我が家の床下で築くハーレム王国
第17話Lost memory 前編
その日の晩、ハナティアは部屋に戻って来ず仕方がないので彼女の部屋で睡眠をとった。
(帰ってこないなんて、心配だな……)
翌朝、俺の嫌な予感は的中する。
「え? ハナティアが帰ってきてない?」
「はい。夜中にハナティア様が城を出て行く姿を見た方がいまして、何かあったのですか?」
「多分俺のせいだそれ」
「よろしければ何があったのか、お話ししていただけますか?」
俺は昨晩の事をサクヤに話す。そもそも事の発端は、彼女から渡されたあの紙からだった。
「なるほど。だとしたら、少し様子を見ましょう」
「え? でも……」
「これに関してはハナティア様自身の問題でもありますので、それまでは一人にしてあげた方がいいと思います」
「でも、これは俺のせいでもあるし」
「翔平様は何も悪くはありません。避けては通れない運命なんですよ」
「避けては通れない運命?」
以前にも似たような言葉を聞いた気がするけど、何が運命なのだろうか。というか、サクヤにも聞いておきたい事があったんだった。
「なあサクヤ、これはハナティアにも聞いたんだけど、どうしてお前は……いやお前達は俺の姉ちゃんの墓場の場所を知っているんだ」
「それについては、今私がお答えする事はできません。ハナティア様がお話ししてくれるのを待つか、もしくは」
「ここへ行って、自分で確かめてこいって事か?」
「はい」
「姉ちゃんの墓参りか……」
そんなのいつ以来だっけ。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
サクヤが言う通りにハナティアが自分で帰ってくるのを待つ事にした俺は、一度地上へ戻った。
(行って確かめてみるしかないよな)
あの後もどうしてもその事が気になった俺は、勇気を振り絞って姉ちゃんの墓参りへ行く事を決意。それなりに準備をして、俺は早速出かけた。
(本当いつ以来だっけ。墓参りなんて)
姉ちゃんが亡くなったのは確か十年前くらいだったはず。何故そこまで曖昧なのかというと、俺自身詳しく覚えていないのだ。姉がどうして亡くなったのか、とか、姉の声とか。居たのは確かなんだけど、何故か記憶があやふやで、殆ど覚えていないに等しい。
(何があるんだろうな、ここに)
電車に揺られる事一時間。目的地へと到着。都会から少し離れている事もあってか周囲は緑に囲まれていた。
(えっと、確か姉ちゃんの墓は……)
線香を買って墓を探す。すぐにそれは見つかり、先に線香をあげる。
(姉ちゃん、久しぶりに墓参りに来たよ)
しばらく来ていなかった事の詫びの慰問含めてしばらく墓の前で手を合わせる。そしてしばらくした後に、俺はゆっくりと目を開いた。
「ふぅ……」
一通りの墓参りを済ませ、俺はその場所から去ろうとする。だけどその直後に、俺は何がとてつもない違和感を感じた。
(あれ?)
