我が家の床下で築くハーレム王国
第16話今私がすべき事
その音は静かに鳴っていた。俺の耳に届くか届かないか、微妙な感じの音。そしてその中にやはり彼女はいた。
『あなたの帰りを待っていました』
そして彼女はそう言葉を発した。
(帰りを待っていた?)
考えられるものの声は出せない。彼女は一体どういう意味を持って、その言葉を発しているのかは分からなかった。
『あなたは思い出すべきです。彼女の事、己の事、そして……』
最後の言葉を聞き終える前に俺の意識は覚醒してしまう。時間はまだ夜中。どうやらかなり早い段階で目を覚ましてしまったらしい。
(彼女の事、己の事って、ハナティアと俺の事か?)
今さっきの夢を思い出し、冷静に分析する。だが謎の女性は最後に何かもう一つ言おうとしていた。それは一体何なのだろうか。
(でも不思議だよな……あの声)
思い出せないけどどこかで聞いた事があるような……。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
夜中に一度起きた反動で、次に起きた時は昼頃になっていた。
「いつまで寝てるの? お昼なのに」
「ごめん」
まるで母親のようにハナティアに起こされる。
あの後あの夢を見る事はなかったものの、やはり気になっていた俺は、起きた後もその事をずっと考えていた。
「ちょっと翔平、聞いているの?」
「ん? ああ」
「ダーリン、なんか元気がない」
「お前が元気すぎるんだよミル」
でもミルの言っている事は間違っていなかった。さっきからハナティアが話しかけてきているのは分かっているが、全く頭に入ってこない。
(ハナティアの事、俺の事……。何を思い出せばいいんだ俺は。それに帰ってくるのを待っていただなんて……)
まるで俺が、
「そんな訳……ないよな」
「何がないんですか?」
「え?」
突然サクヤが話しかけてきたので、思わずそんな事を言ってしまう。気づけばハナティアとミルの姿はなく、俺一人だけが部屋に残っていた。
「お二人様なら、翔平様が考え事ばかりしていてつまらないと言って、部屋を出ていきましたよ」
「そっか。悪い事したな」
「そう思うならどうして、考え事をやめないんですか?」
「それは……」
忘れている何かを思い出したかったから。あの声とか関係なく、俺は何かを忘れている。それをただ思い出したくて、ずっと考え込んでいた。
「翔平様は覚悟がありますか?」
「覚悟?」
「今あなたはなにをしようとしているのか、私もハナティア様も分かっています。しかし、それをするにはそれなりの覚悟が必要になってくるんです」
「二人はずっと分かっていたのか? 俺の事を」
「それについては今はお答えできません。しかしもし覚悟があるなら」
サクヤは俺に一枚の紙を渡してくる。そこには見覚えがある住所が記載されていた。
「ここへ行ってみてください。そこにあなたが求めている答えがあると思います。保証はできませんが」
「何でここをサクヤが知っているんだよ」
「その答えもそこへ行けばわかります」
サクヤがなにを言っているのか分からなかった。この住所が示している意味、もしそれが本当だとしたらもっと聞かなければならないことがある。
「あなたには思い出す事と同時に、知らなければならない事があります。それを知った上で、あなたの答えを聞かせてもらいます」
「答え?」
「私達が初めにお話しした、例の計画に賛同してくれるかの答えですよ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
その後ハナティアに謝って、城の外へ出かけたり色々な事をして彼女のご機嫌取りをした。ハナティアもそれで気を良くしてくれたのか、だいぶ機嫌がよくなってくれた。
「明日にはまた帰るんだよね」
「ああ。明後日からまた大学だしな」
「今度は一週間来ないなんて事はないよね?」
「心配するな。ちゃんと来るよ」
「よかった」
そして夜。昨日みたいにミルはいないので、ハナティアの部屋で二人で話をしていた。昨日は俺の部屋に泊まったから、今日はこっちの部屋に泊まってと言い出したが、何故か俺はそれに反対はしなかった。
「地下の国か……」
「どうしたの急に」
「いや、もしかしたらこの後の人生ここで暮らす事になるのかもな、って思ってさ」
「それは翔平の選択次第だと思うよ。どちらかといえばここで暮らしてもらいたいけど」
「でもさ、昼にサクヤに言われたんだよ。知らなければならない事を知った上で、答えを聞かせてほしいって」
