我が家の床下で築くハーレム王国
第41話責任の矛先
「とりあえず理由を聞かせて欲しいんだけど。どうしてメイドを辞めるだなんて」
「私も身勝手だとは分かっているのですが、どうしてもこうするしかなくて」
「だから何でだって」
何度も尋ねるがサクヤは一向に答えようとしない。このまま理由もなしにいなくだろうなんて、あまりに身勝手すぎると思う。
何よりハナティアが納得しない。
「どうしても答えられないのか?」
「本来ならお話しするべきことなのだと分かっています。しかし今、これを翔平様に話すはおろか、ハナティア様に話してしまったら……」
「馬鹿サクヤ! 私に何も話さないで……何勝手に出て行こうとしているのよ」
ハナティアの大きな声が響き渡る。声がした方を向くと、息を切らしながら少し遠くにいるハナティアの姿があった。
「ハナティア様、どうしてここに」
ハナティアの登場に驚くサクヤ。本当にハナティアに黙って行くつもりだったのかよ……。
「どうしても何も……キャロルから聞いたのよ…どうしてそんな大事な話……私に黙っていたのよ」
「どうお話しすれば良いのか分からなくて」
「なあその大事な話って、結局何なんだよ」
話が盛り上がる中、一人置いてきぼりの俺は、二人に尋ねる。
「サクヤはこれから、トリナディアの為に別の地下の王国に一人で向かおうとしているの」
「別の地下の王国?」
トリナディア以外にももしかしたら同じように地下の王国があるのではないかと思ってはいたけど、やはり存在はするらしい。ただ、そこに何故サクヤが向かおうとしているのかは分からない。
「ハナティア様、自分の身勝手な事をお許しください。こうするしかないのです」
「こうするも何も、あなたが責任を取る必要なんてどこにもないのに」
「いえ、これは私だけの責任なんです。だからどうかご許しを」
「馬鹿サクヤ! どうして分からないのよ」
一向に話が読めないまま、二人の言い争いだけが続いていく。俺はそれをただ見ている事しかできない。
「二十年前のあの事故は私がもっとしっかりしていれば起きることはなかったんです。そうすればあちらの国の方にも迷惑をかけることもなかったし、トリナディアはもっと繁栄していたんです。だから私に全ての責任があります」
「だからどうしてそうなるのよ! あなたはあの時、私から絶対に離れないって約束したでしょ」
「っ! そ、それは……」
どうやらサクヤの事情というのは二十年前の例の事故と何か深い関わりがあるらしい。
「とにかく私の許可なしにそんな事をするのは絶対駄目なの! 翔平はいるけど、私にとってサクヤも同じくらい大切なんだから」
「ハナティア様……」
「私、今あなたが居なくなったら絶対に許さないから!」
「だからハナティア様の耳に通るのが嫌だったんですよ。絶対に私の決心が揺らぐと思ったから」
サクヤがボソリとそんな事を言う
(まあ簡単に離れるなんてできないよな)
俺が考えている以上に二人は長い時間を過ごしている。長い時間一緒だったからこそ、簡単に離れるのは難しいに違いない。そう、サクヤの決心が簡単に揺らいでしまうくらいに。
「分かりました。今回の話は忘れてくださいハナティア様。私も簡単に離れませんから」
「約束よ、絶対に」
「はい。お騒がせしてすいませんでした」
俺とハナティアに向けて頭を下げるサクヤ。大きな話になると思ったが、どうやらこの話はここで解決したらしい。でもどうしてサクヤは急にこんな事を……。
(地下にある二つの国か……)
俺が考えている以上にこの世界は広いのかもしれない。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「セレスティアナ王国?」
「そう。サクヤは今日からそこに行こうとしていたの」
その日の晩、家に帰るとハナティアが居たので、今日の事を詳しく聞く事にした。
「話ではそこと二十年前の事故が関係あるみたいだったけど」
「詳しくはあまり私も話せないんだけど、トリナディアとセレスティアナは昔から仲は良くないの」
