我が家の床下で築くハーレム王国
第14話笑顔の奥の涙
「それじゃあまたね」
「ちょっと待った、ハナティア」
そして我が家に帰宅後、ハナティアはそのまま地下へ戻ろうとしたので、流石に引き止めた。
「どうしたの? 家具なら運ぶようにサクヤに頼んでおいてあげるわよ。全部とまではいかないけど」
「そうじゃなくて、さっきの話の続きは?」
「それは……いつかきっと、分かる事だと思うから今は我慢してくれない?」
「そんなの無理に決まっているだろ。ハナティアは俺の何かを知っているのか? だったら少しだけでも教えてほしい」
帰る間俺はずっと考えていた。一体どちらが真実なのかを。さっきの言い方だと、俺が何かを忘れているだけのように見えるが……。
「何も知らない赤の他人だったら、翔平をこの計画には参加させていないに決まっているでしょ」
「何で俺が知らない事をお前が知っているんだよ」
「それも含めていつか絶対に話す。でもまだ翔平には知るまでの覚悟がないの」
「知る覚悟って何だよそれ、どうしてそこまでして隠す必要があるんだよ」
訳が分からなかった。俺が分からない自身の事を何故彼女が知っているのかと。まだ俺と彼女は出会って一ヶ月しか経っていないのに、何故彼女は……。
「ごめんなさい。でも明日からも普段通り遊びに来ていいから。勿論私も遊びに行くけどね」
最後と言わんばかりに笑顔でハナティアはそう言う。このままあやふやだなんて、そんなの納得できない。せめて答えてほしい。
「なあハナティア、せめて一つ質問くらい答えて」
「さっきも言ったと思うけど、本当にごめんね翔平。辛いかもしれないけど、私からは今は何も言えないから……」
「っ!?」
だがその笑顔からは涙がつたっていた。それを見て俺は思わずそれ以上聞く事をためらってしまう。
そしてハナティアは、いつも通り自分の住む場所へと戻っていってしまうのであった。
(何で……泣く必要が……)
分からなかった。彼女が涙を流した理由を。だからそれが無性にも悲しくて、俺もその日泣いた。全てが悲しくなって泣いた。
(俺はともかく、ハナティアが苦しむ必要はないのに、どうしてお前は……)
こうして俺のゴールデンウィークは、思わぬ謎だけを残して終わりを迎えたのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
翌の早朝、不意にも俺は目を覚ました。まだ大学までの時間は余裕であるのだが、昨日から全く眠れていない。だが二度寝もできないので仕方なく散歩へ。
(今日からいつも通りの学生生活か……)
昨日の事がなければもっと気持ちのいいスタートを切れたかもしれない。こんなモヤモヤした気分で迎える休み明けは初めてだ。
(ハナティアは何かを知っているのは分かった。けど、それは俺が思い出さないといけない事なのか?)
 
自問自答を繰り返す。何故彼女は涙を流してでも、それを我慢したのか俺には理解できなかった。
「はぁ……」
三十分くらいして家に戻る。すると何故か俺の家には先客がいた。
「あ、おはよう平ちゃん」
その人物はハナティアの友人のキャロル。彼女と会うのはこれで三度目だが、一人でこんな早朝に訪ねてくるのは初めてだ。
「朝から元気だなお前は。というか、何当たり前のように人の部屋に入っているんだよ」
「いやぁ、こういうサプライズも必要かなって」
「サプライズってお前……」
「それに私、平ちゃんに話したい事があったから。ハナちゃんから聞いたけど朝くらいしか時間ないんでしょう?」
「確かに今日もバイトあるし、夜まで家に帰ってこないけど、そんなに急用なのか?」
「うん」
まだ大学まで時間はあるので、彼女にお茶を出して話を聞く事にする。
「平ちゃん、昨日もしかしてハナちゃんと何かあったの?」
「昨日? 確かにあったけど、どうしてそれをお前が」
「昨日夜にハナちゃんと会って、その時様子がおかしかったから。ハナちゃんが様子おかしい時って、大抵平ちゃんが絡んでるとも思って聞いてみたんだけど、やっぱりそうなんだ」
「まあ、そうだな…….」
キャロルが言う事は全て的を射ていた。親友だからこそ分かる事ってあったりするのかな。
「昨日ハナティアと一日出かけたんだけど、その帰りに少し揉め事があってさ。でもそれでハナティアがどうして泣いていたのか分からないんだ」