「知らなければならない事?」
「お前は知っているんだろハナティア。この紙が何を意味しているのかを」
そう言いながらハナティアに、昼にサクヤに渡されたあの紙を渡す。
「これって確か。でもどうして翔平がこの住所の事分かるの?」
「分かるも何もこれさ」
その紙にはある住所が記されていた。その場所に勿論俺は身に覚えがある。ただ俺は、そこに行くのはすごく怖かった。
「俺の姉ちゃんが眠っている墓がある場所なんだよ」
「そ、そうなんだ」
「ところでさ」
「な、何?」
「何でお前が俺の姉ちゃんの墓の住所を知っているんだ?」
先ほどサクヤに聞けなかった質問をハナティアにする。何故彼女達が俺の家族が眠っている墓の場所を知っているのか、本来ならあり得ない話なのにどうしてそれが今目の前で起きているのか。
俺にはそれを知る権利があった。
「え、えっと、それは何でかな」
「サクヤがここを書いたときは本当に驚いた。だけどそれで一つ合点がいったんだ。あの夢の事や、お前が何かを隠したがっている理由を」
「理由なんてそんなの……」
「姉ちゃんが死んだ理由を詳しく聞かされていなかったんだよ俺は。だからもしかしたら、トリナディアと関係あるんじゃないのか? そしてそれは俺にも」
「ごめんなさい翔平!」
急に部屋を飛び出してしまうハナティア。やっぱり何か関係があるのだろう。あからさま過ぎる隠し方に、俺は少しだけ苛立つ。もうここまで言われたら、俺だってある程度知る覚悟だってあるし、受け入れる事だってできる。
なのに何故彼女達はあそこまで話したがらないのだろうか。俺はそれだけが不思議で仕方がなかった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
彼も私もまだその時は幼かった。
だから難しい話は理解できなかったし、そんな遠い話をされても理解できなかった。
だけど年が経つにつれ、その事の重大さ、そして重荷。それらが分かるようになってきた。彼女が叶えられなかった事を自分が担う。その事の大きさに。
そう、これは運命だったのかもしれない。いや、必然だったのかもしれない。彼と私、そして彼女が出会った事は。
「はぁ……はぁ……」
どれくらい走ったか分からないけど息が苦しい。こんなに走ったのは久しぶりだ。彼がもうすぐ気づいてしまうかもしれないという、その怖さから私は逃げ出してきた。
本当なら誰も悪くないはずなのに、何故か自分だけが悪者になった気分になる。
(お姉ちゃん、私どうすれば……)
彼に話そうとしないのは、自分も思い出すのが怖いから。だから避けていた。でももう、逃げるなんて事はできない。
(翔平……)
私怖いよ、あなたが全部思い出してしまう事を。
「あれ? ハナちゃんどうしたのこんな時間に」
「キャロル……」
走り疲れた私は、息を整えるためにしばらくその場にいると偶然キャロルに会う。
「また平ちゃんと喧嘩でもしたの?」
「違う。私が悪いの」
事の顛末をキャロルに話した。翔平は何一つ悪くないのを私は分かっているし、彼が思い出すのも仕方がない事だと分かっている。だから私はそれがただ怖くて……。
「そっか。一番覚悟が出来てなかったのはハナちゃんの方だったんだね」
「翔平が全部思い出した時、多分私は彼のそばにいる事は出来ないと思うの。だって、私に関わらなければ、きっと翔平はあんな目には合わなかった」
「過ぎた事はもうどうしようもないよ。ハナちゃんができる事は、今をどうするかじゃないのかな」
「今を?」
「ハナちゃんは平ちゃんの事が好きなんでしょ? 罪の償いとかそんなの一切関係なく」
「うん……」
わたしは翔平に謝らなければならない事が沢山ある。そんな彼の隣に私がいる事は本当は良くない事だと分かっている。でも分かっていても、それでも私は翔平の事が好き。
その事をキャロルが一番理解してくれていた。
「だったら答えは決まっていると思うんだけどな。ハナちゃんが今どうするべきか」
「私が今どうするべきか……」
「ほら、しっかりしないとまた平ちゃんを悲しませちゃうよ」
「っ!?」
そうだ、こんな時こそしっかりしないとまた繰り返してしまう。私が……翔平の力にならないと。
「ごめんキャロル、私少しだけトリナディアから離れる。しなければならない事、見つかった」
「気をつけてねハナちゃん」
「……うん!」
『あなたの帰りを待っていました』
そして彼女はそう言葉を発した。
(帰りを待っていた?)
