我が家の床下で築くハーレム王国

りょう

第10話近づく限界

 二日目の朝、目を覚ますと既に起きていたハナティアがジッと俺の顔を見ていた。

「どうした?」

「え、あ、何でもない。おはよう翔平。眠れた?」

「おはよう。あまり寝心地はよくなかったかな」

「やっぱりそうよね……」

 俺は体を起こして、大きく背伸びをする。まさかこんな洞窟で朝を迎える事になるとは思っていなかったけど、何とか二日目を迎えることができた事に少しだけ安堵感を覚える。

「そういえば翔平、今日なんだけど、私足少しだけ痛みが引いたから、先に進んでみない?」

「大丈夫なのか? あまり無理はさせたくないんだけど」

「心配しなくて大丈夫。いつまでもここににいる方がかえって辛いから」

「それはそうだけどさ」

 それでも彼女が辛いのを我慢しているのは承知済み。何せ昨日はまともな食事も取れていないし、洞窟なので酸素も多いわけではない。本来なら動くのもやっとだというのに、どうしてそこまでして無理をするのだろうか。

(でも言っても聞いてくれなさそうだし)

「本当に無理そうだったら言えよ」

「分かってる」

 少し気は乗らないが、ここから移動する事を決める。ハナティアが無理しているのは当然分かっているけど、いつまでもここにいるわけにもいかなかったのもまた事実で、

「はぁ……はぁ……」

「大丈夫か? 辛くなったら言えよ」

「うん、ありがとう」

 息を切らしながらも進むハナティアを気にしながら、俺達は少しずつ洞窟内を進んでいく。
 時間をかけながらも、確実に進んでいった甲斐もあってか、道中に自然でできた水飲み場らしきものを発見。お互い疲労も溜まってきたので、そこで休憩を取る事にした。

「まさかこんな所に自然の水飲み場があるなんてな。いい休憩場になるなここ」

「一口飲んでみたけど、とりあえず……飲めそうだし水分補給もできるから、結構楽かも」

「お前の足の怪我も冷やせそうだし、助かったよ」

 約一日ぶりの水分補給に、しばらく喉を潤す俺とハナティア。これじゃあまるで、ゴールデンウィークというよりサバイバルウィークだな。

「ぶはぁ。こんなに水がおいしく感じたのは、初めてだ」

「私も。やっぱり自然は大切にしないとね」

「そうだな」

 思わぬ休憩スポットに、少しだけ元気が戻る。水飲み場なだけあって空気が少し冷えていて、ここまで進んできた道よりも過ごしやすい。

「それにしてもかなり深いなこの洞窟。どれだけあるんだろう」

「地図にも出てないくらいだから、相当なんじゃないかしら。二時間歩いてもこれなんだし」

「そうかもしれないな。となると、誰かが助けに来てくれても合流は難しいかもな」

「そうでもないわよ。ここまで一本道なんだし」

 でもその一本道の途中が崩れてしまっている以上、まずここに人がやってくることも出来ない。だから救出がいつ来るのかさえ分からない状況だった。

「あの瓦礫をどうにかして崩せれば、人が来れそうだけど、見た感じあれを崩したら他も崩れそうよね」

「それが一番危険なのかもな」

 時間が経つにつれ、募る不安。それでも諦めてしまったら何も意味がない。特にハナティアが一番辛いのだから、男の俺が諦めてたら駄目だ。

「でも俺は諦めないからなハナティア」

「それは私もよ翔平」

 お互い自分を鼓舞するかのように言う。絶対に助けに来てくれる、俺達はただそう信じるしかないかった。

「ところでさ翔平、一つ相談したいんだけど」

「相談?」

「その、水を飲みすぎちゃったから……」

 ハナティアが何やらモジモジしている。その姿が可愛らしかったが、今はそんな事考えている場合じゃない。

「どこかその辺でするしかないな。恥ずかしいけどそっちの方がまだマシだろ?」

「でも翔平の目の前でなんて……」

「いや、どこか見えないところでしてくれ。なぜ近場でしようとするんだ」

「翔平にそういう趣味あるのかなって」

「お前は俺をどれだけ変態扱いする気だ!」

 重かった空気が少しだけ軽くなった。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 一方、その助けに来た組はというと、