「何か平ちゃんが酷い事言ったんじゃないの?」
「それは……ない。ただ、俺は知りたい事をハナティアから聞こうとしたんだけど、ハナティアはそれを拒んだだけで……」
「うーん、それってもしかしてだけど」
思い当たる節でもあるのかキャロルが何かを言いかけるが、それを止めてしまう。
「キャロルも何か知っているのか?」
「ハナちゃんが泣いていた原因については、心当たりある。だけど私もそれを話すのはハナちゃんと同じで、話したくないかな」
「何だよ二人して。俺だけ仲間はずれみたいじゃないか」
ますます疑念が増えていく。キャロルまでもが隠そうとするのって、よほどの隠し事なんだろうけど、俺には見当もつかなかった。
むしろそんな大事な事を覚えていない自分の方がおかしいとすら思えてくる。
「平ちゃんが知りたがる気持ちは分かるけど、今は我慢してほしいな。ハナちゃんには私が話しておくから」
「釈然としないな。……って、やば、もうこんな時間じゃん」
「大学に行く時間?」
「ああ。悪いけどこの話はまだ今度」
朝早く起きた割には、もう大学に向かう時間になってしまっていた。俺は慌てて着替え等を済まして家を出る。
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
最後はキャロルに見送られる。思わず行ってきますなんて言ってしまったが、何だか少しだけ恥ずかしい。
(色々気になる事もあるけど、今は大学に集中しないと) 
俺の忙しい毎日は、再び始まる。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
翔平が家を出て行った後、トリナディアへと戻ったキャロルはその足でハナティアを訪ねていた。
「相変わらず時間を考えないわねよね、キャロルって」
「早起きは三文の得って言うでしょ? だからこれも得なんだって思うんだ」
「私にとっては損でしかないけど」
眠い目をこすりながら会話をするハナティア。その目はまだ腫れていて、一晩泣いていた事がハッキリしていた。それを見たキャロルはすかさずその事を尋ねる。
「ねえハナちゃん、目が赤いけどどうしたの?」
「これ? 別に何ともないけど」
「嘘ばっかり。平ちゃんも心配していたくらいなのに」
「翔平が?」
翔平、という言葉に反応するハナティア。
(やっぱり……)
キャロルは確信した。やはり翔平が言っていた通りだったと。
「今さっき、平ちゃんに私会ってきたの」
「どうしてわざわざ朝から」
「昨日何かあったか知りたくて」
朝の会話をハナティアに話す。キャロルの中では、昨日のいざこざの原因が何なのか大方検討が付いていた。それを踏まえた上で、ハナティアに尋ねる。
「どうしてハナちゃんは、ちゃんと答えてあげなかったの?」
「答えるって何を……」
「平ちゃん辛そうにしてた。自分がハナちゃんを傷つけてしまったのかなって」
「そんな。翔平は何も悪く」
「だったらどうして」
当然の疑問ではあった。キャロル自身それを隠し続ける事をあまり好ましく思っていなかった為、どうしても納得がいかなかった。
「そんな簡単には話せない事だからに決まっているでしょ。そうでなければ、私だってこんなに苦しい思いをしたくない。それをキャロルだって分かっているでしょ!」
「それは分かっているよ私も。でも隠される方もすごく辛いよ」
「分かってる……分かってるから……」
実はキャロルもその事を知っていた。だから自分がその架け橋になってもいいとさえ思っている。だけどどちらもその覚悟ができていないのなら、話は別。
「ハナちゃんが辛いのと同じように、平ちゃんも同じように辛い事を、忘れないで」
「うん……」
ハナティアも好きでこんな事をしているのではない事を、友達である彼女が一番に理解していた。彼女も彼女で傷ついている。だからこそ、彼女にも、そして彼にもそれを乗り越えてほしい。
それがキャロルの願いでもあった。
「ハナちゃん、これからはもっと辛い事があると思うけど、平ちゃんだけじゃなく私も支えるから。何かあったら何でも言ってね」
「ありがとう、キャロル。私も頑張るから」
「頑張ってね、ハナちゃん」
