我が家の床下で築くハーレム王国
第43話君と歩む未来 後編
「確かに母さんの言う通り、トリナディアは地下にあるから危険だって見に潜んでいる。でもそこに俺を向かわせるように仕向けたのは母さん達じゃないか」
「それはあなたの失っていた記憶を取り戻してほしかったから。ハナティアちゃんがあなたに会いたがっていたし」
「でも仕向けたのは、ハナティア達を信じていたからだろ?」
「それは……」
ハナティアの本気の気持ちは、彼女の隣で三ヶ月一緒にいた俺だからこそ理解できる。ハナティアは少なくとすもトリナディアからは逃げようとしていない。彼女はこの国の王女として、未来を見据えている。
(だから俺も……)
「正直俺もまだ……結婚を受け入れるかは迷っている節がある。でも仮に俺がトリナディアでの暮らしを決めるとしたら、ハナティアのプロポーズを受けたい」
「翔平、それは本当なの?」
「ああ。この前の温泉旅行の時からずっと考えていたんだ。でもやっと、今日気持ちが決まった」
「私……嬉しい」
「まあ、まだ確定したわけじゃないけどな」
「意地悪ね、うちの息子は本当」
母親が口を挟む。そして溜息を一つ付いた後、諦めたかのようにこう言った。
「翔平、今の言葉に偽りはないのよね?」
「ああ。母さんや父さんが不安な気持ちも分かる。だけど俺はそれ以上にハナティアを信じるって決めた。そして俺はその力になりたい」
「はぁ……。あなたがそこまで言うとは思わなかったわ。ハナティアちゃんも約束、守れるわよね?」
「はい! 私……絶対にトリナディアを変えてみせます!」
その決断は小さなものだったかもしれない。けれど、それは大きな一歩になる。俺はそれを彼女の隣で見届けて、そして力になりたい。
「翔平、しっかりしなさいよ。浮気なんかしたら許さないからね」
「そんな事しないよ、俺は」
「まあ本来こういう話は翔平が相手方にするものなんだけど、事情が事情だし仕方ないわね。どうせすぐの話ではないし、私は許してあげるわ、ハナティアちゃん」
「本当……ですか?」
「ええ。ただし、二ヶ月後に少しでも翔平の気持ちがブレてたら、この話はなし。その気持ちを貫きなさい」
「……はい!」
「それはあなたもだからね、翔平」
「ああ」
俺はこの話が終わった後にふと思った。母親は元々俺達の事を許すつもりだったのではないのかと。普通ならこの話は簡単に決着がつくわけがないし、ハナティアのお腹に命が芽生えた時にも責任を取って育てなさいと背中を押してくれた。
(だから母さんはきっと……)
俺達の気持ちを確かめようとしただけなのだと思う。柚姉を亡くしたからこそ、それに負けないくらいの想いがあるのかを確かめようとした。
(親の心子知らず、とは正にこれが)
改めて感謝したほうがいいかもな。
■□■□■□
この話は一旦ここで終わりを迎え、俺とハナティアはそのまま我が家に一泊する事になった。
「こ、これは」
「ごゆっくり、お二人さん」
夕飯も食べ終え、お風呂など全て終わらせ、二人で俺の部屋に。
「そういえばさ、ハナティアのそのパジャマどうしたんだ? 家にあったものじゃないし」
「最近買ったの。多分今日お泊りになるんじゃないかと思って」
「そこまで考えていたのかよ」
ハナティアが着ているのは水色の水玉模様が入ったパジャマ。どこにでも売ってそうなパジャマだけど、何故かハナティアが着ると可愛らしく見える。
「というか少しはだけてるけど、それはわざとか?」
「うん、わざと。これで翔平を」
「待った、それ以上は言うな」
何を言おうとしているのか分かっているので止める。なにぶんこの状況でそんな事を言われたら、俺からしたらたまったものじゃない。
「何でよりによって布団一枚なんだよ」
既に布団は敷いてあるのだが、何故か一枚のみ。空き部屋がないのでハナティアも俺の部屋で寝る事になったのだけど、これだといかにも……。
「布団一枚だなんて、翔平のお母さんも粋な計らいをするね」
「俺からしたら迷惑なんだけどな」
「私と一緒に寝るの、嫌?」
「ぐはぁ」
何とも破壊力抜群のセリフを普通に言ってのけるハナティア。俺は卒倒しそうになったが、それを何とか堪える。
「どうしたのよ翔平。今までなんども一緒に寝てきたのに」
「そ、それはそうだけどさ」
ハナティアの事を意識し始めてしまったら、こういうシチュエーションは改めて恥ずかしくなる。ハナティアは慣れているからか、何の抵抗もなく布団に。俺も恐る恐るながら彼女が入っている布団に入る事に。
