(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~

巫夏希

レーションよりも美味しいものを・中編

 少しして俺は二人にあるものを持って行った。

「はい、お待たせしました」

 湯気が立ち込めるその器を見て、その二人は顔を見合わせる。
 そして、俺に向かってこう言った。

「これは……ラーメン?」

 俺はそれにうなずく。

「はい。ラーメンです。とっても美味しく出来上がっていますので、熱いうちに召し上がってくださいね」
「おいおい、サリド。ラーメンだぞ、ラーメン。ちょいとびっくりじゃないか? まさかラーメンが出るなんて思いもしなかったぞ。お前だってそうだろ?」
「うん、グラム。確かにそうだね。けれど、これだけは言えるよ。そんなこと店員の前でいうんじゃねえ、品位が知れるぞ。お前仮にも貴族なんだろ?!」
「当たり前だろ、俺は貴族の息子だよ。けれど、貴族の息子でも言っていいことだってあるじゃん?」
「言っちゃダメなこともあることを覚えようぜ。さすがに一緒に居て毎回ツッコム気にもなれない」

 そんなことを言っていながらも、軽快なやり取りをしているところを見ると、どうやら二人とも仲が良いようだ。
 そうして。
 二人はほぼ同じタイミングでラーメンを啜る。別にそこまで一緒にしなくてもいいだろう、とか思いがちになるけれどきっと長い間同じ場所で過ごしてきたのだろう。同じ環境で過ごしてきた人間は、その行動も自ずと似るものだ――どこかの本で読んだことがある。きっとそういうことなのだと思う。

「……それにしても、このラーメン、とても深みがあって美味しいね。僕たちの国にもこんなラーメンは無かったし……」
「それは企業秘密です。教えてしまうと、まあ、いろいろと面倒なことがあるので」

 正確に言えば、それは俺も知らないからなのだけれど。
 味というかフレーバーというか、そういう調味料の類は、メリューさんは一切教えてくれない。ぶっちゃけ教えてくれなくてもいいといえばいいのだが、気になるときもあるし、たまにこういう風にお客さんから質問があるときに困る。まあ、メリューさんは毎回「企業秘密といえばいい」としか言わないけれど。
 企業秘密、といってもここはただの喫茶店になるわけだが。

「……いや、美味いな。こんな飯、実際に軍で出したら大変なことになるんじゃないか? きっとお代わりする人は多く出てくるだろ。リーフガットさんに食わしてやりたいくらいだぜ」
「リーフガットさんに食わして必死に説得すれば、もしかしたら可能性は生まれるかもしれないな。この美味しい食事を作ったメイドはドイツだ! って」
「はは……。残念ながら派遣はやっておりませんので」

 俺はそう言って愛想笑いをした。これもメリューさんの入れ知恵だ。このお店の味にほれ込んでくれるのは構わないのだが、たまにヘッドハンティングをしたい人が出てくる。そういう時に言う常套句が、それだ。

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