「ちょっと待った、ハナティア」
そして我が家に帰宅後、ハナティアはそのまま地下へ戻ろうとしたので、流石に引き止めた。
「どうしたの? 家具なら運ぶようにサクヤに頼んでおいてあげるわよ。全部とまではいかないけど」
「そうじゃなくて、さっきの話の続きは?」
「それは……いつかきっと、分かる事だと思うから今は我慢してくれない?」
「そんなの無理に決まっているだろ。ハナティアは俺の何かを知っているのか? だったら少しだけでも教えてほしい」
帰る間俺はずっと考えていた。一体どちらが真実なのかを。さっきの言い方だと、俺が何かを忘れているだけのように見えるが……。
「何も知らない赤の他人だったら、翔平をこの計画には参加させていないに決まっているでしょ」
「何で俺が知らない事をお前が知っているんだよ」
「それも含めていつか絶対に話す。でもまだ翔平には知るまでの覚悟がないの」
「知る覚悟って何だよそれ、どうしてそこまでして隠す必要があるんだよ」
訳が分からなかった。俺が分からない自身の事を何故彼女が知っているのかと。まだ俺と彼女は出会って一ヶ月しか経っていないのに、何故彼女は……。
「ごめんなさい。でも明日からも普段通り遊びに来ていいから。勿論私も遊びに行くけどね」
最後と言わんばかりに笑顔でハナティアはそう言う。このままあやふやだなんて、そんなの納得できない。せめて答えてほしい。
「なあハナティア、せめて一つ質問くらい答えて」
「さっきも言ったと思うけど、本当にごめんね翔平。辛いかもしれないけど、私からは今は何も言えないから……」
「っ!?」
だがその笑顔からは涙がつたっていた。それを見て俺は思わずそれ以上聞く事をためらってしまう。
そしてハナティアは、いつも通り自分の住む場所へと戻っていってしまうのであった。
(何で……泣く必要が……)
分からなかった。彼女が涙を流した理由を。だからそれが無性にも悲しくて、俺もその日泣いた。全てが悲しくなって泣いた。
(俺はともかく、ハナティアが苦しむ必要はないのに、どうしてお前は……)
こうして俺のゴールデンウィークは、思わぬ謎だけを残して終わりを迎えたのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
翌の早朝、不意にも俺は目を覚ました。まだ大学までの時間は余裕であるのだが、昨日から全く眠れていない。だが二度寝もできないので仕方なく散歩へ。
(今日からいつも通りの学生生活か……)
昨日の事がなければもっと気持ちのいいスタートを切れたかもしれない。こんなモヤモヤした気分で迎える休み明けは初めてだ。
(ハナティアは何かを知っているのは分かった。けど、それは俺が思い出さないといけない事なのか?)
 
自問自答を繰り返す。何故彼女は涙を流してでも、それを我慢したのか俺には理解できなかった。
「はぁ……」
三十分くらいして家に戻る。すると何故か俺の家には先客がいた。
「あ、おはよう平ちゃん」
その人物はハナティアの友人のキャロル。彼女と会うのはこれで三度目だが、一人でこんな早朝に訪ねてくるのは初めてだ。
「朝から元気だなお前は。というか、何当たり前のように人の部屋に入っているんだよ」
「いやぁ、こういうサプライズも必要かなって」
「サプライズってお前……」
「それに私、平ちゃんに話したい事があったから。ハナちゃんから聞いたけど朝くらいしか時間ないんでしょう?」
「確かに今日もバイトあるし、夜まで家に帰ってこないけど、そんなに急用なのか?」
「うん」
まだ大学まで時間はあるので、彼女にお茶を出して話を聞く事にする。
「平ちゃん、昨日もしかしてハナちゃんと何かあったの?」
「昨日? 確かにあったけど、どうしてそれをお前が」
「昨日夜にハナちゃんと会って、その時様子がおかしかったから。ハナちゃんが様子おかしい時って、大抵平ちゃんが絡んでるとも思って聞いてみたんだけど、やっぱりそうなんだ」
「まあ、そうだな…….」
キャロルが言う事は全て的を射ていた。親友だからこそ分かる事ってあったりするのかな。
「昨日ハナティアと一日出かけたんだけど、その帰りに少し揉め事があってさ。でもそれでハナティアがどうして泣いていたのか分からないんだ」
「何か平ちゃんが酷い事言ったんじゃないの?」