「というかドストレートすぎるよ母さん」
「何言っているの?」
「いや、何でも。電気消すか」
「あ、ちょっと待って」
あまりに恥ずかしくなったので、明かりを消そうとするとハナティアに止められてしまう。
「な、何だよ。寝たくないのか?」
「違うの。寝る前にちょっとだけ話がしたくて」
「寝ながらじゃ駄目なのか?」
「疲れてるから途中で寝ちゃうかもしれないし、多分少しだけ長い話になると思うから」
「……分かった」
俺は一度布団から出て近くの椅子に座る。ハナティアも布団に座り込んだ。
「今日はありがとうね、翔平」
「何だよ改まって」
しばらくしてハナティアが喋ったのは、お礼の言葉だった。
「何というか、その、私だけだったら説得できないかもしれなかったから、お礼を言いたかったの」
「まあ、母さんの言っていた事も正論ではあるからな」
「柚お姉ちゃんの事は私達の責任だから何も言えなかったの。トリナディアで過ごす事が危険なのも分かっていた」
「でもお前はそれを変えようとしているんだ。だったら何も迷う必要なんてないだろ?」
「そうだけど。ほら、翔平に今日何を話すかすら教えてなかったし」
「まあれは驚かされたな。まさか母さんにあんな頼み方をするなんて思っていなかった。というかそういう役目は、普通男の俺がする事だし」
「ごめんね。それは……多分できないから」
「そういえば……」
この四ヶ月近くあまり触れていなかった事がある。それが彼女の両親の話。この城にいない事で色々察しはついているんだけど、ハナティア自身からその詳しい話は聞いていない。というか俺自身も聞けなかった。
(聞いたらマズそうな話だしな)
サクヤも一言も言わない辺りは、やはり禁句なのかもしれない。
「まだ何も私翔平に話をできてないもんね。どうして私の両親がトリナディアにいないのか、を」
「それって考えなくても俺は分かっていたけど、それとは違うのか?」
「翔平の考えている事は間違っていないと思う。だけど、それ以上の事をまだ私は話せてない」
「それ以上の……事?」
何かまだ知らない事が、俺にはあるのか?
「これは私の事であり、トリナディアにも関係する事。だから翔平にはしっかり聞いて欲しいの」
そう前置きを置くと、ハナティアは語り始めた。
「それはあなたの失っていた記憶を取り戻してほしかったから。ハナティアちゃんがあなたに会いたがっていたし」
「でも仕向けたのは、ハナティア達を信じていたからだろ?」
「それは……」
ハナティアの本気の気持ちは、彼女の隣で三ヶ月一緒にいた俺だからこそ理解できる。ハナティアは少なくとすもトリナディアからは逃げようとしていない。彼女はこの国の王女として、未来を見据えている。
(だから俺も……)
「正直俺もまだ……結婚を受け入れるかは迷っている節がある。でも仮に俺がトリナディアでの暮らしを決めるとしたら、ハナティアのプロポーズを受けたい」
「翔平、それは本当なの?」
「ああ。この前の温泉旅行の時からずっと考えていたんだ。でもやっと、今日気持ちが決まった」
「私……嬉しい」
「まあ、まだ確定したわけじゃないけどな」
「意地悪ね、うちの息子は本当」
母親が口を挟む。そして溜息を一つ付いた後、諦めたかのようにこう言った。
「翔平、今の言葉に偽りはないのよね?」
「ああ。母さんや父さんが不安な気持ちも分かる。だけど俺はそれ以上にハナティアを信じるって決めた。そして俺はその力になりたい」
「はぁ……。あなたがそこまで言うとは思わなかったわ。ハナティアちゃんも約束、守れるわよね?」
「はい! 私……絶対にトリナディアを変えてみせます!」
その決断は小さなものだったかもしれない。けれど、それは大きな一歩になる。俺はそれを彼女の隣で見届けて、そして力になりたい。
「翔平、しっかりしなさいよ。浮気なんかしたら許さないからね」
「そんな事しないよ、俺は」
「まあ本来こういう話は翔平が相手方にするものなんだけど、事情が事情だし仕方ないわね。どうせすぐの話ではないし、私は許してあげるわ、ハナティアちゃん」
「本当……ですか?」
「ええ。ただし、二ヶ月後に少しでも翔平の気持ちがブレてたら、この話はなし。その気持ちを貫きなさい」
「……はい!」
「それはあなたもだからね、翔平」
「ああ」
俺はこの話が終わった後にふと思った。母親は元々俺達の事を許すつもりだったのではないのかと。普通ならこの話は簡単に決着がつくわけがないし、ハナティアのお腹に命が芽生えた時にも責任を取って育てなさいと背中を押してくれた。
