我が家の床下で築くハーレム王国
第11話おかえりなさい
携帯の充電もいよいよ切れて、現在の時間が分からなくなり、いよいよ追い詰められ始めていた。
「そういえばここって、空がないけどどうやって夜とか判断しているんだ?」
「一応地上と同じ時間で回る時計があるからそれを頼りにしているの」
「そっか。だからここで普通通り生活できるんだな」
「そんなの今更の話よ。それよりも私そろそろ眠い……」
「じゃあそろそろ寝る時間か」
先ほども述べたように、時間が掴めないので己の感覚で時間を把握するしかない。言われてみれば俺も少し眠くなってきたので、そろそろ寝る時間なのかもしれない。
というか、長く起きていられる気力すらも減ってきている。
「ねえ翔平」
目を瞑って少しした後、ハナティアが声を小さな声で話しかけてきた。
「どうした?」
「私達帰れるよね」
「帰れるだろ。お前の怪我も治ってきたんだし」
「私信じるよ?」
「信じてくれ。でも問題はどうやって出口を探すかだよな」
「それについてなら、私に考えがあるよ」
ハナティアは目を瞑りながらも、この洞窟と繋がっているかもしれない別の洞窟の存在を教えてくれた。どうやら一方通行ではなかったらしい。
「じゃあそれに賭けるしかないな」
「ただ、可能性があるって話だけで、本当にあるかは分からないよ?」
「可能性があるだけでも十分だろ。でも一つ不思議なのがさ」
「何?」
「どうしてこの洞窟が地図に記されてないのに、そういう可能性はあるんだろうな」
「誰かが調べていて、それを流しているとか?」
「まあ誰かが調べたりしないと、この洞窟の存在すら分かってなかっただろうな」
それにああやって入口がある以上、誰かが調べた証拠なのだろう。まあ今はそれを気にしても意味ないけど。
「明日には何とか戻りたいな」
「サクヤにも心配かけたくないし、頑張らないと」
「だな」
やってきた眠気に俺は身を任せて、ゆっくりと眠りにつく。明日こそここから出られればいいなと願いながら、俺とハナティアは二日目を……。
「ハナティア様!」
「翔平!」
「しょ、翔平君!」
その眠りを遮る声が聞こえ、俺とハナティアは慌てて体を起こす。すると来た道とは逆の道からサクヤと何故か雪音と正志の姿があった。
「正志に雪音……どうしてお前達が」
「馬鹿野郎、心配してこのメイドと一緒に探すのを手伝わせてもらったんだよ」
「そ、そうです。私達、翔平君が心配で……」
「そうだったか……悪いな二人とも」
そのメイドはというと、ハナティアに抱きついておうおうと泣いていた。ハナティアはそれを恥ずかしながらも受け止めていた。
(どれだけ心配してたんだよ……)
思った以上の反応を見せたサクヤに、少し俺は引いていた。
(でもまあ、無事助かったしいいか)
こうして俺達のゴールデンウィークの約半分は、秘境探しという名の遭難で、終わってしまったのであった。
「ハナティア様、無事でよかったです! これでもう会えなくなるなんて考えたら、私……」
「馬鹿ね、大袈裟よ。私はそんな簡単に倒れる人間じゃないんだから」
サクヤのその姿をみて、ハナティアも少し引いてしまっているが口は微笑んでいた。そして、
「でも……ありがとう。サクヤ」
彼女はこっそりサクヤにお礼を言うのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
洞窟を脱出して、城に無事に戻ったのは翌日の朝。
約二日洞窟にこもっていた俺達だが、空腹よりも眠気が勝ってしまい、帰還するなりすぐに睡眠。再び目を覚ました時は、既に夕飯の時間になっていた。
「何だ二人も爆睡してたのか?」
部屋を出ると正志と雪音に会う。どうやらサクヤの好意で、二人も城で休ませていてもらったらしく、欠伸をしながら俺に挨拶をした。
「お前ほどではないけどな。でも一日歩いていたから、かなり疲れているよ」
「雪音もよく歩けたな」
「わ、私だって体力はそれなりにありますからね!」
「いや、別にそんなに熱くならなくても」
ハナティアはというと、余程疲れていたのかまだ眠っているとサクヤが言ったので先に食事を取ることに。
「それでいきなりお前の部屋からメイドが出てきたから、いつこんなの雇ったんだと思ってビックリしたよ」
「こんなのとは失礼ですね。こんな彼にだって私のような立派なメイドが付くんですよ」
「立派とか自分で言うか普通。あとサラッとお前も俺を馬鹿にしているからな」
食事の間は、サクヤと二人がどういう経緯で会ったのかなどの話を聞いたりした。
「あれ……もう翔平ご飯食べているの?」
そしてしばらくして、ようやく起きてきたハナティアがやって来る。
「ぶふぉっ」
ただしその服装は、初めて会った時と同じ(詳しくは語らない)。それに気づいた正志は、慌てて目を伏せた。
「は、ハナティア様、お、お洋服を着てください」
流石のサクヤもそれに動揺して、慌ててハナティアの全身を隠す。ナイスだサクヤ。
「え……? あ!」
寝ぼけていたのか素なのかハナティアもそれに気づいて、顔を真っ赤にしながら部屋を出て行った。