「それは……ない。ただ、俺は知りたい事をハナティアから聞こうとしたんだけど、ハナティアはそれを拒んだだけで……」
「うーん、それってもしかしてだけど」
思い当たる節でもあるのかキャロルが何かを言いかけるが、それを止めてしまう。
「キャロルも何か知っているのか?」
「ハナちゃんが泣いていた原因については、心当たりある。だけど私もそれを話すのはハナちゃんと同じで、話したくないかな」
「何だよ二人して。俺だけ仲間はずれみたいじゃないか」
ますます疑念が増えていく。キャロルまでもが隠そうとするのって、よほどの隠し事なんだろうけど、俺には見当もつかなかった。
むしろそんな大事な事を覚えていない自分の方がおかしいとすら思えてくる。
「平ちゃんが知りたがる気持ちは分かるけど、今は我慢してほしいな。ハナちゃんには私が話しておくから」
「釈然としないな。……って、やば、もうこんな時間じゃん」
「大学に行く時間?」
「ああ。悪いけどこの話はまだ今度」
朝早く起きた割には、もう大学に向かう時間になってしまっていた。俺は慌てて着替え等を済まして家を出る。
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
最後はキャロルに見送られる。思わず行ってきますなんて言ってしまったが、何だか少しだけ恥ずかしい。
(色々気になる事もあるけど、今は大学に集中しないと) 
俺の忙しい毎日は、再び始まる。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
翔平が家を出て行った後、トリナディアへと戻ったキャロルはその足でハナティアを訪ねていた。
「相変わらず時間を考えないわねよね、キャロルって」
「早起きは三文の得って言うでしょ? だからこれも得なんだって思うんだ」
「私にとっては損でしかないけど」
眠い目をこすりながら会話をするハナティア。その目はまだ腫れていて、一晩泣いていた事がハッキリしていた。それを見たキャロルはすかさずその事を尋ねる。
「ねえハナちゃん、目が赤いけどどうしたの?」
「これ? 別に何ともないけど」
「嘘ばっかり。平ちゃんも心配していたくらいなのに」
「翔平が?」
翔平、という言葉に反応するハナティア。
(やっぱり……)
キャロルは確信した。やはり翔平が言っていた通りだったと。
「今さっき、平ちゃんに私会ってきたの」
「どうしてわざわざ朝から」
「昨日何かあったか知りたくて」
朝の会話をハナティアに話す。キャロルの中では、昨日のいざこざの原因が何なのか大方検討が付いていた。それを踏まえた上で、ハナティアに尋ねる。
「どうしてハナちゃんは、ちゃんと答えてあげなかったの?」
「答えるって何を……」
「平ちゃん辛そうにしてた。自分がハナちゃんを傷つけてしまったのかなって」
「そんな。翔平は何も悪く」
「だったらどうして」
当然の疑問ではあった。キャロル自身それを隠し続ける事をあまり好ましく思っていなかった為、どうしても納得がいかなかった。
「そんな簡単には話せない事だからに決まっているでしょ。そうでなければ、私だってこんなに苦しい思いをしたくない。それをキャロルだって分かっているでしょ!」
「それは分かっているよ私も。でも隠される方もすごく辛いよ」
「分かってる……分かってるから……」
実はキャロルもその事を知っていた。だから自分がその架け橋になってもいいとさえ思っている。だけどどちらもその覚悟ができていないのなら、話は別。
「ハナちゃんが辛いのと同じように、平ちゃんも同じように辛い事を、忘れないで」
「うん……」
ハナティアも好きでこんな事をしているのではない事を、友達である彼女が一番に理解していた。彼女も彼女で傷ついている。だからこそ、彼女にも、そして彼にもそれを乗り越えてほしい。
それがキャロルの願いでもあった。
「ハナちゃん、これからはもっと辛い事があると思うけど、平ちゃんだけじゃなく私も支えるから。何かあったら何でも言ってね」
「ありがとう、キャロル。私も頑張るから」
「頑張ってね、ハナちゃん」
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