(だから母さんはきっと……)
俺達の気持ちを確かめようとしただけなのだと思う。柚姉を亡くしたからこそ、それに負けないくらいの想いがあるのかを確かめようとした。
(親の心子知らず、とは正にこれが)
改めて感謝したほうがいいかもな。
■□■□■□
この話は一旦ここで終わりを迎え、俺とハナティアはそのまま我が家に一泊する事になった。
「こ、これは」
「ごゆっくり、お二人さん」
夕飯も食べ終え、お風呂など全て終わらせ、二人で俺の部屋に。
「そういえばさ、ハナティアのそのパジャマどうしたんだ? 家にあったものじゃないし」
「最近買ったの。多分今日お泊りになるんじゃないかと思って」
「そこまで考えていたのかよ」
ハナティアが着ているのは水色の水玉模様が入ったパジャマ。どこにでも売ってそうなパジャマだけど、何故かハナティアが着ると可愛らしく見える。
「というか少しはだけてるけど、それはわざとか?」
「うん、わざと。これで翔平を」
「待った、それ以上は言うな」
何を言おうとしているのか分かっているので止める。なにぶんこの状況でそんな事を言われたら、俺からしたらたまったものじゃない。
「何でよりによって布団一枚なんだよ」
既に布団は敷いてあるのだが、何故か一枚のみ。空き部屋がないのでハナティアも俺の部屋で寝る事になったのだけど、これだといかにも……。
「布団一枚だなんて、翔平のお母さんも粋な計らいをするね」
「俺からしたら迷惑なんだけどな」
「私と一緒に寝るの、嫌?」
「ぐはぁ」
何とも破壊力抜群のセリフを普通に言ってのけるハナティア。俺は卒倒しそうになったが、それを何とか堪える。
「どうしたのよ翔平。今までなんども一緒に寝てきたのに」
「そ、それはそうだけどさ」
ハナティアの事を意識し始めてしまったら、こういうシチュエーションは改めて恥ずかしくなる。ハナティアは慣れているからか、何の抵抗もなく布団に。俺も恐る恐るながら彼女が入っている布団に入る事に。
「というかドストレートすぎるよ母さん」
「何言っているの?」
「いや、何でも。電気消すか」
「あ、ちょっと待って」
あまりに恥ずかしくなったので、明かりを消そうとするとハナティアに止められてしまう。
「な、何だよ。寝たくないのか?」
「違うの。寝る前にちょっとだけ話がしたくて」
「寝ながらじゃ駄目なのか?」
「疲れてるから途中で寝ちゃうかもしれないし、多分少しだけ長い話になると思うから」
「……分かった」
俺は一度布団から出て近くの椅子に座る。ハナティアも布団に座り込んだ。
「今日はありがとうね、翔平」
「何だよ改まって」
しばらくしてハナティアが喋ったのは、お礼の言葉だった。
「何というか、その、私だけだったら説得できないかもしれなかったから、お礼を言いたかったの」
「まあ、母さんの言っていた事も正論ではあるからな」
「柚お姉ちゃんの事は私達の責任だから何も言えなかったの。トリナディアで過ごす事が危険なのも分かっていた」
「でもお前はそれを変えようとしているんだ。だったら何も迷う必要なんてないだろ?」
「そうだけど。ほら、翔平に今日何を話すかすら教えてなかったし」
「まあれは驚かされたな。まさか母さんにあんな頼み方をするなんて思っていなかった。というかそういう役目は、普通男の俺がする事だし」
「ごめんね。それは……多分できないから」
「そういえば……」
この四ヶ月近くあまり触れていなかった事がある。それが彼女の両親の話。この城にいない事で色々察しはついているんだけど、ハナティア自身からその詳しい話は聞いていない。というか俺自身も聞けなかった。
(聞いたらマズそうな話だしな)
サクヤも一言も言わない辺りは、やはり禁句なのかもしれない。
「まだ何も私翔平に話をできてないもんね。どうして私の両親がトリナディアにいないのか、を」
「それって考えなくても俺は分かっていたけど、それとは違うのか?」
「翔平の考えている事は間違っていないと思う。だけど、それ以上の事をまだ私は話せてない」
「それ以上の……事?」
何かまだ知らない事が、俺にはあるのか?
「これは私の事であり、トリナディアにも関係する事。だから翔平にはしっかり聞いて欲しいの」
そう前置きを置くと、ハナティアは語り始めた。
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