我が家の床下で築くハーレム王国

りょう

第112話嘘と本心

 暗い。

 今俺は目を開けているのか眠っているのか分からなくなるくらい、暗かった。

(そうか俺は……)

 確か地震によって崩れた天井に巻き込まれて、そのまま意識を失ったんだった。という事は俺の意識はまだ覚醒していない事になる。

 じゃあ俺は今どうなっているんだ?

 残されたハナティアはどうなったんだ?

 色々な事が頭の中を巡る。もしあの後も同じように地震が起きたのなら、今度はハナティアの身も危ない。

 なら早く体を動かして、ハナティアを……。

「ハナティア!」

 俺の意識は彼女の名前を呼ぶとともに覚醒する。しかし俺が目を覚ましたのは、儀式を行っていたあの場所ではなく、いつもの俺の部屋。そこにはハナティアの姿もなかった。

「俺いつの間に戻って……」

 現場を確認しようと、体を動かそうとするが同時に激痛が走り、体を動かす事はおろか、布団から起き上がることすらできない。

(骨折れたのか? いやそれよりもハナティアを……)

 なんとか体を動かそうとしていると、部屋の扉が開かれ誰かが入ってくる。

「翔平!」

 入ってきたのはハナティアだった。

「ハナティア、良かったお前は無事で……」

 だが無事だった事にホッとするのも束の間、俺は彼女の所々に巻かれた包帯を見てその言葉をすぐに止めた。

「やっぱり無傷じゃなかったのか……」

「ごめん、私もあの後すぐに巻き込まれちゃって……」

 俺ほど重傷ではないものの、怪我はしてしまったらしい。ただ、怪我以上に俺は心配になった事があった。

「お腹の子供は大丈夫、なのか?」

 それは彼女が身篭った子供の事だった。

「サクヤに診てもらったけど、今のところは大丈夫だって」

「今のところはって、じゃあもしかしたら危険な可能性もあるのか?」

「それは……まだ分からないよ」

 ただでさえ子供を生む事自体が危険だと言われているのに、このままもし何かあって子供が生まれなくて、更にハナティアにも何かあってしまったら俺はどうすればいいのか分からない。

「それよりも今は翔平の事の方が心配だよ」

「俺?」

「だって今の体のままだと翔平、結婚式に出られないよ?」

「あ……」

 けどその不安よりも先解決しなければならないのが、今月の末に控えている結婚式の事だった。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 サクヤ曰く、俺の怪我は骨折にまでは至らなかったの、しばらくは絶対安静にしてなくてはならないらしい。

「瓦礫に埋もれた翔平様を見つけた時は、流石にもう駄目かと思いましたよ。よくこの程度の怪我で済みましたね」

「骨折とかは確実にしていると思っていたけど、それすらないって逆に怖いな」

「何か奇跡でも起きたのでしょうか」

「奇跡、ねえ」

 そんな奇跡がもしも起きていたなら、あの時の事故の時に起きて欲しかったと思ってしまう。そうすれば誰だって苦しまずに済んだのだから。

「とは言えこのままだと結婚式には練習もできないまま参加する事になりそうですね」

「それはできるだけ勘弁したいな。俺もなるべく体を早く動かせるように頑張るよ」

 そこまで言ったところで俺はふと事故の前の事を思い出す。ちゃんとしたハナティアの言葉を聞く前に地震が起きたから聞きそびれたけど、そう言えばハナティアはあの時……。

「なあサクヤ、その結婚式なんだけどさ」

「どうかされましたか?」

「ハナティアが執り行う気がないみたいなんだけど、どう思う?」

「それはどういう事ですか?」

 俺はハナティアから感じた違和感と、あの時の言葉についてサクヤに説明する。
 演説の一件以降、ずっとうやむやになっていたハナティアの本当の気持ち、俺はそれを彼女に直接聞こうとしたがそれは叶わなかった。改めて聞こうにも、多分彼女はその答えを俺には話さない。

 ーーだから俺は不安になっていた。

 ーー子供の事も、結婚の事も。

「翔平様はどう感じましたか。ハナティア様の言葉に対して」

「俺はもしかして本気でそう思っているんじゃないのかなって考えている。でも同時にそれは駄目な事だとも分かっているんだと思う」

 ハナティアがまだ彼女の姉に座を譲るつもりなら、ここで今すぐに挙げる必要だってない。むしろ挙げてしまったらよりこの国から離れる事が難しくなる。
 だから今は挙げずに子供を産んで、この国を出てからどこかでひっそりと挙げるつもりなのかもしれない。
 けどそれは、もう間違った道だって彼女も頭の中では理解している。

 ーー他の誰よりも俺がその事を望んでいないのだと分かっているのだから。

「多分それがハナティアの本音なんだと思う。けどその本音はどうあっても叶えられない」

「ハナティア様はどうしてそこまでして、クレナティア様に王女の座を」

「そこまでは俺には分からないよ。でも俺はそれには賛成できないんだ。あいつはここの王女として立っているからこそ、あいつらしいって思うからさ」

「なら結婚式も」

「勿論行うつもりさ。その為にもまずは、ハナティアにその事を分かってもらはなきゃいけないんだけど」

 それから二週間、俺は体が動かせるようになるまで必死にリハビリを続け結婚式の練習になんとか参加できるようになった。その間ハナティアは俺の看病をしながら、結婚式への準備は進めてくれていたものの、その彼女の本心は掴めずに時間だけが流れていった。

 そして結婚式を三日後に控えたこの日、

「ねえ翔平、やめようか結婚式」

 ついにハナティアがその言葉を発したのだった。

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