我が家の床下で築くハーレム王国
第29話記憶の中の少女 前編
という事で俺も二日目からはハナティアと同じような事をする事に。しかしいきなり八時間とかは無理な話なので、最初は二時間だけにしてくれた。
だが八時間も二時間も、初めての俺にとっては地獄以外何物でもないので、
(あ、足がぁぁ)
三十分経った頃に、既に挫折しかけていた。
(こ、これを八時間とか無理だろ絶対)
あまりの苦行に心の中で文句を言いながらも、何とか耐える。ハナティアはこれ以上の苦しみを味わっているのだと考えると、簡単には根をあげられない。
儀式に耐えるって言葉は変かもしれないが、やるしかない。
そして二時間後。
「じゃあ翔平は休んでて。私はまだ続けるから」
「ああ」
見事終了。しかしまだ六時間時間残っているハナティアは、そのまま台座に戻り再開する。
(と、とりあえず今日はこれで終わりだし、大丈夫だよな)
足が痺れすぎてろくに歩く事もできない俺は、しばらくの間ハナティアを見守る事に。
(本当すごいな、こいつは)
毎回そんな事を考えている気もするけど、ここまで何が彼女を動かしているのか気になる。国の為、だけではないと俺は思うし、多分ハナティアも同じ事を言うと思う。
だからこそ、俺は知りたい。
(でも俺も、何か始めないとなそろそろ)
ハナティアのそんな姿を見て、ふとの自分の事を考えてしまう。俺は今こうしてハナティアの協力をしているが、俺自身がやりたい事は何かと言われてみれば、具体的な言葉が見つからない。
大学に通えば何か見つかると思っていたけど、肝心の大学もこうだとな……。
(正志も雪音も夢があるし、俺はどうしたら)
ハナティアがいるかもしれないけど、それでも俺は将来に不安を覚えていた。
「夢か。私も一応あるんだけどね、国の事以外で」
「へえ」
二日目の夜、寝ながらハナティアにその話を持ち出してみたところ、どうやら彼女も何か夢を持っているらしい。
「いつか本を書きたいなって思っているの。地上では決して味わえない物語を、形にしてみたいなって」
「ノンフィクションみたいなものか?」
「ノンフィクションに近いけど、もう少し非現実的な要素も取り入れたりして、それを一つのストーリーにしたいかなって」
「それいいかもな」
意外だった。ハナティアもハナティアで、自分なりの夢を持っているなんて、何だか俺だけが情けなくなる。
「でしょ? それで翔平はどうなの」
「俺はさっきも言ったけど、まだ決まっていないんだよ。自分のやりたい事。大学で何か見つければいいかなって思っているけど」
「そっか。でもそれでいいと思う」
「そうかな。雪音も正志もそれぞれ夢持っているから、自分だけ何もないっていうのは、ちょっとあれかなって思ったけど」
「なんか翔平らしいから、私は賛成だよ。まあその前には多分」
「多分なんだよ」
「内緒」
こんな調子で二日目の終わりを告げた。この後、三日目、四日目と特に大きな事は起きず、迎えた五日目。その異変は俺の身に起きた。
「何だよ今の……」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
その頃、翔平がいない間正志と雪音は少し寂しさを感じていた。
「何かいつも一緒だったのに、一週間顔見ないだけでもなんか寂しいな」
「休みの間も何度か会ってましたからね」
「しかも今は休みでもなんでもないしな」
まさか一週間もいなくなるとは思っていなかった為、二人は驚きを隠せない。一応ハナティアとは面識がある二人だが、異様なまでに翔平に執着している理由があまり分からない。
更に言うなら、ゴールデンウイークの事件がなければ、二人は地下に行く機会すらなかったのだから。
「あいつ本当に大丈夫なのかな」
「大丈夫ってどういう事ですか?」
「この前電話した時、本当に急に決まったみたいな説明の仕方だったから、何か緊急事態で起きたのなって」
「そういえば一度実家の方に帰ったみたいですけど、それも関係あるのでしょうか」
