(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~

巫夏希

鬼の少女と悪の組織・7

「だが……はっきり言って、解らないことでもない。それもまた事実だ」

 メリューさんは急に立場を逆転させた。
 なぜ急に? そんなことを思ったけれど、その直後、メリューさんはシュテンとウラの二人の頬を叩いた。
 予兆も容赦も無かった。
 そしてこうなるだろうな、という予想はできていたにしろ急にそういう反応をされたから、一番驚いたのはシュテンとウラだったのかもしれない。

「……だからと言って他人に迷惑をかけることをした、それは反省する必要があるな。鉄拳制裁、とは言い難いかもしれないが、それに近いものだ。これでも軽いものだぞ」
「てめえ……。何を言っているのか、解っているのか?」

 ウラが本性を出したのか、牙をむき出しにして言った。
 それに臆せず話をつづけるメリューさん。

「常識を知らない埒外。そうだと思っているよ、私は。寧ろこれくらいで済むのを有り難いと思ったほうがいい」
「メリュー。これはいったい何の騒ぎだ?」

 そういったのはかつてレバニラ丼を注文した吸血鬼のお姫様だった。
 どうやらお姫様もここに居たようで、つかまっていたらしい。まあ、そもそも捕まっていたといっても拘束をされていたわけではないのだけれど。

「……申し訳ありません。どうやら子供が遊んでいたようです。けれど、もう大丈夫。わたしが懲らしめておいたから。だからこれ以上はおしまい。彼女たちも悪気はあったと思うけれど、もう反省していることだろうし」
「えっ」
「反省したでしょう?」
「……はい」

 それを聞いたお姫様は深い溜息を吐くと、頷く。

「別に悪いことをしたから、というわけではないけれど……。うん、まあ、あなたが言うならこちらとしてもこれ以上何も言えないかもしれない。だからと言って好きにしていいというわけでもない。どうするつもり?」
「……私が彼女たちの身元引受人になるわ」

 その言葉は、僕たちも、お姫様も、それ以外の亜人も皆目を丸くする発言だったことは ̄―まあ、言うまでもないだろう。


 ◇◇◇


 後日談。
 というよりも今回のオチ。
 結局、シュテンとウラは暫く城の地下牢に閉じ込められることになった。まあ、国際的なパーティーであのようなことをしたのだから、牢に閉じ込められただけで済むのならば安いものかもしれない。
 因みに今、メリューさんは外出中だ。ティアさんが嫌な予感がする、と言っている。奇遇だな、俺も今嫌な予感がしている。
 そんなことを言ったら、カランコロンとドアにつけられた鐘の音が鳴る。
 ……ああ、案の定だった。
 入ってきたのはメリューさんで、それに、シュテンとウラがついてきていた。

「ただいま。そして、みんなに新しいメンバーを紹介するわね、シュテンとウラっていうの。よろしくね、ほら、挨拶して」

 ……またまた、ボルケイノには馬鹿騒ぎが絶えないだろう。そんなことを思わせる新メンバーの登場だった。

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