「同じ地下にあるのにか?」
「うん。その因縁がどこにあるかは分からないけど、その関係が今でも続いているのは確かなの」
「因縁……か」
サクヤはその因縁を絶つために今回のような行動を取ったのだろうか。
「サクヤは昔からずっと私以上に国の事を考えているの。それがたとえ自分の身がどうにかなるような事があったとしても」
「何でそこまでしてまでもサクヤは……」
「その根本にあるのはきっと二十年前の事件が関係しているの。本来あの事件は私があんな事を言いださなければ起きる事はなかったの。だからそれは私が取るべき責任なんだけど、私を見守る役目であるサクヤに責任が飛び火しちゃっって」
「子が起こした事は親の責任みたいなものか……」
二十年前、もし儀式がうまく行っていたらきっと今のトリナディアは変わっていたのかもしれない。サクヤは恐らくそう考えているのかもしれない。
ただ、その責任は決して誰のせいでもないはずだ。誰かに責任を押し付けても本当は意味はないのに。
(俺に何かできればいいんだけど……)
果たしてあるのか、それは分からない。
「何か色々複雑なんだな」
「これからはもっと複雑になると思うけどね私は」
「それはどういう意味?」
「特に意味なんか無いわよ。ただ、そう思っただけ」
「ふーん」
トリナディアとセレスティアナの事情は、この後にまた色々知る事になるのだが、それはまた別の話。とりあえず今はサクヤがいなくなる事がなくなったので、素直に喜んでおこう。
「あ、そうだ翔平。今月のどこかで翔平の家に帰らない?」
「俺の家に? どうしてまた」
「翔平のお母さんに話したい事が個人的にあるの」
「俺の母ちゃんに?」
「うん」
何やら意味ありげな言い方をしていたので、俺はこの日から二週間後の七月下旬。夏休みを直前に控えて再び実家に帰宅する事になったのだが……。
「翔平を、私の婿にください!」
まさかあんな話になるなんてこの時は考えてもいなかった。
「私も身勝手だとは分かっているのですが、どうしてもこうするしかなくて」
「だから何でだって」
何度も尋ねるがサクヤは一向に答えようとしない。このまま理由もなしにいなくだろうなんて、あまりに身勝手すぎると思う。
何よりハナティアが納得しない。
「どうしても答えられないのか?」
「本来ならお話しするべきことなのだと分かっています。しかし今、これを翔平様に話すはおろか、ハナティア様に話してしまったら……」
「馬鹿サクヤ! 私に何も話さないで……何勝手に出て行こうとしているのよ」
ハナティアの大きな声が響き渡る。声がした方を向くと、息を切らしながら少し遠くにいるハナティアの姿があった。
「ハナティア様、どうしてここに」
ハナティアの登場に驚くサクヤ。本当にハナティアに黙って行くつもりだったのかよ……。
「どうしても何も……キャロルから聞いたのよ…どうしてそんな大事な話……私に黙っていたのよ」
「どうお話しすれば良いのか分からなくて」
「なあその大事な話って、結局何なんだよ」
話が盛り上がる中、一人置いてきぼりの俺は、二人に尋ねる。
「サクヤはこれから、トリナディアの為に別の地下の王国に一人で向かおうとしているの」
「別の地下の王国?」
トリナディア以外にももしかしたら同じように地下の王国があるのではないかと思ってはいたけど、やはり存在はするらしい。ただ、そこに何故サクヤが向かおうとしているのかは分からない。
「ハナティア様、自分の身勝手な事をお許しください。こうするしかないのです」
「こうするも何も、あなたが責任を取る必要なんてどこにもないのに」
「いえ、これは私だけの責任なんです。だからどうかご許しを」
「馬鹿サクヤ! どうして分からないのよ」
一向に話が読めないまま、二人の言い争いだけが続いていく。俺はそれをただ見ている事しかできない。
「二十年前のあの事故は私がもっとしっかりしていれば起きることはなかったんです。そうすればあちらの国の方にも迷惑をかけることもなかったし、トリナディアはもっと繁栄していたんです。だから私に全ての責任があります」