考えられるものの声は出せない。彼女は一体どういう意味を持って、その言葉を発しているのかは分からなかった。
『あなたは思い出すべきです。彼女の事、己の事、そして……』
最後の言葉を聞き終える前に俺の意識は覚醒してしまう。時間はまだ夜中。どうやらかなり早い段階で目を覚ましてしまったらしい。
(彼女の事、己の事って、ハナティアと俺の事か?)
今さっきの夢を思い出し、冷静に分析する。だが謎の女性は最後に何かもう一つ言おうとしていた。それは一体何なのだろうか。
(でも不思議だよな……あの声)
思い出せないけどどこかで聞いた事があるような……。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
夜中に一度起きた反動で、次に起きた時は昼頃になっていた。
「いつまで寝てるの? お昼なのに」
「ごめん」
まるで母親のようにハナティアに起こされる。
あの後あの夢を見る事はなかったものの、やはり気になっていた俺は、起きた後もその事をずっと考えていた。
「ちょっと翔平、聞いているの?」
「ん? ああ」
「ダーリン、なんか元気がない」
「お前が元気すぎるんだよミル」
でもミルの言っている事は間違っていなかった。さっきからハナティアが話しかけてきているのは分かっているが、全く頭に入ってこない。
(ハナティアの事、俺の事……。何を思い出せばいいんだ俺は。それに帰ってくるのを待っていただなんて……)
まるで俺が、
「そんな訳……ないよな」
「何がないんですか?」
「え?」
突然サクヤが話しかけてきたので、思わずそんな事を言ってしまう。気づけばハナティアとミルの姿はなく、俺一人だけが部屋に残っていた。
「お二人様なら、翔平様が考え事ばかりしていてつまらないと言って、部屋を出ていきましたよ」
「そっか。悪い事したな」
「そう思うならどうして、考え事をやめないんですか?」
「それは……」
忘れている何かを思い出したかったから。あの声とか関係なく、俺は何かを忘れている。それをただ思い出したくて、ずっと考え込んでいた。
「翔平様は覚悟がありますか?」
「覚悟?」
「今あなたはなにをしようとしているのか、私もハナティア様も分かっています。しかし、それをするにはそれなりの覚悟が必要になってくるんです」
「二人はずっと分かっていたのか? 俺の事を」
「それについては今はお答えできません。しかしもし覚悟があるなら」
サクヤは俺に一枚の紙を渡してくる。そこには見覚えがある住所が記載されていた。
「ここへ行ってみてください。そこにあなたが求めている答えがあると思います。保証はできませんが」
「何でここをサクヤが知っているんだよ」
「その答えもそこへ行けばわかります」
サクヤがなにを言っているのか分からなかった。この住所が示している意味、もしそれが本当だとしたらもっと聞かなければならないことがある。
「あなたには思い出す事と同時に、知らなければならない事があります。それを知った上で、あなたの答えを聞かせてもらいます」
「答え?」
「私達が初めにお話しした、例の計画に賛同してくれるかの答えですよ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
その後ハナティアに謝って、城の外へ出かけたり色々な事をして彼女のご機嫌取りをした。ハナティアもそれで気を良くしてくれたのか、だいぶ機嫌がよくなってくれた。
「明日にはまた帰るんだよね」
「ああ。明後日からまた大学だしな」
「今度は一週間来ないなんて事はないよね?」
「心配するな。ちゃんと来るよ」
「よかった」
そして夜。昨日みたいにミルはいないので、ハナティアの部屋で二人で話をしていた。昨日は俺の部屋に泊まったから、今日はこっちの部屋に泊まってと言い出したが、何故か俺はそれに反対はしなかった。
「地下の国か……」
「どうしたの急に」
「いや、もしかしたらこの後の人生ここで暮らす事になるのかもな、って思ってさ」
「それは翔平の選択次第だと思うよ。どちらかといえばここで暮らしてもらいたいけど」
「でもさ、昼にサクヤに言われたんだよ。知らなければならない事を知った上で、答えを聞かせてほしいって」
「知らなければならない事?」
「お前は知っているんだろハナティア。この紙が何を意味しているのかを」
