我が家の床下で築くハーレム王国
第104話幼馴染みの思い届かず
「ふざけないで!」
全ての幕開けはハナティアのその一言が彼女の部屋の廊下まで響き渡った所からだった。未だにお互い変な空気だけが続き、気がつけば結婚式を挙げる予定になっている十月。
その十月が幕開けで間もない日に、それは起こったのだった。
「どうしたんだよ、大声なんかだして。廊下まで聞こえたぞ」
ハナティアの部屋から廊下まで響き渡る彼女の声。俺は何事かと思い彼女の部屋へ突入した。中にいたのはミルと、それに掴みかかろうとしているハナティア。俺は慌ててそれを止めに入った。
「何しているんだよハナティア」
「そこをどいて翔平。私はミルを許せないの」
「許せないって、ミルが何をしたんだよ」
「翔平だって分かっているでしょ? ミルが話したことについて」
「ミルが?」
思い当たる節は一つある。でもそれって、ハナティア自身も知らない話のような気がするけど、もしかしてそれをミルは話したのか?
「どういう事だよミル。知らないほうが幸せだって言っていたのはお前だろ?なのにどうして話したんだよ」
しかもその内容は、今まで信じてきた全てを裏切る内容だ。ハナティアが怒るのも当然だし、何より親友からそんなこと言われたら誰だって傷つく。
「話す気は本当はなかったんだけど、やっぱりハナちゃんにはちゃんと聞いてほしかったの。残酷すぎるかもしれないけど、でもやっぱりいつかは知らなければならない話なの」
「だからって私がそれを信じると思う?」
「信じないつもりなの?」
「当たり前でしょ。どうして信じなきゃいけないのよこんな事」
当たり前のように言ってのけるハナティア。ハナティア自身からすると、そんなのウソに決まっていると思える話ではあるけど、俺はどちらかというとミルの話を信じていた。
「翔平だってどうして話してくれなかったの? こんな根拠もない話を鵜呑みにしてそれで翔平は納得したの?」
「納得はしてないよ。でも俺はミルが嘘をついているとも思えない」
「まさか翔平は私よりもミルを信じているの?」
「違うそうじゃない。俺はただ……」
それを否定する根拠を持っていない。それはきっとハナティア自身もそうなのだろうけど、それを受け入れたくないだけだと思っている。
受け入れてしまったら今まで頑張ってきたそれは今までの自分の努力をすべて否定する事になるから。それがハナティアは嫌なんだと思う。
(当たり前だよな……)
俺だってこの年にして自分と親が血が繋がっていない事を知らされ、しかももう本当の親はこの世にはいない事も知ってしまった。そんなあり得ないことばかりの話を、信じろ、受け入れろだなんて言われても難しい。
今ハナティアはその状況に立たされている。
「ハナちゃん、確かにこの話は根も葉もない話なのかもしれないし、私もそれを裏付ける証拠もないよ。だけどこれ以上ハナちゃんが苦しむ姿を私は見たくない」
「苦しんでいる? 私が? 何で両親のことで苦しまなきゃいけないの? 見つけるのが当たり前の事なのに」
「だからそれが駄目なの!」
今までにないくらいの声でミルは声をあげるミル。そんな様子にハナティアだけじゃなく俺までもがたじろいでしまう。
「私は……いつまでも縛られ続けるハナちゃんの姿を見続けるのがすごく辛いの。ハナちゃんにはちゃんと幸せになってもらいたいだけ、だから……」
縛られないで
ミルはそう言った。
■□■□■□
それは純粋な幼馴染みとしての思い。王女としてのはへの言葉ではなく、幼馴染みのハナティアへ向けられた言葉。俺はその純粋な思いに感動すら覚えた。
(でもハナティアにとってその純粋な思いは多分……)
「何も分かっていない」
「え?」
「ミルは何も分かっていない!」
余計に彼女を苦しめる。頭では理解していても、ハナティアはそれを拒絶する。
そんな話は嘘だと。
「ここ諦めて本当は生きていたらどうするの? 私を生んでくれた大切な存在なのに、それなのに、諦めるだなんてそんな事は出来ない!」
私は何があっても信じ続けると。
「ミル、翔平、ごめん。しばらく一人にしてほしい」
「え、でも……」
「お願い」
「……分かった。ごめんねハナちゃん」
「謝らないで」
俺とミルはハナティアの言う通りに彼女の部屋を後にする。本来なら俺が側に居るべきなのかもしれないけど、今俺はそれが出来ない。
「ダーリンは残ってあげないの?」
部屋を出てすぐにミルはそう言った。俺はそれには答えずに歩き出す。
「ダーリン?」
「今は一人にしてやった方がいいんだよ。俺がいたら邪魔だろうし」
「邪魔って、ダーリンはハナちゃんの大切な人なんでしょ? 支えてあげなきゃ」
「そんなのは分かってる! だけど」
それをハナティアは望んでいない。今彼女の隣に俺がいても、なにも声をかけてやれない。
でも本当にそれでいいのか?
このまま結婚式まで何も出来ないままでいいのか?
それをハナティアは望んでいるのか?