慌てて俺は墓に戻る。そして俺はその違和感の正体が何なのか気づいた。
「これはどういう……」
「今からもう二十五年くらい前になるかな。私とある姉弟と出会ったのは」
少し遠くから声が聞こえる。振り返るとそこにはハナティアが立っていた。
「ハナティア、どうしてここに? いや、それよりもこれはどういう事なんだ」
「私もまだその頃は小さかったからあまり覚えてないけど、お姉ちゃんはとても優しくて私の憧れだったの」
「その言い方だと、まるでその姉弟が俺と姉ちゃんみたいな言い方だな」
「まさにその通りなの、翔平」
「え? でも俺二十五年前なんて生まれているわけ……」
そこまで言ったところで、俺の頭の中にあらるバラバラのピースが少しずつ形になっていく。
あの夢の事。
この墓の事。
そして今の話の事。
俺の姉ちゃんが亡くなったのは今から十年もの前の事だと俺は思っていた。だけどここに書かれている亡くなった年は、今から二十年前。そう、本来なら俺は生まれているわけがない。
では何故俺は姉の事を知っているのか。
「二十年前、私達の国では大きな事件が起きたの。その事件には何人もの人が巻き込まれて、そのうちの一人は死亡、一人は意識不明の重体。もう一人は瀕死だったものの臓器移植によってなんとか命を取り止める事に成功」
「ちょっと待て、その事件って……」
「過去に私と翔平、そして柚お姉ちゃんが遭遇してしまった事件なの。私も本当は危なかったんだけど、臓器移植で何とか生還できたの。でも柚お姉ちゃんは亡くなった。そしてもう一人、長い間意識を取り戻していなかった子が一人」
「……俺なのか?」
「そう。彼は意識を取り戻す事はできたものの、当時の記憶を全て失い目を覚ました。私の事も、トリナディアの事も全部」
「そんな事って……」
あり得るのか? それだと俺がその事件について覚えていなかった事に納得はいくけど、受け入れるのは難しい。
(俺が記憶喪失だったなんて……)
「翔平は気がつかなかった? 今翔平が住んでいるところは昔住んでいたところだって」
「え? じゃあ俺の両親がわざわざ一人暮らしのために用意してくれたのは」
「多分私達ともう一度引き合わせる為だったんじゃないかな。あの部屋がトリナディアと繋がっているのは、ずっと前からの事だったから」
「だからなのか」
これは俺の予想だけど、普段からハナティア達はあの部屋を経路にして地上へ出ていたのかもしれない。そこに俺が再び住む事になれば、いづれ相まみえる事になる。俺の両親はそこまで考えていたのだろう。
「だったら何であの時素っ裸だったんだ?」
「そ、それは忘れてよ!?」
あんな斬新な出会い方は、一生忘れないと思う。多分。
「お前はずっとこの事を隠し続けていたのか?」
「翔平には悪いと思ってたよ。でも、記憶喪失になったとかそんな話信じられないでしょ? だから……」
「ごめんな、ハナティア。こんな事のために辛い思いさせて」
「っ!? わ、私は……」
頬を赤らめるハナティア。でもその目は涙目になっている。
(照れているのか、泣いてるのか分からないな……)
俺はそんな彼女が可愛くすら見えたのだった。
(帰ってこないなんて、心配だな……)
翌朝、俺の嫌な予感は的中する。
「え? ハナティアが帰ってきてない?」
「はい。夜中にハナティア様が城を出て行く姿を見た方がいまして、何かあったのですか?」
「多分俺のせいだそれ」
「よろしければ何があったのか、お話ししていただけますか?」
俺は昨晩の事をサクヤに話す。そもそも事の発端は、彼女から渡されたあの紙からだった。
「なるほど。だとしたら、少し様子を見ましょう」
「え? でも……」
「これに関してはハナティア様自身の問題でもありますので、それまでは一人にしてあげた方がいいと思います」
「でも、これは俺のせいでもあるし」
「翔平様は何も悪くはありません。避けては通れない運命なんですよ」
「避けては通れない運命?」
以前にも似たような言葉を聞いた気がするけど、何が運命なのだろうか。というか、サクヤにも聞いておきたい事があったんだった。
「なあサクヤ、これはハナティアにも聞いたんだけど、どうしてお前は……いやお前達は俺の姉ちゃんの墓場の場所を知っているんだ」
「それについては、今私がお答えする事はできません。ハナティア様がお話ししてくれるのを待つか、もしくは」
「ここへ行って、自分で確かめてこいって事か?」
「はい」
「姉ちゃんの墓参りか……」
そんなのいつ以来だっけ。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
サクヤが言う通りにハナティアが自分で帰ってくるのを待つ事にした俺は、一度地上へ戻った。
(行って確かめてみるしかないよな)
あの後もどうしてもその事が気になった俺は、勇気を振り絞って姉ちゃんの墓参りへ行く事を決意。それなりに準備をして、俺は早速出かけた。
(本当いつ以来だっけ。墓参りなんて)
姉ちゃんが亡くなったのは確か十年前くらいだったはず。何故そこまで曖昧なのかというと、俺自身詳しく覚えていないのだ。姉がどうして亡くなったのか、とか、姉の声とか。居たのは確かなんだけど、何故か記憶があやふやで、殆ど覚えていないに等しい。
(何があるんだろうな、ここに)
電車に揺られる事一時間。目的地へと到着。都会から少し離れている事もあってか周囲は緑に囲まれていた。
(えっと、確か姉ちゃんの墓は……)
線香を買って墓を探す。すぐにそれは見つかり、先に線香をあげる。
(姉ちゃん、久しぶりに墓参りに来たよ)
しばらく来ていなかった事の詫びの慰問含めてしばらく墓の前で手を合わせる。そしてしばらくした後に、俺はゆっくりと目を開いた。
「ふぅ……」
一通りの墓参りを済ませ、俺はその場所から去ろうとする。だけどその直後に、俺は何がとてつもない違和感を感じた。
(あれ?)
