員室に案内される。

「ここが職員室になります。今から担任の先生にご案内いたしますのでそこからは先生に従ってください」
「はい! 案内してくれてありがとうございました!」
「いえこのくらい大した事ではありません」

 しっかりと頭を下げて感謝の言葉を述べる翔馬に、ケレスは少し頬を赤くする。

「では入りましょう」
「はい」

 ノックをして職員室に入り、一人の瞳が緑色のエルフの女性の前で止まる。

「おはようございます、フォルフーナ先生。坂上翔馬さんを連れて参りました」
「あ、ケレスさん。ご苦労様です。貴方が坂上翔馬君ね」
「はい! よろしくお願いします」
「はい、元気な子は好きよ。ではケレスさん、ここからは私が引き継ぎますので貴女は先に教室へ行っていなさい」
「分かりました。では失礼します」

 退出したケレスを見送ったフォルフーナは、翔馬の方に向き直る。

「では改めて一年風組を担当しているエルフのフォルフーナ・カロエと申します。以後、よろしくお願いします」
「あ、坂上翔馬と申します。こちらこそよろしくお願いします」
「……ふーん、やはり貴方、何処かで特別な魔法の訓練を受けていた、とかではないのね」
「え、な、何ですか、突然?」

 翔馬は、突然雰囲気を変え、探りを入れてきたフォルフーナに戸惑う。

「何処かに閉じこまれていたのならそんなに明るくはならないし、幼い頃から魔術師として育てられたのならそんな純粋な瞳にはならないもの」
「は、はぁ」
「でも……田舎生まれにしては品があるのよねぇ」

 グッと翔馬に近付いてきたフォルフーナ。
 由緒正しき王侯貴族が集まる学園なだけに、フォルフーナの服装は胸元まできっちりしているものの、服装の上からでも分かるほど大きな胸がはち切れそうであった。
 翔馬は視線を明後日の方向に向けながら答える。

「そ、そうですか……これでもついこの間までは森に囲まれた場所にいたのですが……」
「そうは見えないけどなぁ」
(む、胸が……大きい)

 思春期の少年には目の毒だった。
 そろそろ下半身が危うくなってきていたところで、フォルフーナが離れていく。

「まあいいわ。優秀な男の魔術師は貴重だもの。何か事情があるのね」
「じゃあ何で聞いたんですか!」

 顔を少し赤くする翔馬にフォルフーナは笑ってしまう。

「だって、貴方が可愛いんだもの」
「俺は男ですよ!」
「まあいいじゃない。……っと、そろそろ時間ね。では教室に行きましょうか」
「……はーい」

 なんか納得できない翔馬は、渋々返事をしてフォルフーナの後ろから付いていく。
 教室に着いた二人は、まずフォルフーナが先に入る。

「貴方はここで待っていなさい。すぐに呼びますからそしたら入ってきなさい」
「はい」

 そう言われ、翔馬は廊下で待つ。
 教室の中は、既に翔馬の噂で騒がしくなっていた。
 教室に入っていったフォルフーナがそれらを静かにさせる。
 静かになった教室内で、幾つか生徒達に説明をしていた。
 その後すぐに翔馬の名前が言われる。
(あー、流石に緊張するな……。学校初日の挨拶みたいな気分だ)
 大抵の学校では一年生は各クラスで立ち上がって簡単な自己紹介をする。
 その時の不安と焦燥とこれから先に対する不安に似た感情が、今の翔馬の心中には渦巻いていた。
 深呼吸をして教室内に入った翔馬は頭を下げながら自己紹介をする。

「は、初めまして! お、私の名前は坂上翔馬と申します。今まで田舎に住んでいまして常識の一部が欠けた部分があるかとは思いますが、気長に教えていただけると助かります!」

 生徒達が拍手する。
 翔馬は頭を上げて、改めて教室内を見回す。
 聞いていた通り、女子生徒が圧倒的に多い。
 三十名近い生徒達の中で男子生徒の数は五人もいない。
 女子生徒に囲まれ、男子生徒達は肩身の狭い思いをしているのかと思いきやそうでもないらしい。
 真面目に座っていたり、頬杖を付いたり、欠伸をしたりと、各々肩身を狭くしている様子はない。
 恐らく、彼らにとって小さい頃からこの状況は当たり前だったのだろう。

「では、翔馬君は後ろのあの空席に座ってください」
「はい!」

 少し固くなりながらも席まで歩く。
 翔馬の隣は女子生徒だった。

「よろしくお願いします」
「あ、よ、よろしくお願いします」

 瞳が緑色の耳が長い少女、エルフであろう。
 お淑やかそうな雰囲気をした少女だった。

「では授業を始めます!」

 フォルフーナの号令で授業が始まった。

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