(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
ボルケイノとの出会い・2
詳細は言えないが、私はティアを信頼している。信用しているとも置き換えていいかもしれないね。とりあえず言えることといえばそれくらい。
まぁ、話は戻すけれど、だから私は彼女の言葉に耳を貸して、さらにその普通に聞けば素っ頓狂な言葉も信じて疑わなかったわけだ。別にそれくらい普通の考えだし、君にだってそこまで心を許した人間が居るのでは無いのかな?
「とにかく、お金が無いからには何も進められないわね……。はっきり言って、このままじゃ私たちの生活だって危うくなるでしょうし」
「……そうかもしれません。ですが、それはもう神の啓示に近いのかもしれません。あるいは、神の与えた試練そのもの……」
「出た出た、ティアの宗教おたく。言いたいことは解るけれど、私には何も通用しないわよ? だって私は神なんて居ない、って考えているからね」
「無神論者、ってことですか」
「そうとも言うわね」
私とティアの会話は続いていく。それは内容の殆どが他愛も無いものばかりだったわけだけれど、それでも楽しいか否かと言われれば、きっと楽しかったのだ……と思う。
カランコロン、と鈴の音が鳴ったのはその時だった。あまりにもその鈴が鳴る機会が少なすぎたからか、私は一瞬それが何であるか思い出せなかった。今思えば傑作だがね。
それは店の入口の扉に備え付けてあるもので、それが開けば自動的に鳴るものだった。
即ち、来客を知らせるベルだった。
来客は黒い服に身を包んだ少年だった。黒い服は、後に聞いたが学生が着る制服らしい。まったく、なんというか便利な国だよ。要は学校に行くための服を、学校が提供してくれているんだからな。
「いらっしゃい。今は席が空いているから好きなところに座ってもらって構わないよ」
「あぁ」
淡白な返事だった。
そして彼はたった一言だけ――言った。
「何か、食べ物をくれないか」
私はその一言を聞いただけで、何か嫌な予感を感じた。もしかして、何かあったんじゃないか? って思ったわけだよ。
だが、残念ながら彼に食べさせていいものが見つからなかった。……いや、それは間違いだな。正確に言えば、『その知識が無かった』といえばいいか。初めて見た国、世界、食べ物だったわけだよ。だからそれについて、私は何も出来なかった。
だからと言って、それでは許されない。飯を食いたいと言っているのに出すモノが無いなど言える訳が無かった。
「じゃあ、どうすればいいか?」
そんなの、答えはとっくに出ていた。
彼の目の前に皿を幾つか置いたのは、彼がそれを言ってから五分後のことだった。あんまり待たせすぎてもいけないからな、こういうことはスピードが肝心だ。……いや、もちろん味も大事なんだが、ここでは割愛させてもらう。話が長くなってしまうからな。こだわりなんてそんなものだ。語らせてしまえばそれこそ徹夜なんて簡単に迎えてしまう。まぁ、私はあんまりこだわりは言わないんだがな。そんなこと言ったってキリがないし。
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