「ああハナティア様! せめて何かで隠してから……」
サクヤもそれを追って外へ出る。残されたのはいつもの三人。
「あれはサービスシーンなのか? 翔平」
「初めて会った時もそうだったから、多分あれは素なんだろうな」
「ふ、ふ、不埒です!」
「不埒ってお前……」
仕切り直して五分後。
「は、は、初めて会った時は気にしていなかったのよ。で、でもそういうのは社会としてどうかなって思ったから……」
「今まではあれが普通だったのかよ」
確かに地上に出たらあれは犯罪だけど、普通に考えてあれはアウトだと俺は思います。
「じゃ、じゃあこの二日翔平君は裸のハナティアさんと……」
「待て待て、さっき不埒って言っていたけどお前の方がアウトだぞ雪音」
「否定はしないんだな翔平」
「違うわっ!」
決してこの二日間でそのような事をなかった事をここに断言できる。ハナティアの方が早く寝てはいたけど、寝顔が可愛いと思っても断じてそんな事はなかったと言いきれる。
「え? 違くないでしょ? 毎晩翔平が裸になって私を……」
「ハナティアも余計な嘘を言うなよ! あとどちらかというと、そういうのをやるのはお前の方だからなハナティア」
「やっぱり不埒なんですね」
「だから違うっての!」
食事中とは到底思えない会話が続く。駄目だこの三人が一緒に話すと、止められる奴がいない。
「翔平様とハナティア様、いつの間にそこまでの発展を……」
「だから違うって!」
いや、四人でした。はい、サクヤもどちらかというと、そっち側の人間なのを忘れていましたけど何か。
というか何で皆は元気なんだ? 俺はこんなに疲れているのに……。
(って、あれ体が……)
視界がぐらつき始める。俺は食事を一旦止めて、そのままフラフラになりながら立ち上がる。
「あれ、翔平。どうしたの?」
「悪いハナティア、俺ちょっと……」
「翔平!」
だが俺はすぐに意識を失い、その場に倒れてしまった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
遠くから水の音がする。静かな空間で一滴、また一滴。落ちては波紋となって広がっている。
ここはどこなのだろう。
分からない。ただ自分が今、現実とは違うどこかにいるのかは分かる。まるで湖の上で寝ているような、そんな感じだった。
『おかえりなさい』
誰かが喋る。聞いたことがあるような、ないようなそんな声。
(俺はどこかに帰ってきたのか?)
それも分からない。ただ俺は、その水面の上でずっと寝ていた。
そんな不思議な夢を俺はこの日見た。
「そういえばここって、空がないけどどうやって夜とか判断しているんだ?」
「一応地上と同じ時間で回る時計があるからそれを頼りにしているの」
「そっか。だからここで普通通り生活できるんだな」
「そんなの今更の話よ。それよりも私そろそろ眠い……」
「じゃあそろそろ寝る時間か」
先ほども述べたように、時間が掴めないので己の感覚で時間を把握するしかない。言われてみれば俺も少し眠くなってきたので、そろそろ寝る時間なのかもしれない。
というか、長く起きていられる気力すらも減ってきている。
「ねえ翔平」
目を瞑って少しした後、ハナティアが声を小さな声で話しかけてきた。
「どうした?」
「私達帰れるよね」
「帰れるだろ。お前の怪我も治ってきたんだし」
「私信じるよ?」
「信じてくれ。でも問題はどうやって出口を探すかだよな」
「それについてなら、私に考えがあるよ」
ハナティアは目を瞑りながらも、この洞窟と繋がっているかもしれない別の洞窟の存在を教えてくれた。どうやら一方通行ではなかったらしい。
「じゃあそれに賭けるしかないな」
「ただ、可能性があるって話だけで、本当にあるかは分からないよ?」
「可能性があるだけでも十分だろ。でも一つ不思議なのがさ」
「何?」
「どうしてこの洞窟が地図に記されてないのに、そういう可能性はあるんだろうな」
「誰かが調べていて、それを流しているとか?」
「まあ誰かが調べたりしないと、この洞窟の存在すら分かってなかっただろうな」
それにああやって入口がある以上、誰かが調べた証拠なのだろう。まあ今はそれを気にしても意味ないけど。
「明日には何とか戻りたいな」
「サクヤにも心配かけたくないし、頑張らないと」
「だな」
やってきた眠気に俺は身を任せて、ゆっくりと眠りにつく。明日こそここから出られればいいなと願いながら、俺とハナティアは二日目を……。
「ハナティア様!」
「翔平!」
「しょ、翔平君!」
その眠りを遮る声が聞こえ、俺とハナティアは慌てて体を起こす。すると来た道とは逆の道からサクヤと何故か雪音と正志の姿があった。
「正志に雪音……どうしてお前達が」
「馬鹿野郎、心配してこのメイドと一緒に探すのを手伝わせてもらったんだよ」
「そ、そうです。私達、翔平君が心配で……」
「そうだったか……悪いな二人とも」
そのメイドはというと、ハナティアに抱きついておうおうと泣いていた。ハナティアはそれを恥ずかしながらも受け止めていた。
(どれだけ心配してたんだよ……)
