俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第二回 ヒロイン、ヒーロー
きょろきょろしながらコーヒーを飲んでいる彩と、その隣にいるユリウス。彩の前にヴェリトはいない。先日強くなったから旅に出る、と言い出したのだ。
そうか、行ってこい、と彩は微笑みながら送り出したのである。
「準人……まだ来ないのか」
「アヤよ、恋の病だぞ」
「うるさい、燃やすぞ」
彩にユリウスを燃やす(魔術的に)ことは不可能だが、燃やす(精神的)ことは可能だ。ギルドを見渡しながら彩はまたコーヒーをすする。
「俺が、何だって?」
もう諦めて帰ろうか、と思った時、彩は耳から聞き覚えのよくある……あり過ぎる声が聞こえた。リーゼルトとサテラとレスナだ。
彩はがたん、と机から立ち上がり、リーゼルトの姿を見た。
五歳の姿になってはいるが、リーゼルトの姿を彩が見間違えるはずはない。
「は、準人! というか、何でそんな年齢が後退しているんだ? 戻せるものなら、戻してほしいのだが」
「あ。忘れていました。チェンジです!」
「おい!? サテラ!? 変えれるなら言えよ、変えれねえかと思ったじゃないか!」
「リーゼルト。お前が聞かないのが悪いだろ」
レスナの言っていることは正論だが、そもそも五歳児での行動がスムーズ過ぎて姿が変わっていることそのもの気にしなかったのだ。
サテラがいとも簡単にリーゼルトの姿を金髪ヤンキーに戻す。
そうするとリーゼルトは元に戻った自分に安堵するように息を吐いた。
「あの、だな。ギルドに入ってくれないか? 私とチームを組んでパーティになると最初からBランクになるという特典付きだぞ」
「私とレスナさんは入っていますが、まだCランクですね。せっかくですので入ってみませんか? リーゼルト君?」
「おーう。オレは賛成!」
今度はレスナとサテラの二人がニヤニヤしている。最低ランクから始まらなくてよかったな、というのは表面上だ。
溜息をついてリーゼルトは手でオーケーの印を作った。
「それにしても驚いたぞ? 優勝だなんて。俺なんて未だに魔術はちょっと進化したくらいの生活魔術程度しか使えねえぞ」
「私は機密組織ってのをぶち抜くために強く……」
「貴方も組織をぶち抜こうをしているんですか!?」
「喜べリーゼルト、運命だ」
組織をぶち抜こうとするメンバーが多くてリーゼルトは若干引いた。何故そうしたのか聞いたり、組織関係で何か言われたか聞いて行く。
藍も彩もリーゼルトも、ボスからの声を貰っていることが分かった。
こうなったのも全てボスが引き合わせている可能性は十分そろえた。もしかしたら揃えることすらもボスの手の内にハマっているのかもしれないが。
「組織のことについては藍さんの方が詳しいと思うけど……同じ目的なんだから、きっと会うだろ? 俺は何も聞かされてねえけど、何処から組織に入るかとか」
「王城の門からだとよ」
「それ呪文とかいらねえのかよ?」
「要ります。でも私も本部には行ったことがないのでわかりません」
「オレも行ったことがないんだ、すまんな」
恐らく藍は聞いているだろう、とリーゼルトは予測を立てる。何故なら三人そろえば組織へのピースが出来上がるからだ。
組織への鍵を持っている数はリーゼルトの方が多い。
しかし、組織の核心へ迫る情報を持っているのは、彩と藍の方が多いのだ。
「やっぱ三人揃わないといけねえっぽいな」
「まずはギルド登録をしようじゃないか?」
「あ、アヤさん! あれ? お仲間が見つかったのですか!? パーティ登録してくださいますか!? してくださいますよね!?」
「サテラにこいつのこと言ったっけ?」
「あ……いえ、お仲間っぽかったので! ち、違いましたか……?」
走ってきたサテラは自分の失言に気付き、また立て直す。一方の賢者サテラは自分と同じ名前の受付嬢サテラの出現に興奮している。
リーゼルトが「登録する」とため息交じりに言うと、彼女は目を輝かす。
どうやら受付嬢サテラは自分の仕事に物凄く熱心ようだ。
「俺はリーゼルト・ルース」
「はい。分かりました。こちらギルドカードです」
そして受付嬢サテラは彩が図書館で見た説明と全く同じ説明の仕方でリーゼルトに誇らしそうに説明した。
リーゼルトは頷くと、ギルドカードを手に取る。
いつ発行したのかは全く分からないが、ギルドの仕組みはどの小説でも謎だ。
その後はリーゼルトや賢者サテラ、レスナ、ユリウスもコーヒーを頼んでシリアス交じりで談笑する。ユリウスが彩に耳打ちしたりもした。
サテラやレスナがニヤニヤしながらリーゼルトに耳打ちしたり。
―――選ばれしヒロインとヒーローは集う。
―――そうなるべき運命の歯車に乗せられながら、自分たちで運命を変えていく。
―――回避能力が高いんじゃない。
―――ステータスが高いんじゃない。
―――ヒーロー、ヒロイン補正なんかでもない。
―――運命が彼らに沿って回っているのだから、と、それだけのことなのだ。
―――深く考える必要なんてない、運命は決まっている。
―――世界はいつも矛盾している。