「やっぱり大変な事になっていましたね」

「どうするんだこれ」

 翔平達の帰り道を遮った瓦礫の目の前に立っていた。

「こ、ここまで姿を見てないですから、もしかすると翔平君達」

「恐らく向こう側に閉じ込められて、立ち往生しているのかもな」

 それを助けに来たわけだが、彼らの前に立ち塞がるこの瓦礫は、到底人の手ではどうにかなりそうなものではない。となると、どうするべきなのか。

「何かで壊すという手もあるけど、下手に衝撃を与えたら余計悪化するよな」

「この洞窟、かなり古いものですから、何が起きるか分かりませんからね」

「で、でもこのままだと翔平君達は」

「分かっている。何か別の策を探すしかない」

「それなら私に一つ考えがあります」


 十分後、正志達三人は別の洞窟の入り口にやって来ていた。

「これは確信はありませんが、あの洞窟とこの洞窟が繋がっているかもしれないという話を聞いたんです」

 例の洞窟が一本道である以上、何か別の方法を考えなければならないのだが、サクヤは別の洞窟から例の洞窟に入れないかと考えていた。
 例の洞窟が地図上にも存在していない以上、不確かな情報ではあるが、サクヤはそれにかけてみる事にしたのであった。

「準備万端で来ているから心配ないけど、雪音がこういうの苦手なんじゃないのか?」

「だ、大丈夫ですよ。昔はこういう所苦手でしたけどら今は克服しましたから」

「だそうだ」

「それなら安心です。時間もあまり残されていないでしょうし、急ぎましょう」

 サクヤを先頭にし、三人も洞窟の中へと突入する。

「暗いから気をつけろよ雪音」

「は、はい」

 灯りは多少はあるものの、若干薄暗いので歩きづらさはあった。正志は自分も気をつけながらも、雪音も気遣っていた。

(何かいつもこんな感じで、俺達は変わってないよな本当)

 三人が出会った当初の事を正志は思い出す。ほんの些細なキッカケで出会った訳だが、よくここまで続いているなと彼は改めて思う。

「そういえば翔平様も含めて、お三方は長い付き合いみたいですよね」

 歩きながらサクヤがそんな話題を切り出す。何ともジャストなタイミングだが、折角なので質問に答える。

「長いって程ではないけど、もう三年くらいは一緒だよな」

「そうですね。本当は出会う事はなかったかもしれませんけど」

「だな。本当偶然なんだよ」

「へえ、少し興味ありますね。よろしければ聞かせてくれませんか? 旅の一環として」

「まあいいけど。面白いかは保証できないぞ」

「それでも構いませんよ」

「なら少しだけ」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「へえ、翔平って友達多そうだったけど、そうだったんだ」

「う、うるせえ」

 今日はこの休憩ポイントで一日を過ごす事を決め、暇しているとハナティアが、雪音と正志との出会いを教えて欲しいとか言い出した。最初は面倒くさいと思ったけど、少しだけ懐かしい思い出にも浸る事ができた。
 まあ、その結果がこの反応なんだけど。

「つまり友達がいなくて、グループから外れているところを、正志君が話しかけてきてくれたんだ」

「合っているけど、なんかその言い方傷つくからやめてくれ。あと別に高校にはいなかっただけで、中学生まではいたんだからな」

 肝心の内容はというと、今ハナティアが言っていたような感じで合っている(詳しく語ると涙が出そうなので割愛)。
 そこに流れるようにして雪音も入ったのだけれど、本当に偶然なのかと疑ってしまうくらいの出会いだった。

「でも三人ともボッチって悲しくならない?」

「やめてくれ。心の傷をえぐらないでくれ」

 更に黒歴史を思い出させようとする鬼畜姫。も、もうこれ以上は勘弁してもらいたい。

「でもそういうのちょっと羨ましいな。私の友達なんて、あんなの位しかいないから」

「あんなのって、お前キャロルとミウに謝れよ」

「べ、別に悪い意味で言ったんじゃないんだから」

 談笑が続く。でもお互い体力的に限界がきているのは目に見えていた。水でそれなりに潤せたとはいえ、肝心の脱出方法も見つけられていない。おまけに空腹もかなりきている。
 助けを待ったとしても、身体が持つかどうか……。

「なあハナティア、あと何日は体力持ちそうだ?」

「もってあと二日かも。お腹も空いてきているし」

「まあ、そうだよな」

 持ってあと二日。いやそれより短いかもしれない。それまでに何とかしないと、俺のゴールデンウィークが……。

(絶対ここから出ないと……)

「二日、辛いかもしれないけど頑張ってくれよハナティア」

「……うん。でも翔平、助けが間に合わなかったら私……」

「馬鹿、そんな事考えるなよ」

 折角の空気がまた重くなる。こんな時にネガティヴになるのは人間らしいところだけど、落ち込んでいたら余計に辛くなる。

「今はとにかくその時を待つ、それだけでいいんだよ」

「でも……」

「大丈夫、心配するな。何があっても俺が守り抜いてみせるからさ」

「翔平……」

 俺達のサバイバルはまだまだ続く。

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