「言われてみればそうだな」
少し前にトリナディアに三人で行った時も、ハナティアと二人きりになった後から、少し様子が変だったのを二人は気づいている。
翔平自身は何もなかったかのように振舞っていたけど、二人は翔平が何かを隠している事にも勘付いていた。
「翔平ってさ隠し事下手だよな。特に四月になってから色々隠し事してる」
「私達に言えないくらいの秘密なんでしょうか」
「多分な。今まであまり隠し事しないタイプだったから、珍しいよな」
「はい」
そう言いながらも実は雪音はある事に気づいていた。いや、気づくというよりは知っていた事がいくつかある。でもそれは翔平自身も気づいていない事だろう。
(翔平君、私はあなたの……)
「どうした雪音。深く考え込んで」
「あ、いえ。何でもありません」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「しょ、翔平! 大丈夫?」
「何とか……」
五日目の朝。俺はハナティアに心配されるほど身体を震わしていた。何故こうなってしまったのかは分からない。ただ一つ言える事は、
「は、ハナティア。一つ聞かせてくれ」
「どうしたの?」
「どうして……」
夢なら夢なだけでよかった。だけどそれは確実に俺の中に眠っている記憶。
ただ、思い出したくなかった記憶。あの事故の時の記憶。
「どうして……あの事故の記憶の中に、雪音がいるんだよ」
本来雪音と出会ったのは高校生の時の話。それなのに、あの記憶の中にハナティアと俺と姉ちゃんと、そしてもう一人、雪音の姿があった。
「……やっぱり記憶を取り戻し始めているんだね翔平」
「やっぱりってどういう意味だよ」
「だってここは、あの事故が起きた場所だから」
「……え?」
どういう意味だよ、それ。
「もしかして雪音も事故に巻き込まれていたとでも言いたいのか?」
「言いたいも何も、それが事実だもん」
「何だよそれ」
俺だけ何も知らなかったのか? 雪音の事も、事故の事も。
だが八時間も二時間も、初めての俺にとっては地獄以外何物でもないので、
(あ、足がぁぁ)
三十分経った頃に、既に挫折しかけていた。
(こ、これを八時間とか無理だろ絶対)
あまりの苦行に心の中で文句を言いながらも、何とか耐える。ハナティアはこれ以上の苦しみを味わっているのだと考えると、簡単には根をあげられない。
儀式に耐えるって言葉は変かもしれないが、やるしかない。
そして二時間後。
「じゃあ翔平は休んでて。私はまだ続けるから」
「ああ」
見事終了。しかしまだ六時間時間残っているハナティアは、そのまま台座に戻り再開する。
(と、とりあえず今日はこれで終わりだし、大丈夫だよな)
足が痺れすぎてろくに歩く事もできない俺は、しばらくの間ハナティアを見守る事に。
(本当すごいな、こいつは)
毎回そんな事を考えている気もするけど、ここまで何が彼女を動かしているのか気になる。国の為、だけではないと俺は思うし、多分ハナティアも同じ事を言うと思う。
だからこそ、俺は知りたい。
(でも俺も、何か始めないとなそろそろ)
ハナティアのそんな姿を見て、ふとの自分の事を考えてしまう。俺は今こうしてハナティアの協力をしているが、俺自身がやりたい事は何かと言われてみれば、具体的な言葉が見つからない。
大学に通えば何か見つかると思っていたけど、肝心の大学もこうだとな……。
(正志も雪音も夢があるし、俺はどうしたら)
ハナティアがいるかもしれないけど、それでも俺は将来に不安を覚えていた。
「夢か。私も一応あるんだけどね、国の事以外で」
「へえ」
二日目の夜、寝ながらハナティアにその話を持ち出してみたところ、どうやら彼女も何か夢を持っているらしい。
「いつか本を書きたいなって思っているの。地上では決して味わえない物語を、形にしてみたいなって」
「ノンフィクションみたいなものか?」
