俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第四話 少女と少年の序章
――――――君を、守りたい。
少女には好きな人がいた。
その少年は特に何も考えていないだろう、そんな人だった。
だから、少女は異世界にクラスで転移した時、何を言われても「へぇー」と返し、何かしら計画を立てている彼を見つめていた。
そしてこの思いを抱いたのだ。
――――――好きになってくれなくていい。私が告白なんてしなくていい。私は、私はあいつを守ればいいんでしょう?
淋しく笑った彼女に、その友達は微笑み返した。何と言ったらいいのか分からない。
『ステータスを鑑定いたします』
少女の『称号』は守護の翼。誰かと契約するとその力が強まるので、契約術師を探そうとしたが、その時少年は手を上げた。
『俺―――契約術師なんで』
『!?』
正直言って勇者の才能を持った彼に少女の契約は必要がなかっただろう。
そして世界は回った。
少女と少年、クラス全員の者達の寿命が尽きた。そして永遠の巡回に、神は少女と少年を見放さない。二回目の転移をした。
今度は少年と少女と、少女の淡い気持ちをただ一人知っている友達。
『はぁ』
唯一、少女だけは一度目の転移の記憶を持っていた。『師匠』に名前を問われ、少女は名のった。本名ではない―――。
『私———ボクは、テーラ・ヒュプスっていうんだ』
ずっと気に入っていたその名前を口にした。
世界がもう一度巡回を迎えようとしたとき。
『運命』は『少女』を見放さない。
運命体はその命を燃やすことを代償に、彼の全ての力を少女に与えた。少女は全世界全次元を吸収し――――――。
これが世界一度目の滅亡となった。
少女もといテーラ・ヒュプスは運命の力を手に入れ、世界と次元と一度取り込んだおかげで何もかもを操作できるようになった。
セバスチャンと出会い、神界へ遊びに行ったり。
少年は何処にいるのだろうか。
テーラ・ヒュプスは考え続けて、そして答えを出した。
『再び集え、勇者のかけら。ライティア。リーゼルト。レティラー。さあ踊れ―――運命体の思いの通りに』
テーラは運命を作り上げた。
強いと思われているライティアは―――勇者のかけらでしかなかったのだ。
それほど少年は強い。
全ての神の加護を手に入れた少年の強さは、だてではない。それなのに才能が無い者のやるような訓練をしていたことを少女は知っている。
『君を守りたい』
伸ばした手は、届くことは無いだろう。
きっと君の服の裾を掴んで、その裾は破れて、微笑みながら君は落ちていく。
遥か深くに落ちていったっていい、ボクはいつだって君の隣にいる。
―――だってそうしたいんだ。
テーラの力を持ってしても、勇者をそのまま呼び出すことは難しい。神を全員呼び出すことくらい容易いが、勇者は違う。
彼の御霊はもっと特別で、才能自体はテーラに追いつこうとしていた。
『今だって、ボクが召喚できない原因は、君がどこかでまたあんな無茶をしていること』
テーラは、唇をかみしめた。
――――――――――――――――――――。
これが三度目の転移だ。
テーラがギリギリ植え付けた小さなその記憶は、いつしか少年の頭の中で蘇っていた。テーラの植え付けた記憶よりもずっと大きく。
少年はテーラを探している。
しかし見つけようとすることは無い。
『いつだって君は俺のことを見ていてくれている――――――』
今だって、きっとどこかで少年のことを考えては悔しい顔をしているだろうか。
血反吐を吐くような努力を見られたとき。
恥ずかしそうに少女は『あ、その、がっ、頑張って……ね……』と少年に言った。
あれが好意だったのか何だったのか、今の少年に分かることは無い。
『だから君は俺のことを見つけてくれる』
少し特殊な服を着た少年は、胸に抱えた本を机の上に降ろし、一番上に乗せてあった分厚めの本に手を伸ばした。
その物語は、少年が書いたもの。
一冊一冊に絶対一度は少女が出てくるのは当たり前。
『俺は君を信じている。テーラと名のった日も、一人称が変わったその日だって―――俺だって見ているんだ』
一度目の破滅。
二度目に世界は散るようになくなり。
テーラが復活させたその日だって。
少年は見ていないわけではなかった。
―――勇者代表、北野永夜。あの日少年もとい永夜はそう名のった。
『そろそろ愛の語りを止めたらどう? 私もいるんだけど』
『愛の語り? なんだよそれ。俺はただあいつを信じてるだけだっての』
『……鈍感くそ野郎』
『何か言ったか?』
『ううん、何も言ってないわ』
反対の机に座っていた少女が本を捲る手を止め、不満の声を漏らす。あの日テーラと一緒に転移したテーラのことを知る友達。
鈍感な永夜へどう手を打つか、テーラに会えなくなっても彼女は考えている。
一回目の破滅。
二回目の巡回。
少女の本にはすべての歴史が記されており、また、絶対にテーラが出てくることは同じ。
『私はただ戻ってきてほしいの。あの日常が。ねえ、そんなに信じているのなら、探しに行ったりしないの?』
『しねえよ。あいつは同じ場所で待ってくれているに決まってる』
『だから、何なのよそこ』
少女の問いに永夜は微笑むのみで、応えることは無かった。テーラが今もずっと立っている場所、永夜が今此処に居る地点。
一回目の破滅の元になった場所―――それはテーラが立っている場所。
二回目に破壊された最初の地点―――それは永夜が今立っている場所。
そしてこの世界がもう一度巡回するならば、二つの地点は重なる。
『ヒントは―――この世界はもう一度巡回するんだよ』
『全く分からないわ。本当に貴方は隠すことが好きね のように』
テーラの元の名前を言おうとして―――その言葉は打ち消された。
――――――運命神となった少女の名の下に。
少女には好きな人がいた。
その少年は特に何も考えていないだろう、そんな人だった。
だから、少女は異世界にクラスで転移した時、何を言われても「へぇー」と返し、何かしら計画を立てている彼を見つめていた。
そしてこの思いを抱いたのだ。
――――――好きになってくれなくていい。私が告白なんてしなくていい。私は、私はあいつを守ればいいんでしょう?
