(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~

巫夏希

トリック・オア・トリート? 前編


 十月三十一日。
 ハロウィンと言われているが、結局のところそれを現実世界で受けることは無い。
 最近渋谷で仮装をしている人が多く集まっていると言われているが、今年のハロウィンは月曜日だから、そのイベントも直近の土日で行われてしまっている。だから、特に今年のハロウィン当日は何もイベントが無い、ということだ。
 要はそういう人間からしてみれば、ただ騒ぐ機会があればいいということなのだろう。はっきり言って非常に面倒なことではあるけれど。終わったらゴミが出たり、迷惑行為をかける人が出てきたり、まあ、面倒なことばかりだ。そういうことをしなければ未だいいのだけれど。
 そういうわけで今日もバイトだ。異世界の喫茶店にはハロウィンなど必要のないイベントだ。そもそも文化が違うし。だから、一番イベントに関係無く、出来れば関わりたくない俺にとっては有り難い話ではあるのだけれど。
 扉を開いて、今日も準備に取り掛かろう。そう思った、ちょうどその時だった。

「トリック・オア・トリート!」

 ……目の前に、魔女が被るようなとんがり帽子を被ったシュテンの姿があった。
 もっと言えば、シュテンは黒いワンピースに身をまとっていた。ワンピースの丈は非常に短く、屈めばパンツが見えてしまいそうだ。箒も持っているということは、完全に魔女か何かのコスプレ――ということなのか。
 いずれにせよ、先ずは扉を閉めて、ある人物を呼ぶことにしよう。
 俺はすうと息を吸って、口を開けた。

「桜ああああああああああああああああああああああ!」

 俺の声を聴いて、シュテンはびくっと身体を震わせたが、そんなことはどうだっていい。先ずは今回のことを言いふらしたあの女を呼び寄せねばならない。
 桜は俺が呼んでから直ぐにやってきた。桜は既にメイド服に身を包んでいて、笑みを浮かべていた。その笑顔はどこか悪戯めいた笑顔で、俺がこうなることを理解していたようにも思える。

「桜……。俺がどうして今怒っているのか、解るか?」
「えー、解らないなあ。トリック・オア・トリート?」
「それだよ! 何で、トリック・オア・トリートを言っているんだ! ここは異世界だ、あの世界とはまったく違う。宗教だって! そもそも、ハロウィンって宗教関連の行事だろ。だったら、関係ないはずだ」
「それは、日本のハロウィンについて文句を言っているということかな? 確かにそもそも、日本のハロウィンはもともとのハロウィンの意味から既に乖離している。けれど、それは外国人にも受け入れられつつあるのよ。その文化を輸入したと思えば、いいのではなくて」

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