そう言いながらハナティアに、昼にサクヤに渡されたあの紙を渡す。
「これって確か。でもどうして翔平がこの住所の事分かるの?」
「分かるも何もこれさ」
その紙にはある住所が記されていた。その場所に勿論俺は身に覚えがある。ただ俺は、そこに行くのはすごく怖かった。
「俺の姉ちゃんが眠っている墓がある場所なんだよ」
「そ、そうなんだ」
「ところでさ」
「な、何?」
「何でお前が俺の姉ちゃんの墓の住所を知っているんだ?」
先ほどサクヤに聞けなかった質問をハナティアにする。何故彼女達が俺の家族が眠っている墓の場所を知っているのか、本来ならあり得ない話なのにどうしてそれが今目の前で起きているのか。
俺にはそれを知る権利があった。
「え、えっと、それは何でかな」
「サクヤがここを書いたときは本当に驚いた。だけどそれで一つ合点がいったんだ。あの夢の事や、お前が何かを隠したがっている理由を」
「理由なんてそんなの……」
「姉ちゃんが死んだ理由を詳しく聞かされていなかったんだよ俺は。だからもしかしたら、トリナディアと関係あるんじゃないのか? そしてそれは俺にも」
「ごめんなさい翔平!」
急に部屋を飛び出してしまうハナティア。やっぱり何か関係があるのだろう。あからさま過ぎる隠し方に、俺は少しだけ苛立つ。もうここまで言われたら、俺だってある程度知る覚悟だってあるし、受け入れる事だってできる。
なのに何故彼女達はあそこまで話したがらないのだろうか。俺はそれだけが不思議で仕方がなかった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
彼も私もまだその時は幼かった。
だから難しい話は理解できなかったし、そんな遠い話をされても理解できなかった。
だけど年が経つにつれ、その事の重大さ、そして重荷。それらが分かるようになってきた。彼女が叶えられなかった事を自分が担う。その事の大きさに。
そう、これは運命だったのかもしれない。いや、必然だったのかもしれない。彼と私、そして彼女が出会った事は。
「はぁ……はぁ……」
どれくらい走ったか分からないけど息が苦しい。こんなに走ったのは久しぶりだ。彼がもうすぐ気づいてしまうかもしれないという、その怖さから私は逃げ出してきた。
本当なら誰も悪くないはずなのに、何故か自分だけが悪者になった気分になる。
(お姉ちゃん、私どうすれば……)
彼に話そうとしないのは、自分も思い出すのが怖いから。だから避けていた。でももう、逃げるなんて事はできない。
(翔平……)
私怖いよ、あなたが全部思い出してしまう事を。
「あれ? ハナちゃんどうしたのこんな時間に」
「キャロル……」
走り疲れた私は、息を整えるためにしばらくその場にいると偶然キャロルに会う。
「また平ちゃんと喧嘩でもしたの?」
「違う。私が悪いの」
事の顛末をキャロルに話した。翔平は何一つ悪くないのを私は分かっているし、彼が思い出すのも仕方がない事だと分かっている。だから私はそれがただ怖くて……。
「そっか。一番覚悟が出来てなかったのはハナちゃんの方だったんだね」
「翔平が全部思い出した時、多分私は彼のそばにいる事は出来ないと思うの。だって、私に関わらなければ、きっと翔平はあんな目には合わなかった」
「過ぎた事はもうどうしようもないよ。ハナちゃんができる事は、今をどうするかじゃないのかな」
「今を?」
「ハナちゃんは平ちゃんの事が好きなんでしょ? 罪の償いとかそんなの一切関係なく」
「うん……」
わたしは翔平に謝らなければならない事が沢山ある。そんな彼の隣に私がいる事は本当は良くない事だと分かっている。でも分かっていても、それでも私は翔平の事が好き。
その事をキャロルが一番理解してくれていた。
「だったら答えは決まっていると思うんだけどな。ハナちゃんが今どうするべきか」
「私が今どうするべきか……」
「ほら、しっかりしないとまた平ちゃんを悲しませちゃうよ」
「っ!?」
そうだ、こんな時こそしっかりしないとまた繰り返してしまう。私が……翔平の力にならないと。
「ごめんキャロル、私少しだけトリナディアから離れる。しなければならない事、見つかった」
「気をつけてねハナちゃん」
「……うん!」
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