我が家の床下で築くハーレム王国

りょう

第61話温泉トーク2 親友編

 実物大でのボードゲームの疲れを取るために、一旦休憩を挟む事になり、正志と雪音は大浴場で汗を流す事になった。

「お前は別に汗かいてないんだから、入らなくていいだろ?」

「いやぁ、ハナティアも入るって言ったから俺も入ろうかなって思って」

「何だよそれ」

 トリナディアの大浴場は、やはり城の中にあるものだからなのかかなりの広さを誇っていた。こういう風呂って、貴族の人達が入ったりするものだから、何というか俺達には似合わない気もする。

「いいよな翔平は。これから毎日この風呂に入れるんだから」

「別にいい事なんかないよ。こんな広い風呂に一人きりは似合わないし」

「まあ、俺でもそれは嫌だな。こんなに広い風呂で一人なんて」

 湯船でくつろぎながら、俺は目を閉じる。俺は先程の事がずっと頭の中から抜けなかった。クレナティアさんも悪気があったわけではないだろうけど、それでも俺の中には一種のしこりが残っていた。

(ハナティアや雪音もそうだけど、何で皆そんなに俺の話を避けようとするんだろ)

 クレナティアさんは言っていた。誰に聞いても同じように答えてくれないと。

(俺に何が足りないんだ……)

 分からない。俺に何が足りないのか。覚悟も決断もできているのに、それなのにどうして……。

「それで翔平、何か悩んでいるみたいだけど何かあったのか?」

「何かって?」

「お前さっき二時間くらい帰ってこなかっただろ? コンビニに買い物に行くにしても不自然すぎる。何かあったのか気になっでさ」

「やっぱり不自然すぎか」

 コンビニで誤魔化すのには限度があるのは分かっていたけど、どうやら正志には見抜かれていたらしい。

「実はコンビニに行った時に、ある人に出会ったんだよ。それで少し話をしていたら、こんな時間になっていたんだ」

「そのある人ってのは?」

「詳しくは言えないけど、最低限ハナティアには関係している」

「そんな人と接点があるお前も意外だな」

「以前に一度だけ会ったことがあるんだよ、その人と」

 まさかそれがハナティアの姉だとはその時は思ってもいなかった。たった一言会話しただけなのに、それがまさか今日みたいな形になるなんて、考えられなかった。

「それでその人と、色々話してさ。さっきから俺はその事ばかり考えていた」

「なるほどな。それをハナティアちゃん本人には言ったのか?」

「今すぐには言えないかな。その時が来れば話すとは思う」

「それって本人のためになるのか?」

「それは分からない。でも今のままでいる事をあっちは多分望んでいるだろうし、こっちから下手に動く必要はないと思う」

 クレナティアさんの勘違いは解けたものの、そこからどうなっていくのかは本人達次第になるとは思う。ましてや近くに住んでいるのだから、いつかはその時が来るのではないかと思ってもいる。

「そうは言っても、お前ハナティアちゃんの気持ちは考えたのか?」

「ハナティアの気持ち?」

「ハナティアちゃんに関係しているなら、少なからずハナティアちゃんもその人の事を考えているんだろ? それって俺の予想では姉妹とかじゃないのか?」

「相変わらず鋭いな、お前」

 高校生の時からそうだが、正志に隠し事をするのってなかなか難しかった。こう見えて意外と鋭いところが多くて、簡単に見抜かれてしまう。

「お前が分かりやすいんだよ。というか普通に考えれば分かる」

「ただ、この事はハナティアには」

「分かっているよ。それにしてもまさかハナティアちゃんが姉妹だったとはな」

「いるのは姉の方なんだ。ただ事情があって二人は別々に暮らしているんだ」

「事情ねえ。それでお前はそのお姉さんと話をしたのか」

「ああ。まさかあんな近くで会うとは思っていなかった。ハナティア自身は会いたがってすらいるんだけど、どうもお姉さん側がそれを避けているみたいなんだ」

「それをお前は何とかしようとは考えなかったのか?」

「考えたさ。でもその結果、さっきの結論に至ったんだ」

 ハナティアには申し訳ないとは思っている。でももし俺が変に動いたら、余計な迷惑をかけてしまうかもしれない。何て言ったってクレナティアさんは勘当されている身なのだから。まだ詳しく事情を知らない俺が、とやかく口を出すような問題ではない。

「もし叶えられるなら、叶えてやりたいさ。でも俺には」

「それを無理やりにでも叶えるのが、お前の役目じゃないのか?」

「それは……」

「本気で好きになったなら、それくらいの事をしてやれ。迷惑やそんなのは考えずに、お前が思った事をすればいいと俺は思う」

「正志……」

「これからお前は家族になるんだろ? しっかりしろ!」

 背中を正志に叩かれる。

「俺のやりたい事を……か。考えてみるよ」

「そうさ、それでいい」

「ところで正志は、いつになったら彼女を作るだ?」

「余計な御世話だ、馬鹿!」

 その後俺と正志は、風呂を出るまでの間ずっと馬鹿みたいな話をしていた。それぞれどんな将来を思い描くかとか、子供につける名前とか。男の会話としては何だか微妙だか、それでも俺はそんな時間が楽しくてたまらなかった。

(本当いい友達を持ったよな俺も)

 正志と雪音、二人は俺にとってかけがえのないもの。だからこそ別れは辛いし、二人も同じ思いなのも分かっている。もし叶うなら、何年経って、会えなくても親友であり続けたい。

「正志」

「何だよ」

「俺お前の友達でよかったわ」

「馬鹿野郎、そう思うならな」

「分かってるよ。だからすぐに許さなくたっていいよ」

 正志達がどう思うかは分からないけど、俺はそれだけは信じ続けていたい。

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