「ノンフィクションに近いけど、もう少し非現実的な要素も取り入れたりして、それを一つのストーリーにしたいかなって」
「それいいかもな」
意外だった。ハナティアもハナティアで、自分なりの夢を持っているなんて、何だか俺だけが情けなくなる。
「でしょ? それで翔平はどうなの」
「俺はさっきも言ったけど、まだ決まっていないんだよ。自分のやりたい事。大学で何か見つければいいかなって思っているけど」
「そっか。でもそれでいいと思う」
「そうかな。雪音も正志もそれぞれ夢持っているから、自分だけ何もないっていうのは、ちょっとあれかなって思ったけど」
「なんか翔平らしいから、私は賛成だよ。まあその前には多分」
「多分なんだよ」
「内緒」
こんな調子で二日目の終わりを告げた。この後、三日目、四日目と特に大きな事は起きず、迎えた五日目。その異変は俺の身に起きた。
「何だよ今の……」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
その頃、翔平がいない間正志と雪音は少し寂しさを感じていた。
「何かいつも一緒だったのに、一週間顔見ないだけでもなんか寂しいな」
「休みの間も何度か会ってましたからね」
「しかも今は休みでもなんでもないしな」
まさか一週間もいなくなるとは思っていなかった為、二人は驚きを隠せない。一応ハナティアとは面識がある二人だが、異様なまでに翔平に執着している理由があまり分からない。
更に言うなら、ゴールデンウイークの事件がなければ、二人は地下に行く機会すらなかったのだから。
「あいつ本当に大丈夫なのかな」
「大丈夫ってどういう事ですか?」
「この前電話した時、本当に急に決まったみたいな説明の仕方だったから、何か緊急事態で起きたのなって」
「そういえば一度実家の方に帰ったみたいですけど、それも関係あるのでしょうか」
「言われてみればそうだな」
少し前にトリナディアに三人で行った時も、ハナティアと二人きりになった後から、少し様子が変だったのを二人は気づいている。
翔平自身は何もなかったかのように振舞っていたけど、二人は翔平が何かを隠している事にも勘付いていた。
「翔平ってさ隠し事下手だよな。特に四月になってから色々隠し事してる」
「私達に言えないくらいの秘密なんでしょうか」
「多分な。今まであまり隠し事しないタイプだったから、珍しいよな」
「はい」
そう言いながらも実は雪音はある事に気づいていた。いや、気づくというよりは知っていた事がいくつかある。でもそれは翔平自身も気づいていない事だろう。
(翔平君、私はあなたの……)
「どうした雪音。深く考え込んで」
「あ、いえ。何でもありません」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「しょ、翔平! 大丈夫?」
「何とか……」
五日目の朝。俺はハナティアに心配されるほど身体を震わしていた。何故こうなってしまったのかは分からない。ただ一つ言える事は、
「は、ハナティア。一つ聞かせてくれ」
「どうしたの?」
「どうして……」
夢なら夢なだけでよかった。だけどそれは確実に俺の中に眠っている記憶。
ただ、思い出したくなかった記憶。あの事故の時の記憶。
「どうして……あの事故の記憶の中に、雪音がいるんだよ」
本来雪音と出会ったのは高校生の時の話。それなのに、あの記憶の中にハナティアと俺と姉ちゃんと、そしてもう一人、雪音の姿があった。
「……やっぱり記憶を取り戻し始めているんだね翔平」
「やっぱりってどういう意味だよ」
「だってここは、あの事故が起きた場所だから」
「……え?」
どういう意味だよ、それ。
「もしかして雪音も事故に巻き込まれていたとでも言いたいのか?」
「言いたいも何も、それが事実だもん」
「何だよそれ」
俺だけ何も知らなかったのか? 雪音の事も、事故の事も。
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