ある夜の奇跡

陽本奏多

ある夜の奇跡

目が覚めた。

ある日のこと。頭ははっきりと冴えている。

寝起き直後独特の怠さは感じられず、あるのはただ独特な高揚感のみ。

今にも踊りだしてしまいそうな興奮を私は感じていた。

そうだ、私はあの人に会うために……。

一度思い出してしまうと、いてもたってもおられず私は寝床を飛び出した。



目が覚めた。

ある日のこと。頭はまだ少しぼんやりしている。

目覚め直後の独特な怠さに僕は耐えられず、やっとのことで開いた目を、再び閉じた。

そうして、布団のぬくもりに意識を沈ませ……かけた瞬間、僕は思い出した。

そうだ、僕はあの人に会うために……

一度思い出してしまうと、いてもたってもおられず僕は寝床を飛び出した。



眼下には美しい星々がこれでもかというほど散りばめられていた。

そんな中でその青い星は他の星と異なる輝きを放っていた。

深い青の中にアクセントを与える明るい緑。

太陽の影となり闇に包みこまれるはずの場所にもぽつぽつと黄金色の光がともっており、それはそれで何とも言えない趣があった。

しかし、この星に恵みを与え続ける太陽だが、近づきすぎてしまえば蒸発させてしまう。

ちょうどいい距離を保つことが大切……か。

いつか言われたこのセリフが今になってやっと理解できた気がした。

瞬間、私は背後から羽ばたいてきた白い鳥の群れに気が付いた。

その鳥たちは僕の頭上をかすめるように通り過ぎると、目の前に広がり、遥か遠くへとつながる純白の橋を形作った。

やっと、あの人に……。

私は溢れ出てくる感慨を押しとどめ、走り始めた。

少しでも、ほんの少しでも早くあの人に会うため、僕は足を動かし続ける。

胸が裂けるかと、身が焼け焦げるかと思う日もあった。

でも、それでも……


私は、
   あの人を待ち続けた!
僕は、


二人は空白の時間を生めるかのように抱きしめあうと、涙を流し、再開の感動に身を委ねた。

星々はさらに輝きを増し、漆黒の闇を光に満たしていく。

そして、光はすべての闇を飲み込み、世界を白に染め上げた。

その中を、温かい光たちがふわふわと漂い、幻想的な空間へ姿を変えていく。

その中心で、尚、互いの体温を感じ続ける二人に言葉など必要なく、ただひたすらに抱きしめあった。

しかし、時間とは残酷なものだ。

先ほどまでしっかりと在ったはずの橋は端から順に光へ還っていく。

それは花火さながら美しいいろを交錯させながら、橋の中心で抱き合う二人に近づいていく。

そして、夜空に咲いた大きな花と共に、奇跡の夜は終わりを告げた。


『また会おう。次の7月7日に』

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