もしも超能力者が異世界の魔法学校に通ったら

ノベルバユーザー202613

第3話 超能力者と魔術師

 女性騎士の一人がその胸を大きく斬られたのだ。騎士甲冑の隙間から零れる血の量も尋常ではなく、翔馬の位置からでもその傷は偽者ではないことが分かる。
 女性騎士が気絶するように地面に倒れる。
 どう見ても演技ではない。
 今すぐに撮影を止めて救急車を呼んで手当てをしなければ命に関わる。
 しかし、魔物達は動きを止めず、女性騎士達も戦いを止めようとしない。
 機械が暴走して止められないといった様子ではなく、よくある出来事の一つとでも言っているようであった。

「撮影を止めない? 違うっ、本気で殺しあっているのか!」

 そこで翔馬はやっと気付いた。
 目の前で行われていたのは本当の命の奪い合いだと。

「止めないと!」

 翔馬は慌てて騎士と魔物達の混戦の中に降り立つと、騎士たちに向かって大声で叫ぶ。

「騎士の皆さん、下がってください!」
「なっ!」
「いきなり何! 何処から現れたの?」
「空から現れた? あり得ない!」

 辺りは翔馬が突然現れたことで、喧騒に包まれている。
 魔物達も急に現れた翔馬を警戒して、動きを止める。
(最低限の知能はあるみたいだ……)
 動きを止めた魔物達に少し安堵する。
 もう先ほどまでの余裕や呑気な気持ちは全くない。
 真剣な表情をして魔物達を睨み、牽制する。
 とりあえず、一旦戦いは治まったようだ。

「傷を負っている方はすぐに手当てを! 他の方はあれらが何か教えてください!」

 ここまで近くで見れば分かる。
 機械ではない。間違いなく己の意思と感情を持った動物、いや魔物だった。
 基本的には翔馬の知る動物や虫に似ているが、その大きさは人間近くまであるのだ。
 表皮は黒色が多く、目の色だけは真っ白で近くで見ると一層気持ちが悪い。
 まさしく魔物、といった存在だった。

「貴様の方こそ何者だ! あれらが何かだと? 魔物に決まっているだろう!」

 女性騎士の一人が怒鳴り散らす。
 しかし、翔馬は動じずに質問を重ねる。

「魔物、というものに俺はあまり縁がなかったんです。貴女方が襲われているように見えたので助けに来ました。あれらは……倒していいのですか?」

 一応確認する。
 もう可能性はないだろうが、もしかしたら本当に映画の撮影である可能性がほんの少し残っている。
 それも翔馬が邪魔をした時点でカット確実なのだが。
 翔馬の言葉を聴いた女騎士の一人が、状況をよく理解していない部外者の言葉にいらいらしながら叫ぶ。

「お前如きにやつらが倒せるはずがないだろう!」
「俺の質問に答えてください。あの魔物達は皆殺しにしていいのですか?」
「貴様……平民の分際でこの私に……、やれるものならやってみなさいよ!」
(へ、平民? うわー、いまどき自分を貴族とか言っているのかー……。痛いなー)
 内心で少し引くが、今は許可が出たことの方が大切だ。

「確かにお聞きしました。後で文句を言わないでくださいよ」

 最後の確認を取ってから翔馬は手を前にかざす。

「貴方……魔法を使うつもりなの? 間に合うはずがないでしょう!」
「魔法?」

 ある意味で聞き慣れた言葉。しかし、直接言われたのは初めての言葉に首を傾げる。
 翔馬達を、超人だとか神に選ばれた天啓を持つ者達だとか、逆に悪い意味で奴らは化け物だとかいったことならば聞いたことがある。
 しかし、翔馬達を魔法使いだなんて呼ぶ人間なんて聞いた事がない。
(地域独特の言い回しなのかな?)
 などと一瞬だけ呑気なことを考えたが、魔物達も翔馬が攻撃態勢に入ったことを確認して、行動を開始する。
 翔馬は落ち着いた様子で魔物達に語りかける。
「言葉は通じないとは思いますが、人間を害する貴方方に対して俺は容赦しない」
 そして、小さく呟く。
「グラビティ・スタンプ」
 翔馬がそう言った瞬間、魔物達の動きが一斉に止まり、地面に倒れ、そのまま押し潰される。
 一瞬の出来事だった。先ほどまで緑色の液体を垂れ流しながら血気盛んに騎士達と互角以上の戦いを繰り広げていた魔物達が、今は全員骸と化している。
 原型をとどめている魔物は既におらず、その光景に騎士達は唖然とする。

「なっ……あ、貴方、今、何をしたの?」

 先程翔馬を怒鳴っていた騎士が呆気にとられながら呻く。

「ええっと……超能力、ですが……」

 先程、魔法と言われ通じるか分からないが、一応超能力と言ってみる。
 しかし、案の定騎士は疑問の声を上げる。

「超能力? お前は魔術師ではないのか?」
(魔術師?)
 それももちろん聞いたことはある。だが言われたことはない言葉だ。

「魔術師、ですか? いえ、すいません。俺は魔術師ではなく超能力者なんですけど……」
「超能力者? なにそれ?」

 騎士の呆けた表情を見て、彼が嘘を言っているわけではないと悟った少年は逆に混乱する。

「あ、あれー? おかしいなー」
(超能力を魔法って呼んでいる地域をそもそも知らないけど、超能力を知らないなんて……。も、もしかして凄く大変な事態になっているんじゃ……)

 今更ながらに翔馬は危機感を抱き頭を抱えて悩む。
 だが、騎士達はそんな少年に対して危機感を抱いたらしい。
 緑色の血に濡れた剣を翔馬に向ける。

「お前……何者? 怪しいわね……。助けてもらって悪いんだけど、街に着くまでお前を拘束させてもらうわ」

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