「だからどうしてそうなるのよ! あなたはあの時、私から絶対に離れないって約束したでしょ」
「っ! そ、それは……」
どうやらサクヤの事情というのは二十年前の例の事故と何か深い関わりがあるらしい。
「とにかく私の許可なしにそんな事をするのは絶対駄目なの! 翔平はいるけど、私にとってサクヤも同じくらい大切なんだから」
「ハナティア様……」
「私、今あなたが居なくなったら絶対に許さないから!」
「だからハナティア様の耳に通るのが嫌だったんですよ。絶対に私の決心が揺らぐと思ったから」
サクヤがボソリとそんな事を言う
(まあ簡単に離れるなんてできないよな)
俺が考えている以上に二人は長い時間を過ごしている。長い時間一緒だったからこそ、簡単に離れるのは難しいに違いない。そう、サクヤの決心が簡単に揺らいでしまうくらいに。
「分かりました。今回の話は忘れてくださいハナティア様。私も簡単に離れませんから」
「約束よ、絶対に」
「はい。お騒がせしてすいませんでした」
俺とハナティアに向けて頭を下げるサクヤ。大きな話になると思ったが、どうやらこの話はここで解決したらしい。でもどうしてサクヤは急にこんな事を……。
(地下にある二つの国か……)
俺が考えている以上にこの世界は広いのかもしれない。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「セレスティアナ王国?」
「そう。サクヤは今日からそこに行こうとしていたの」
その日の晩、家に帰るとハナティアが居たので、今日の事を詳しく聞く事にした。
「話ではそこと二十年前の事故が関係あるみたいだったけど」
「詳しくはあまり私も話せないんだけど、トリナディアとセレスティアナは昔から仲は良くないの」
「同じ地下にあるのにか?」
「うん。その因縁がどこにあるかは分からないけど、その関係が今でも続いているのは確かなの」
「因縁……か」
サクヤはその因縁を絶つために今回のような行動を取ったのだろうか。
「サクヤは昔からずっと私以上に国の事を考えているの。それがたとえ自分の身がどうにかなるような事があったとしても」
「何でそこまでしてまでもサクヤは……」
「その根本にあるのはきっと二十年前の事件が関係しているの。本来あの事件は私があんな事を言いださなければ起きる事はなかったの。だからそれは私が取るべき責任なんだけど、私を見守る役目であるサクヤに責任が飛び火しちゃっって」
「子が起こした事は親の責任みたいなものか……」
二十年前、もし儀式がうまく行っていたらきっと今のトリナディアは変わっていたのかもしれない。サクヤは恐らくそう考えているのかもしれない。
ただ、その責任は決して誰のせいでもないはずだ。誰かに責任を押し付けても本当は意味はないのに。
(俺に何かできればいいんだけど……)
果たしてあるのか、それは分からない。
「何か色々複雑なんだな」
「これからはもっと複雑になると思うけどね私は」
「それはどういう意味?」
「特に意味なんか無いわよ。ただ、そう思っただけ」
「ふーん」
トリナディアとセレスティアナの事情は、この後にまた色々知る事になるのだが、それはまた別の話。とりあえず今はサクヤがいなくなる事がなくなったので、素直に喜んでおこう。
「あ、そうだ翔平。今月のどこかで翔平の家に帰らない?」
「俺の家に? どうしてまた」
「翔平のお母さんに話したい事が個人的にあるの」
「俺の母ちゃんに?」
「うん」
何やら意味ありげな言い方をしていたので、俺はこの日から二週間後の七月下旬。夏休みを直前に控えて再び実家に帰宅する事になったのだが……。
「翔平を、私の婿にください!」
まさかあんな話になるなんてこの時は考えてもいなかった。
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