(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
王女のワガママ・前編
「今日もやってきてあげたわ! メリュー!」
カランコロン、というドアに付けられた鈴が鳴る音だったが、本日ばかりは少々乱暴だった。
理由は単純明快。入り口に仁王立ちで立っている女性のせいだ。
ピンクのフリルがついたドレス、栗色の髪はツインテールになっている。そして、髪の上には小さなティアラが飾りのように装着されていた。
目鼻顔立ちは整っており、どこか貴族のような雰囲気も感じさせる。
……ま、そう思うのは当然なんだけれどね。
そう思って、俺は頭を下げる。
「いらっしゃいませ、ミルシア女王陛下」
それを見て、微笑むミルシア。何で微笑んでいたのが解ったかというと、ふふふ、って声が聞こえたからだ。
因みに今ここにメリューさんとティアさんも居る。二人も頭を下げているのだろう。
頭を上げて、俺はカウンターへ案内する。別に地位的な問題を考えると貸し切りでもいいくらいなのだが、当の本人はあまりそういう扱いをして欲しくないのだという。独占をしたくない――とかそういうことなのかもしれない。まあ、いずれにせよ、そういう人にしては珍しい。
「今日もおいしい料理を頼むわね」
おしぼりで手を拭きながら、そう言った。
俺は頷いて、厨房に居るメリューさんの方へ向かった。
「メリューさん。今日の料理は?」
「もう出来ているよ、もっていってくれ」
見るとそこにはオムライスがあった。卵焼きでつくられたドーム。そしてケチャップの色鮮やかな赤で彩られた模様。これは素晴らしい。納得してしまう。普通にこちらの世界で調理人として働いても充分いけそうなレベルだ。
「お待たせしました」
ともあれ、俺はそのオムライスをもっていった。
それを見たミルシアは目をきらきらと輝かせる。どうやらこれで正解らしい。
「さすがメリュー! おいしいわね。やはり、王城では出ない食べ物を食べるのは、いいことよね!」
そう言ってスプーンでどんどん卵焼きに包まれたドームを崩していく。口の周りにケチャップをつけているがそんなこと彼女にはどうでもいいらしい。そんなことを気にせずパクパクとどんどん運んでいく。まるであまり食事を取っていないような……いや、そんなことは無かった気がする。多分。
ミルシアを初めて見たのは、俺がこの店で働きだした三日後のことだ。その時のファーストインプレッションは未だ覚えている。高嶺の花、というやつだ。とっつきにくい印象があった。実際今もそう思う時がある。
けれど、それがそうじゃないと印象づけられたのは、メリューさんの持ってきた料理を見てからのことだった。
今も覚えている。確かあの時持ってきたのは――手羽揚げだった。鳥の手羽をマキヤソースや香辛料などで構成されたタレに漬け込んで揚げた、非常にシンプルなものだった。
正直それを見て、それをミルシアが食べるのか? と思っていた。王女だというのなら、高級そうな料理を食べるだろうし自らの手を汚すような料理を食べるとは――思わなかった。というか、あの時は手羽揚げのタレの香りがあまりにも香ばしくて、接客をするよりもあの手羽揚げが余っていないかとか余っていたらメリューさんに頼んで食べたいとか、そんな自分よがりのことを考えていた。
カランコロン、というドアに付けられた鈴が鳴る音だったが、本日ばかりは少々乱暴だった。
理由は単純明快。入り口に仁王立ちで立っている女性のせいだ。
ピンクのフリルがついたドレス、栗色の髪はツインテールになっている。そして、髪の上には小さなティアラが飾りのように装着されていた。
目鼻顔立ちは整っており、どこか貴族のような雰囲気も感じさせる。
……ま、そう思うのは当然なんだけれどね。
そう思って、俺は頭を下げる。
「いらっしゃいませ、ミルシア女王陛下」
それを見て、微笑むミルシア。何で微笑んでいたのが解ったかというと、ふふふ、って声が聞こえたからだ。
因みに今ここにメリューさんとティアさんも居る。二人も頭を下げているのだろう。
頭を上げて、俺はカウンターへ案内する。別に地位的な問題を考えると貸し切りでもいいくらいなのだが、当の本人はあまりそういう扱いをして欲しくないのだという。独占をしたくない――とかそういうことなのかもしれない。まあ、いずれにせよ、そういう人にしては珍しい。
「今日もおいしい料理を頼むわね」
おしぼりで手を拭きながら、そう言った。
俺は頷いて、厨房に居るメリューさんの方へ向かった。
「メリューさん。今日の料理は?」
「もう出来ているよ、もっていってくれ」
見るとそこにはオムライスがあった。卵焼きでつくられたドーム。そしてケチャップの色鮮やかな赤で彩られた模様。これは素晴らしい。納得してしまう。普通にこちらの世界で調理人として働いても充分いけそうなレベルだ。
「お待たせしました」
ともあれ、俺はそのオムライスをもっていった。
それを見たミルシアは目をきらきらと輝かせる。どうやらこれで正解らしい。
「さすがメリュー! おいしいわね。やはり、王城では出ない食べ物を食べるのは、いいことよね!」
そう言ってスプーンでどんどん卵焼きに包まれたドームを崩していく。口の周りにケチャップをつけているがそんなこと彼女にはどうでもいいらしい。そんなことを気にせずパクパクとどんどん運んでいく。まるであまり食事を取っていないような……いや、そんなことは無かった気がする。多分。
ミルシアを初めて見たのは、俺がこの店で働きだした三日後のことだ。その時のファーストインプレッションは未だ覚えている。高嶺の花、というやつだ。とっつきにくい印象があった。実際今もそう思う時がある。
けれど、それがそうじゃないと印象づけられたのは、メリューさんの持ってきた料理を見てからのことだった。
今も覚えている。確かあの時持ってきたのは――手羽揚げだった。鳥の手羽をマキヤソースや香辛料などで構成されたタレに漬け込んで揚げた、非常にシンプルなものだった。
正直それを見て、それをミルシアが食べるのか? と思っていた。王女だというのなら、高級そうな料理を食べるだろうし自らの手を汚すような料理を食べるとは――思わなかった。というか、あの時は手羽揚げのタレの香りがあまりにも香ばしくて、接客をするよりもあの手羽揚げが余っていないかとか余っていたらメリューさんに頼んで食べたいとか、そんな自分よがりのことを考えていた。
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