復讐のパラドクス・ロザリオ

殻守

第26話 赤狼祭

照りつける陽射しの中、城下町の広場には多くの露店と種族のそれぞれ違う人達が集まり普段はない盛り上がりを見せていた。
今日から赤狼祭が始まる。この祭りは5日間行われ、初日と二日目はこのように露店が出され一般的な祭りごとと大差ない。だが同時に三日目以降に行われるこの祭りの目玉でもある『赤狼戦』の参加者を集める。元々この祭り自体、この国の守り神であるグラン・ソルが戦い好きなことから始まったもので毎年他国からも多くの参加希望者が集まる。赤狼戦の流れはまず三日目の昼と夜、四日目の昼と夜に予選が行われそこで勝ち残った4名が五日目の昼に行われる決勝へと参加できる。さらにここで勝ち残ったものには赤狼祭の最後を締めくくる最終戦に参加することになる。その相手となるのは現在の王国騎士団の団長、つまり
「どうかしましたか?団長」
私の事だ。
「いや、何でもない。」
その場に立ち止まっていた長身の男は部下の後を付いていくように歩き出した。
紺色の長髪を後ろでひとつにまとめ露わになっているその目つきからは刃の様な鋭さすら感じられた。騎士服を身に包み所々に付けられた装甲は動きに干渉しないよう軽装になっている。騎士としては珍しく腰にそれぞれ作りの違うニ本の騎士剣を携えていた。
王国騎士団団長でありながら最強の名である『剣戟』の称号すら得たその実力はいまや並び立てるものは世界に数える程しかいない。レオンハートの名を持つその男は退屈していた。
「今年はどういう奴らが参加してるんだ。」
あくび混じりにレオンが部下の騎士に聞いた。
苦笑いをしながら手に持った書類に目を落とす。
「えー、そうですね。今の所は雇われ傭兵のガルム、シリウス副団長にマキリ秘書。後は…」
「親父、焼き菓子ひとつ。」
「団長!」
完全に興味を失ったレオンは近くの屋台で売っていた焼き菓子に目を惹かれていた。
「自分から聞いておいて無視は無いですよ!無視は!」
叱るようにいう部下の様子を面白がるレオンはまるで子供のようだった。
「言っておきますけど今年はいつも見たいに行くと思わない方がいいですよ。」
「お、なんだ。めぼしい奴でもいたか。」
自慢げに言う部下に期待していない目でレオンは様子を見た。
「一人だけ素性が一切わからない参加者がいるんですよ。」
そういいながら懐から取り出された紙をレオンは受け取った。
「なになに?出身不明、年齢不明、経歴不明?」
部下の方に目をやり怪訝そうに見た。
「なんだこいつ」
書類に一通り目を通したが分かったことは名前ぐらいだった。
「エドワード…」
なぜだか昔の戦友をレオンは思い出しいたたまれない気持ちになった。

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