思った以上の反応を見せたサクヤに、少し俺は引いていた。
(でもまあ、無事助かったしいいか)
こうして俺達のゴールデンウィークの約半分は、秘境探しという名の遭難で、終わってしまったのであった。
「ハナティア様、無事でよかったです! これでもう会えなくなるなんて考えたら、私……」
「馬鹿ね、大袈裟よ。私はそんな簡単に倒れる人間じゃないんだから」
サクヤのその姿をみて、ハナティアも少し引いてしまっているが口は微笑んでいた。そして、
「でも……ありがとう。サクヤ」
彼女はこっそりサクヤにお礼を言うのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
洞窟を脱出して、城に無事に戻ったのは翌日の朝。
約二日洞窟にこもっていた俺達だが、空腹よりも眠気が勝ってしまい、帰還するなりすぐに睡眠。再び目を覚ました時は、既に夕飯の時間になっていた。
「何だ二人も爆睡してたのか?」
部屋を出ると正志と雪音に会う。どうやらサクヤの好意で、二人も城で休ませていてもらったらしく、欠伸をしながら俺に挨拶をした。
「お前ほどではないけどな。でも一日歩いていたから、かなり疲れているよ」
「雪音もよく歩けたな」
「わ、私だって体力はそれなりにありますからね!」
「いや、別にそんなに熱くならなくても」
ハナティアはというと、余程疲れていたのかまだ眠っているとサクヤが言ったので先に食事を取ることに。
「それでいきなりお前の部屋からメイドが出てきたから、いつこんなの雇ったんだと思ってビックリしたよ」
「こんなのとは失礼ですね。こんな彼にだって私のような立派なメイドが付くんですよ」
「立派とか自分で言うか普通。あとサラッとお前も俺を馬鹿にしているからな」
食事の間は、サクヤと二人がどういう経緯で会ったのかなどの話を聞いたりした。
「あれ……もう翔平ご飯食べているの?」
そしてしばらくして、ようやく起きてきたハナティアがやって来る。
「ぶふぉっ」
ただしその服装は、初めて会った時と同じ(詳しくは語らない)。それに気づいた正志は、慌てて目を伏せた。
「は、ハナティア様、お、お洋服を着てください」
流石のサクヤもそれに動揺して、慌ててハナティアの全身を隠す。ナイスだサクヤ。
「え……? あ!」
寝ぼけていたのか素なのかハナティアもそれに気づいて、顔を真っ赤にしながら部屋を出て行った。
「ああハナティア様! せめて何かで隠してから……」
サクヤもそれを追って外へ出る。残されたのはいつもの三人。
「あれはサービスシーンなのか? 翔平」
「初めて会った時もそうだったから、多分あれは素なんだろうな」
「ふ、ふ、不埒です!」
「不埒ってお前……」
仕切り直して五分後。
「は、は、初めて会った時は気にしていなかったのよ。で、でもそういうのは社会としてどうかなって思ったから……」
「今まではあれが普通だったのかよ」
確かに地上に出たらあれは犯罪だけど、普通に考えてあれはアウトだと俺は思います。
「じゃ、じゃあこの二日翔平君は裸のハナティアさんと……」
「待て待て、さっき不埒って言っていたけどお前の方がアウトだぞ雪音」
「否定はしないんだな翔平」
「違うわっ!」
決してこの二日間でそのような事をなかった事をここに断言できる。ハナティアの方が早く寝てはいたけど、寝顔が可愛いと思っても断じてそんな事はなかったと言いきれる。
「え? 違くないでしょ? 毎晩翔平が裸になって私を……」
「ハナティアも余計な嘘を言うなよ! あとどちらかというと、そういうのをやるのはお前の方だからなハナティア」
「やっぱり不埒なんですね」
「だから違うっての!」
食事中とは到底思えない会話が続く。駄目だこの三人が一緒に話すと、止められる奴がいない。
「翔平様とハナティア様、いつの間にそこまでの発展を……」
「だから違うって!」
いや、四人でした。はい、サクヤもどちらかというと、そっち側の人間なのを忘れていましたけど何か。
というか何で皆は元気なんだ? 俺はこんなに疲れているのに……。
(って、あれ体が……)
視界がぐらつき始める。俺は食事を一旦止めて、そのままフラフラになりながら立ち上がる。
「あれ、翔平。どうしたの?」
「悪いハナティア、俺ちょっと……」
「翔平!」
だが俺はすぐに意識を失い、その場に倒れてしまった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
遠くから水の音がする。静かな空間で一滴、また一滴。落ちては波紋となって広がっている。
ここはどこなのだろう。
分からない。ただ自分が今、現実とは違うどこかにいるのかは分かる。まるで湖の上で寝ているような、そんな感じだった。
『おかえりなさい』
誰かが喋る。聞いたことがあるような、ないようなそんな声。
(俺はどこかに帰ってきたのか?)
それも分からない。ただ俺は、その水面の上でずっと寝ていた。
そんな不思議な夢を俺はこの日見た。
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