―――だからそれを変えられるような―――主人公が必要だ。
そう言って―――彼は黒いローブを翻した。
そうか、行ってこい、と彩は微笑みながら送り出したのである。
「準人……まだ来ないのか」
「アヤよ、恋の病だぞ」
「うるさい、燃やすぞ」
彩にユリウスを燃やす(魔術的に)ことは不可能だが、燃やす(精神的)ことは可能だ。ギルドを見渡しながら彩はまたコーヒーをすする。
「俺が、何だって?」
もう諦めて帰ろうか、と思った時、彩は耳から聞き覚えのよくある……あり過ぎる声が聞こえた。リーゼルトとサテラとレスナだ。
彩はがたん、と机から立ち上がり、リーゼルトの姿を見た。
五歳の姿になってはいるが、リーゼルトの姿を彩が見間違えるはずはない。
「は、準人! というか、何でそんな年齢が後退しているんだ? 戻せるものなら、戻してほしいのだが」
「あ。忘れていました。チェンジです!」
「おい!? サテラ!? 変えれるなら言えよ、変えれねえかと思ったじゃないか!」
「リーゼルト。お前が聞かないのが悪いだろ」
レスナの言っていることは正論だが、そもそも五歳児での行動がスムーズ過ぎて姿が変わっていることそのもの気にしなかったのだ。
サテラがいとも簡単にリーゼルトの姿を金髪ヤンキーに戻す。
そうするとリーゼルトは元に戻った自分に安堵するように息を吐いた。
「あの、だな。ギルドに入ってくれないか? 私とチームを組んでパーティになると最初からBランクになるという特典付きだぞ」
「私とレスナさんは入っていますが、まだCランクですね。せっかくですので入ってみませんか? リーゼルト君?」
「おーう。オレは賛成!」
今度はレスナとサテラの二人がニヤニヤしている。最低ランクから始まらなくてよかったな、というのは表面上だ。
溜息をついてリーゼルトは手でオーケーの印を作った。
「それにしても驚いたぞ? 優勝だなんて。俺なんて未だに魔術はちょっと進化したくらいの生活魔術程度しか使えねえぞ」
「私は機密組織ってのをぶち抜くために強く……」
「貴方も組織をぶち抜こうをしているんですか!?」
「喜べリーゼルト、運命だ」
組織をぶち抜こうとするメンバーが多くてリーゼルトは若干引いた。何故そうしたのか聞いたり、組織関係で何か言われたか聞いて行く。
藍も彩もリーゼルトも、ボスからの声を貰っていることが分かった。
こうなったのも全てボスが引き合わせている可能性は十分そろえた。もしかしたら揃えることすらもボスの手の内にハマっているのかもしれないが。
「組織のことについては藍さんの方が詳しいと思うけど……同じ目的なんだから、きっと会うだろ? 俺は何も聞かされてねえけど、何処から組織に入るかとか」
「王城の門からだとよ」
「それ呪文とかいらねえのかよ?」
「要ります。でも私も本部には行ったことがないのでわかりません」
「オレも行ったことがないんだ、すまんな」
恐らく藍は聞いているだろう、とリーゼルトは予測を立てる。何故なら三人そろえば組織へのピースが出来上がるからだ。
組織への鍵を持っている数はリーゼルトの方が多い。
しかし、組織の核心へ迫る情報を持っているのは、彩と藍の方が多いのだ。
「やっぱ三人揃わないといけねえっぽいな」
「まずはギルド登録をしようじゃないか?」
「あ、アヤさん! あれ? お仲間が見つかったのですか!? パーティ登録してくださいますか!? してくださいますよね!?」
「サテラにこいつのこと言ったっけ?」
「あ……いえ、お仲間っぽかったので! ち、違いましたか……?」
走ってきたサテラは自分の失言に気付き、また立て直す。一方の賢者サテラは自分と同じ名前の受付嬢サテラの出現に興奮している。
リーゼルトが「登録する」とため息交じりに言うと、彼女は目を輝かす。
どうやら受付嬢サテラは自分の仕事に物凄く熱心ようだ。
「俺はリーゼルト・ルース」
「はい。分かりました。こちらギルドカードです」
そして受付嬢サテラは彩が図書館で見た説明と全く同じ説明の仕方でリーゼルトに誇らしそうに説明した。
リーゼルトは頷くと、ギルドカードを手に取る。
いつ発行したのかは全く分からないが、ギルドの仕組みはどの小説でも謎だ。
その後はリーゼルトや賢者サテラ、レスナ、ユリウスもコーヒーを頼んでシリアス交じりで談笑する。ユリウスが彩に耳打ちしたりもした。
サテラやレスナがニヤニヤしながらリーゼルトに耳打ちしたり。
―――選ばれしヒロインとヒーローは集う。
―――そうなるべき運命の歯車に乗せられながら、自分たちで運命を変えていく。
―――回避能力が高いんじゃない。
―――ステータスが高いんじゃない。
―――ヒーロー、ヒロイン補正なんかでもない。
―――運命が彼らに沿って回っているのだから、と、それだけのことなのだ。
―――深く考える必要なんてない、運命は決まっている。
―――世界はいつも矛盾している。
―――だからそれを変えられるような―――主人公が必要だ。
そう言って―――彼は黒いローブを翻した。
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