(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~

巫夏希

こころとからだの栄養補給・起

 ボルケイノの扉が開いたのは、深夜帯のことだった。
 別にこの世界が第666時間軸であったとしても、この世界では普通に時間は進んでいく。つまり、休憩こそあるけれど一日中働いたとしても俺の世界では三時間程度しか経過していないってことになる。
 とはいえ、休憩が殆どだし(ボルケイノは暇な時間が多い)、給料もそれなりに貰えているし。別に文句なんて無い。だって暇だし。
 話を戻すと、その深夜帯は客が一番来ないと言っても過言ではない時間帯であって、その時間は残っている仕事を片付けたり空きスペースで勉強をしたり……いろいろと便利な時間帯だったりするわけだ。しかも疲れていたら奥の仮眠室で寝ていてもいいわけだし。

「……ごめんよ、今から一人大丈夫かな?」

 ドアの向こうを見るとネオンサインが見える。どうやら深夜帯なのは向こうの世界も変わらないようだ。というか……向こうの世界って紛れもなく、俺の住んでいる世界じゃないか。たぶん。

「いらっしゃいませ。ええ、大丈夫ですよ」

 その人の言葉を聞いて、俺はそう言った。
 その人は草臥れた様子だった。スーツを着用しているところを見るとサラリーマンのように見えるけれど……こんな時間まで仕事をしていたのだろうか? ちらりとサラリーマンの時計を見ると時刻は午前一時をとっくに回っている。日付を越してまで仕事をしていた、ということになる。
 しかしながら、そんなことはどうだっていい。いつの時間だってお客さんが来たらそれなりに対応しなくてはいけないのだから。

「……このお店はメニューが無いのか?」
「はい。ここはお客様が一番食べたいものを料理人が分析し、お出しするお店となっていますので」

 俺はもうテンプレートとなっているそれをサラリーマンに伝えた。
 サラリーマンは首を傾げながら、頷いた。

「まあ、そういう珍しいところもいいか。……じゃあ、取り敢えずお酒をくれないか? ビールだよ、ビール。お願いするよ」

 そう言われたので、俺は厨房へと向かうのだった。


 ◇◇◇


 厨房にはメリューさんがすでにビール瓶とグラスを用意していた。しかもトレーに載せている。それにしても、ほんとうにメリューさんは準備が良い。

「あ、あとこれも」

 俺がそれを持っていこうとしたタイミングでメリューさんは小鉢をトレーの上に置いた。お通し、ってやつか。ちなみに小鉢の中身はきんぴらごぼうとなっている。これ単品でも食べたい。
 まあ、それはさておき。
 急いで俺はカウンターへと向かい、カウンターにビール瓶とグラス、それにお通しを置いた。

「お通しになります」

 そう一言付け足して。

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