「ダーリン、ううん、翔平君。ハナちゃんを救えるのは貴方だけなんだよ? 今も、これから先もずっと」
「ミル、お前……」
「だから……だからね、ハナちゃんから離れないであげて」
俺はここ最近ずっと続いていたわだかまりを解消するために、もう一度彼女の部屋へと向かった。
涙を流すミルに背中を押されながら。
全ての幕開けはハナティアのその一言が彼女の部屋の廊下まで響き渡った所からだった。未だにお互い変な空気だけが続き、気がつけば結婚式を挙げる予定になっている十月。
その十月が幕開けで間もない日に、それは起こったのだった。
「どうしたんだよ、大声なんかだして。廊下まで聞こえたぞ」
ハナティアの部屋から廊下まで響き渡る彼女の声。俺は何事かと思い彼女の部屋へ突入した。中にいたのはミルと、それに掴みかかろうとしているハナティア。俺は慌ててそれを止めに入った。
「何しているんだよハナティア」
「そこをどいて翔平。私はミルを許せないの」
「許せないって、ミルが何をしたんだよ」
「翔平だって分かっているでしょ? ミルが話したことについて」
「ミルが?」
思い当たる節は一つある。でもそれって、ハナティア自身も知らない話のような気がするけど、もしかしてそれをミルは話したのか?
「どういう事だよミル。知らないほうが幸せだって言っていたのはお前だろ?なのにどうして話したんだよ」
しかもその内容は、今まで信じてきた全てを裏切る内容だ。ハナティアが怒るのも当然だし、何より親友からそんなこと言われたら誰だって傷つく。
「話す気は本当はなかったんだけど、やっぱりハナちゃんにはちゃんと聞いてほしかったの。残酷すぎるかもしれないけど、でもやっぱりいつかは知らなければならない話なの」
「だからって私がそれを信じると思う?」
「信じないつもりなの?」
「当たり前でしょ。どうして信じなきゃいけないのよこんな事」
当たり前のように言ってのけるハナティア。ハナティア自身からすると、そんなのウソに決まっていると思える話ではあるけど、俺はどちらかというとミルの話を信じていた。
「翔平だってどうして話してくれなかったの? こんな根拠もない話を鵜呑みにしてそれで翔平は納得したの?」
「納得はしてないよ。でも俺はミルが嘘をついているとも思えない」
「まさか翔平は私よりもミルを信じているの?」
「違うそうじゃない。俺はただ……」
それを否定する根拠を持っていない。それはきっとハナティア自身もそうなのだろうけど、それを受け入れたくないだけだと思っている。
受け入れてしまったら今まで頑張ってきたそれは今までの自分の努力をすべて否定する事になるから。それがハナティアは嫌なんだと思う。
(当たり前だよな……)
俺だってこの年にして自分と親が血が繋がっていない事を知らされ、しかももう本当の親はこの世にはいない事も知ってしまった。そんなあり得ないことばかりの話を、信じろ、受け入れろだなんて言われても難しい。
今ハナティアはその状況に立たされている。
「ハナちゃん、確かにこの話は根も葉もない話なのかもしれないし、私もそれを裏付ける証拠もないよ。だけどこれ以上ハナちゃんが苦しむ姿を私は見たくない」
「苦しんでいる? 私が? 何で両親のことで苦しまなきゃいけないの? 見つけるのが当たり前の事なのに」
「だからそれが駄目なの!」
今までにないくらいの声でミルは声をあげるミル。そんな様子にハナティアだけじゃなく俺までもがたじろいでしまう。
「私は……いつまでも縛られ続けるハナちゃんの姿を見続けるのがすごく辛いの。ハナちゃんにはちゃんと幸せになってもらいたいだけ、だから……」
縛られないで
ミルはそう言った。
■□■□■□
それは純粋な幼馴染みとしての思い。王女としてのはへの言葉ではなく、幼馴染みのハナティアへ向けられた言葉。俺はその純粋な思いに感動すら覚えた。
(でもハナティアにとってその純粋な思いは多分……)
「何も分かっていない」
「え?」
「ミルは何も分かっていない!」
余計に彼女を苦しめる。頭では理解していても、ハナティアはそれを拒絶する。
そんな話は嘘だと。
「ここ諦めて本当は生きていたらどうするの? 私を生んでくれた大切な存在なのに、それなのに、諦めるだなんてそんな事は出来ない!」
私は何があっても信じ続けると。
「ミル、翔平、ごめん。しばらく一人にしてほしい」
「え、でも……」
「お願い」
「……分かった。ごめんねハナちゃん」
「謝らないで」
俺とミルはハナティアの言う通りに彼女の部屋を後にする。本来なら俺が側に居るべきなのかもしれないけど、今俺はそれが出来ない。
「ダーリンは残ってあげないの?」
部屋を出てすぐにミルはそう言った。俺はそれには答えずに歩き出す。
「ダーリン?」
「今は一人にしてやった方がいいんだよ。俺がいたら邪魔だろうし」
「邪魔って、ダーリンはハナちゃんの大切な人なんでしょ? 支えてあげなきゃ」
「そんなのは分かってる! だけど」
それをハナティアは望んでいない。今彼女の隣に俺がいても、なにも声をかけてやれない。
でも本当にそれでいいのか?
このまま結婚式まで何も出来ないままでいいのか?
それをハナティアは望んでいるのか?
「ダーリン、ううん、翔平君。ハナちゃんを救えるのは貴方だけなんだよ? 今も、これから先もずっと」
「ミル、お前……」
「だから……だからね、ハナちゃんから離れないであげて」
俺はここ最近ずっと続いていたわだかまりを解消するために、もう一度彼女の部屋へと向かった。
涙を流すミルに背中を押されながら。
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