(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~

巫夏希

海の宝石箱・後編

「……おっ、もう彼女帰っていったのか」

 キッチンで後片付けもとい俺たちの昼食を作っていたメリューさんがカウンターへと出てきた。

「ええ、ついさっき。それにしてもよく新鮮な魚が手に入りましたね。そして、あの王国が内陸国であるということも」
「あれ? あの王国、グラッセ王国が内陸国ってことは伝えていなかったか? だとすれば済まなかったな。結構前から知っていたが言う機会が無かった」

 そうだったんですか。と俺は言うことしか出来なかった。
 それを聞いたメリューさんは俺の隣に立ち、さらに話を続けた。

「……あの国、いや、正確に言えばあの世界は常に戦争を続けている世界なんだよな」

 ぽつり、とメリューさんは言った。

「ああ、何。ある時、ミルシアが教えてくれたんだよ。あの世界は、戦争が続いている。戦争をビジネスとしているから、世界の経済の仕組みに根付いているから、簡単に終わらせることは出来ない。けれど、戦争で命を落としている人も、苦しんでいる人も居ることも事実だと。しかしながら、戦争を終わらせることは出来ない。それがたとえ、一国の王女であったとしても、だ」
「……そんな表情、今まで見せたことなかったのに……」
「ま、それをお前に見せたくないと思っているのかもな。昔は酷かったぞ。ろくに話も出来なかった。疲弊していたんだ、精神も身体も。だから、私が力のつく食べ物を出してやった。食べようとはしなかったが、それを食えと言って無理やり食べさせた。そしたらすっかり元気になってやがる。今はどうしているのだろうな。最近、それについての話はしていないが、もしかしたらそれについて取り組んでいるのかもしれないな」

 まだまだ、解らないことがある。
 そんなことを思った、昼下がりだった。

「……さて、難しいことばかり考えているとダメだな。そろそろ昼にするか? ちょうどケイタたちの分の海鮮丼も出来上がったことだし、昼休憩にしようじゃないか」

 それを聞いた俺は、思わず笑顔が零れてしまって、メリューさんに「お前は食については貪欲だな」と言われたのは、また別の話。

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