(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
三人きりの時間・後編
ミルシアの話は続く。
「それにしても……ティアからある程度の話は聞いたけれど、まさかあなたが元々人間だったとはね。驚きだわ。ドラゴンって、呪いをかけることもあるのね」
「それはちょっと……。今考えても馬鹿らしいと思う話よ。ドラゴンの血を欲したせいで、こうなってしまったのだから」
「皮肉な話ね。ドラゴンを求めたハンターが、ドラゴンメイドにさせられて、ハンターから追いかけ回されるなんて……」
沈黙。
三人も人間が(正確には二人がドラゴンメイドか)居るにもかかわらず、会話に発展しない。
それはこの空間の空気が重くなっていることと等しかった。
「……とにかく、あの鬼っ子たちと魔女はうちで預かるとして……ケイタとサクラには話をするつもりは?」
ミルシアの言葉に、私は頷く。
今度は逃げない。
逃げて、勝手に居なくなるなんてことはしたくない。
「今回は、きちんと話すつもり。彼にもう二度と悲しい思いをさせたくないから」
「そう。……じゃあ、それでよろしくね。閉店はいつ?」
「いつになるの?」
「ええと、今日が青雨の月15の日だから、あと五日」
「五日、か……。皆さん、きちんと理解してくれるかしら」
「理解してくれるだろう。ボルケイノにやってくる人間は変わり者ばかりだ。急にこの店が無くなったところでよりどころが無くなったなんて思う人間は居ないはずだ」
「それってあなたも変わり者だ、と認めていることになるけれど?」
「王政を放ったらかして、こんな喫茶店に来ている女王のどこが人格者だと言うんだ?」
それもそうね、と私は笑った。
何だか心の底から笑ったのはとても久しぶりな気がする。ついに呪いが解けるとなって、どこか気分がすっきりしたのかもしれない。あれから遠い時間が経過したけれど、やっとまた人間になれるんだ、ってことを思いながら私は自分で入れたコーヒーを啜るのだった。
◇◇◇
次の日。私はケイタとサクラを集めて、ボルケイノを閉店する話をした。
ケイタは驚いていたが、同時に理解していたようだった。一度閉店を経験しているからか、遠からずいつかはその日がやってくるだろう、と思っていたに違いない。
対してサクラはその事実を受け入れがたいものだった。最近ようやく慣れてきたのに、もうお別れなんですね、と涙を零しつつ言った。仕方ないことだけれど、諦めるしかない。生きているうちに、いつかは必ず出会いと別れがある。そう私は言って、サクラとケイタに残りの四日間の営業も全力でお願いするように依頼するのだった。
長く続いたボルケイノも残り四日。
最後までお客様を笑顔にするんだから。
「それにしても……ティアからある程度の話は聞いたけれど、まさかあなたが元々人間だったとはね。驚きだわ。ドラゴンって、呪いをかけることもあるのね」
「それはちょっと……。今考えても馬鹿らしいと思う話よ。ドラゴンの血を欲したせいで、こうなってしまったのだから」
「皮肉な話ね。ドラゴンを求めたハンターが、ドラゴンメイドにさせられて、ハンターから追いかけ回されるなんて……」
沈黙。
三人も人間が(正確には二人がドラゴンメイドか)居るにもかかわらず、会話に発展しない。
それはこの空間の空気が重くなっていることと等しかった。
「……とにかく、あの鬼っ子たちと魔女はうちで預かるとして……ケイタとサクラには話をするつもりは?」
ミルシアの言葉に、私は頷く。
今度は逃げない。
逃げて、勝手に居なくなるなんてことはしたくない。
「今回は、きちんと話すつもり。彼にもう二度と悲しい思いをさせたくないから」
「そう。……じゃあ、それでよろしくね。閉店はいつ?」
「いつになるの?」
「ええと、今日が青雨の月15の日だから、あと五日」
「五日、か……。皆さん、きちんと理解してくれるかしら」
「理解してくれるだろう。ボルケイノにやってくる人間は変わり者ばかりだ。急にこの店が無くなったところでよりどころが無くなったなんて思う人間は居ないはずだ」
「それってあなたも変わり者だ、と認めていることになるけれど?」
「王政を放ったらかして、こんな喫茶店に来ている女王のどこが人格者だと言うんだ?」
それもそうね、と私は笑った。
何だか心の底から笑ったのはとても久しぶりな気がする。ついに呪いが解けるとなって、どこか気分がすっきりしたのかもしれない。あれから遠い時間が経過したけれど、やっとまた人間になれるんだ、ってことを思いながら私は自分で入れたコーヒーを啜るのだった。
◇◇◇
次の日。私はケイタとサクラを集めて、ボルケイノを閉店する話をした。
ケイタは驚いていたが、同時に理解していたようだった。一度閉店を経験しているからか、遠からずいつかはその日がやってくるだろう、と思っていたに違いない。
対してサクラはその事実を受け入れがたいものだった。最近ようやく慣れてきたのに、もうお別れなんですね、と涙を零しつつ言った。仕方ないことだけれど、諦めるしかない。生きているうちに、いつかは必ず出会いと別れがある。そう私は言って、サクラとケイタに残りの四日間の営業も全力でお願いするように依頼するのだった。
長く続いたボルケイノも残り四日。
最後までお客様を笑顔にするんだから。
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