慌てて俺は墓に戻る。そして俺はその違和感の正体が何なのか気づいた。
「これはどういう……」
「今からもう二十五年くらい前になるかな。私とある姉弟と出会ったのは」
少し遠くから声が聞こえる。振り返るとそこにはハナティアが立っていた。
「ハナティア、どうしてここに? いや、それよりもこれはどういう事なんだ」
「私もまだその頃は小さかったからあまり覚えてないけど、お姉ちゃんはとても優しくて私の憧れだったの」
「その言い方だと、まるでその姉弟が俺と姉ちゃんみたいな言い方だな」
「まさにその通りなの、翔平」
「え? でも俺二十五年前なんて生まれているわけ……」
そこまで言ったところで、俺の頭の中にあらるバラバラのピースが少しずつ形になっていく。
あの夢の事。
この墓の事。
そして今の話の事。
俺の姉ちゃんが亡くなったのは今から十年もの前の事だと俺は思っていた。だけどここに書かれている亡くなった年は、今から二十年前。そう、本来なら俺は生まれているわけがない。
では何故俺は姉の事を知っているのか。
「二十年前、私達の国では大きな事件が起きたの。その事件には何人もの人が巻き込まれて、そのうちの一人は死亡、一人は意識不明の重体。もう一人は瀕死だったものの臓器移植によってなんとか命を取り止める事に成功」
「ちょっと待て、その事件って……」
「過去に私と翔平、そして柚お姉ちゃんが遭遇してしまった事件なの。私も本当は危なかったんだけど、臓器移植で何とか生還できたの。でも柚お姉ちゃんは亡くなった。そしてもう一人、長い間意識を取り戻していなかった子が一人」
「……俺なのか?」
「そう。彼は意識を取り戻す事はできたものの、当時の記憶を全て失い目を覚ました。私の事も、トリナディアの事も全部」
「そんな事って……」
あり得るのか? それだと俺がその事件について覚えていなかった事に納得はいくけど、受け入れるのは難しい。
(俺が記憶喪失だったなんて……)
「翔平は気がつかなかった? 今翔平が住んでいるところは昔住んでいたところだって」
「え? じゃあ俺の両親がわざわざ一人暮らしのために用意してくれたのは」
「多分私達ともう一度引き合わせる為だったんじゃないかな。あの部屋がトリナディアと繋がっているのは、ずっと前からの事だったから」
「だからなのか」
これは俺の予想だけど、普段からハナティア達はあの部屋を経路にして地上へ出ていたのかもしれない。そこに俺が再び住む事になれば、いづれ相まみえる事になる。俺の両親はそこまで考えていたのだろう。
「だったら何であの時素っ裸だったんだ?」
「そ、それは忘れてよ!?」
あんな斬新な出会い方は、一生忘れないと思う。多分。
「お前はずっとこの事を隠し続けていたのか?」
「翔平には悪いと思ってたよ。でも、記憶喪失になったとかそんな話信じられないでしょ? だから……」
「ごめんな、ハナティア。こんな事のために辛い思いさせて」
「っ!? わ、私は……」
頬を赤らめるハナティア。でもその目は涙目になっている。
(照れているのか、泣いてるのか分からないな……)
俺はそんな彼女が可愛くすら見えたのだった。
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