淋しく笑った彼女に、その友達は微笑み返した。何と言ったらいいのか分からない。
『ステータスを鑑定いたします』
少女の『称号』は守護の翼。誰かと契約するとその力が強まるので、契約術師を探そうとしたが、その時少年は手を上げた。
『俺―――契約術師なんで』
『!?』
正直言って勇者の才能を持った彼に少女の契約は必要がなかっただろう。
そして世界は回った。
少女と少年、クラス全員の者達の寿命が尽きた。そして永遠の巡回に、神は少女と少年を見放さない。二回目の転移をした。
今度は少年と少女と、少女の淡い気持ちをただ一人知っている友達。
『はぁ』
唯一、少女だけは一度目の転移の記憶を持っていた。『師匠』に名前を問われ、少女は名のった。本名ではない―――。
『私———ボクは、テーラ・ヒュプスっていうんだ』
ずっと気に入っていたその名前を口にした。
世界がもう一度巡回を迎えようとしたとき。
『運命』は『少女』を見放さない。
運命体はその命を燃やすことを代償に、彼の全ての力を少女に与えた。少女は全世界全次元を吸収し――――――。
これが世界一度目の滅亡となった。
少女もといテーラ・ヒュプスは運命の力を手に入れ、世界と次元と一度取り込んだおかげで何もかもを操作できるようになった。
セバスチャンと出会い、神界へ遊びに行ったり。
少年は何処にいるのだろうか。
テーラ・ヒュプスは考え続けて、そして答えを出した。
『再び集え、勇者のかけら。ライティア。リーゼルト。レティラー。さあ踊れ―――運命体の思いの通りに』
テーラは運命を作り上げた。
強いと思われているライティアは―――勇者のかけらでしかなかったのだ。
それほど少年は強い。
全ての神の加護を手に入れた少年の強さは、だてではない。それなのに才能が無い者のやるような訓練をしていたことを少女は知っている。
『君を守りたい』
伸ばした手は、届くことは無いだろう。
きっと君の服の裾を掴んで、その裾は破れて、微笑みながら君は落ちていく。
遥か深くに落ちていったっていい、ボクはいつだって君の隣にいる。
―――だってそうしたいんだ。
テーラの力を持ってしても、勇者をそのまま呼び出すことは難しい。神を全員呼び出すことくらい容易いが、勇者は違う。
彼の御霊はもっと特別で、才能自体はテーラに追いつこうとしていた。
『今だって、ボクが召喚できない原因は、君がどこかでまたあんな無茶をしていること』
テーラは、唇をかみしめた。
――――――――――――――――――――。
これが三度目の転移だ。
テーラがギリギリ植え付けた小さなその記憶は、いつしか少年の頭の中で蘇っていた。テーラの植え付けた記憶よりもずっと大きく。
少年はテーラを探している。
しかし見つけようとすることは無い。
『いつだって君は俺のことを見ていてくれている――――――』
今だって、きっとどこかで少年のことを考えては悔しい顔をしているだろうか。
血反吐を吐くような努力を見られたとき。
恥ずかしそうに少女は『あ、その、がっ、頑張って……ね……』と少年に言った。
あれが好意だったのか何だったのか、今の少年に分かることは無い。
『だから君は俺のことを見つけてくれる』
少し特殊な服を着た少年は、胸に抱えた本を机の上に降ろし、一番上に乗せてあった分厚めの本に手を伸ばした。
その物語は、少年が書いたもの。
一冊一冊に絶対一度は少女が出てくるのは当たり前。
『俺は君を信じている。テーラと名のった日も、一人称が変わったその日だって―――俺だって見ているんだ』
一度目の破滅。
二度目に世界は散るようになくなり。
テーラが復活させたその日だって。
少年は見ていないわけではなかった。
―――勇者代表、北野永夜。あの日少年もとい永夜はそう名のった。
『そろそろ愛の語りを止めたらどう? 私もいるんだけど』
『愛の語り? なんだよそれ。俺はただあいつを信じてるだけだっての』
『……鈍感くそ野郎』
『何か言ったか?』
『ううん、何も言ってないわ』
反対の机に座っていた少女が本を捲る手を止め、不満の声を漏らす。あの日テーラと一緒に転移したテーラのことを知る友達。
鈍感な永夜へどう手を打つか、テーラに会えなくなっても彼女は考えている。
一回目の破滅。
二回目の巡回。
少女の本にはすべての歴史が記されており、また、絶対にテーラが出てくることは同じ。
『私はただ戻ってきてほしいの。あの日常が。ねえ、そんなに信じているのなら、探しに行ったりしないの?』
『しねえよ。あいつは同じ場所で待ってくれているに決まってる』
『だから、何なのよそこ』
少女の問いに永夜は微笑むのみで、応えることは無かった。テーラが今もずっと立っている場所、永夜が今此処に居る地点。
一回目の破滅の元になった場所―――それはテーラが立っている場所。
二回目に破壊された最初の地点―――それは永夜が今立っている場所。
そしてこの世界がもう一度巡回するならば、二つの地点は重なる。
『ヒントは―――この世界はもう一度巡回するんだよ』
『全く分からないわ。本当に貴方は隠すことが好きね のように』
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